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第四十四話 伸七郎の幼馴染への想い
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伸七郎の話は続く。
「さっきも言ったけど、俺は舞居子ちゃんを幼馴染として、大切な存在だと思ってきた。その気持ちは、疎遠になった今でも変化はない。舞居子ちゃんが幸せになるんだったら、どういう選択をしても、祝福してあげなければいけないと思っているんだ。でも、ああいう仲睦まじそうな姿を見ると、素直に祝福できない自分がいる。俺、性格が悪くなってしまったのかなあ、と思った。でも、これからどうしたらいい方向にいくのだろう、というところがわからないままで、この数日、悩んでいたところがあったんだ。そこで、お前に話を聞いてもらい、できればアドバイスをもらおうと思ったんだ。俺の友達の仲では、一番話を聞いてもらえそうだったし、いいアドバイスももらえそうな気がした。まあ、こういうことは俺が自分でいい方向にもっていけなければならないのはわかっているんだけど……」
俺のことを頼ってくれている。
前世ではなかったことだ。
伸七郎は俺の友達だ。
その友達の為に、いいアドバイスをしなければならない。
「話はだいたい理解したと思う。それで、お前にまず聞きたいんだけど、初林さんのことは大切に思っていると言っていたよな?」
「もちろんだ。俺の大切な人だ」
「それは、恋愛感情とは違うのか?」
俺がそう言うと、伸七郎は少し寂しい表情になる。
「舞居子ちゃんのこと、好きなことには違いはない。でも俺たちは幼馴染なんだ。今までは、恋人にしたいと思ったことはなかった。それは彼女も同じだと思う」
「でも今回、初林さんが他の男の人と仲良く話をしていたので、複雑な気持ちになったと言っていたよな。ということは、お前の心の奥底に、初林さんと仲良くんなりたい、他の男に取られたくない、という気持ちがあるんだと思う」
「それはそうかもしれない」
「初林さんは、今まで、告白をすべて断ってきたそうだな」
「俺はそう聞いているんだ」
「もしかすると、それは、お前の告白を待っているからではないか、と思うんだ」
俺がそう言うと、伸七郎は驚いて、
「そんなこと、あるわけないと思う。舞居子ちゃんが俺のことを待ってなんて……」
と言った。
今まで、そういうことを思ったことがないようだ。
「幼い頃とはいうものの、お前のことを『好き』と言ってくれた相手だ。その想いを持ち続けているのであれば、今までの告白を全部断ってきたのも、理解はできるのではないかと思う」
「うーん。俺に『好き』だと言っていたのは幼い頃のことだし。その想いは続くとも思えないんだけどなあ」
「でも一度、初林さんの気持ちは確認する必要があると思う。このまま何もしなかったら、そのまま初林さんはその同級生と付き合うことになってしまう可能性だってある、もしそうなったら、お前は多分、後悔すると思う」
俺は前世で瑳百合さんに何のアプローチもできなかった。
伸七郎には成功してほしい。
「どうすればいいと思う?」
「初林さんに告白するんだ」
「舞居子ちゃんに告白する?」
伸七郎は、先程よりもさらに驚いた様子。
「俺が舞居子ちゃんに告白……」
「お前は初林さんが好きなんだろう? だったら告白すべきだ。明日にもすべきだと思う」
せっかく初林ちゃんのことが好きになったことを自分でも理解してきたのに、告白しなければ、きっと後でつらい思いをする。
そんな思いは友達にはさせたくない。
俺はそう強く思っていた。
「さっきも言ったけど、俺は舞居子ちゃんを幼馴染として、大切な存在だと思ってきた。その気持ちは、疎遠になった今でも変化はない。舞居子ちゃんが幸せになるんだったら、どういう選択をしても、祝福してあげなければいけないと思っているんだ。でも、ああいう仲睦まじそうな姿を見ると、素直に祝福できない自分がいる。俺、性格が悪くなってしまったのかなあ、と思った。でも、これからどうしたらいい方向にいくのだろう、というところがわからないままで、この数日、悩んでいたところがあったんだ。そこで、お前に話を聞いてもらい、できればアドバイスをもらおうと思ったんだ。俺の友達の仲では、一番話を聞いてもらえそうだったし、いいアドバイスももらえそうな気がした。まあ、こういうことは俺が自分でいい方向にもっていけなければならないのはわかっているんだけど……」
俺のことを頼ってくれている。
前世ではなかったことだ。
伸七郎は俺の友達だ。
その友達の為に、いいアドバイスをしなければならない。
「話はだいたい理解したと思う。それで、お前にまず聞きたいんだけど、初林さんのことは大切に思っていると言っていたよな?」
「もちろんだ。俺の大切な人だ」
「それは、恋愛感情とは違うのか?」
俺がそう言うと、伸七郎は少し寂しい表情になる。
「舞居子ちゃんのこと、好きなことには違いはない。でも俺たちは幼馴染なんだ。今までは、恋人にしたいと思ったことはなかった。それは彼女も同じだと思う」
「でも今回、初林さんが他の男の人と仲良く話をしていたので、複雑な気持ちになったと言っていたよな。ということは、お前の心の奥底に、初林さんと仲良くんなりたい、他の男に取られたくない、という気持ちがあるんだと思う」
「それはそうかもしれない」
「初林さんは、今まで、告白をすべて断ってきたそうだな」
「俺はそう聞いているんだ」
「もしかすると、それは、お前の告白を待っているからではないか、と思うんだ」
俺がそう言うと、伸七郎は驚いて、
「そんなこと、あるわけないと思う。舞居子ちゃんが俺のことを待ってなんて……」
と言った。
今まで、そういうことを思ったことがないようだ。
「幼い頃とはいうものの、お前のことを『好き』と言ってくれた相手だ。その想いを持ち続けているのであれば、今までの告白を全部断ってきたのも、理解はできるのではないかと思う」
「うーん。俺に『好き』だと言っていたのは幼い頃のことだし。その想いは続くとも思えないんだけどなあ」
「でも一度、初林さんの気持ちは確認する必要があると思う。このまま何もしなかったら、そのまま初林さんはその同級生と付き合うことになってしまう可能性だってある、もしそうなったら、お前は多分、後悔すると思う」
俺は前世で瑳百合さんに何のアプローチもできなかった。
伸七郎には成功してほしい。
「どうすればいいと思う?」
「初林さんに告白するんだ」
「舞居子ちゃんに告白する?」
伸七郎は、先程よりもさらに驚いた様子。
「俺が舞居子ちゃんに告白……」
「お前は初林さんが好きなんだろう? だったら告白すべきだ。明日にもすべきだと思う」
せっかく初林ちゃんのことが好きになったことを自分でも理解してきたのに、告白しなければ、きっと後でつらい思いをする。
そんな思いは友達にはさせたくない。
俺はそう強く思っていた。
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