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第十八話 この世に戻っていく意識

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 俺の心の中に浮かんできた前世の瑳百合さんの素敵な微笑み。

 それは、俺に力を与えはじめていた。

 今世でもこの笑顔に会いたい。

 そして、この笑顔をもっと身近で味わいたい。

 瑳百合さんの生まれ変わりの女性、もしくは、同じタイプの理想の女性の恋人として。

 しかし、その為には、そういう素敵な女性にふさわしい人間になる必要がある。

 今の平凡な俺では、前世のように近づくことさえ難しいままだ。

 つい先程は、

「できるわけがない」

 という思いに心が押しつぶされかけてしまった。

 しかし、ここで倒れるわけにはいかない。

 俺は、俺は、あの笑顔が好きなんだ!

 俺の心の中に浮かぶ、瑳百合さんの笑顔は、俺に力を与えて続けていた。

 俺の心は次第に前向きな方向に変わっていく。

 たとえ、前世の瑳百合さんにふさわしいところまで到達しなくても、俺とこれから出会う予定である瑳百合さんの生まれ変わりの女性、もしくは、同じタイプの理想の女性は、ふさわしい人になろうとした努力をきっと認めてくれるはず。

 ただ、一方で、そういう女性と出会えない可能性があるかもしれない、という思いも心に浮かんでくる。

 今までの俺の人生はほぼ前世と同じようなものだったが、これからもそうだとは限らない。

 そういう女性と出会えず、このまま一人ぼっちの状態が続くこともありえなくはない。

 出会えなければ、そういう女性にふさわしくなる為の努力をする意味がなくなってしまう気がする。

 いや、俺は何を思っているのだろう。

 これも一種の弱気な思いだ。

 そういう思いの力につぶされてはいけない。

 俺はこれから理想の女性と出会う。

 瑳百合さんの生まれ変わりか、別の女性になるのか、それはわからない。

 でも出会うことを信じていこう!

 そして、そういう女性にふさわしい人になる為に一生懸命努力していこう!

 俺はそう強く思った。

 すると、次第に意識が薄らぎ始めてくる。

 俺の意識が今世に戻り始めているようだ。

 前世の記憶を思い出した後、しばらくの間、俺の意識は前世と今世の間にいたようだ。

 有意義な時間だったと思う。

 ここで俺は大きな決断をした。

 これから今世でそれを実行していく。

 素敵な笑顔の為に、俺は一生懸命努力をする!

 そう強く思いながら、俺の意識は今世へと戻っていった。



 俺は目を覚ました。

 すると、寒さが急激に襲ってくる。

 手と顔が痛い。

 相変わらず人通りはない。

 一人ぼっち。

 雪がいつの間にか俺を覆うぐらいになるほど積もってきている。

 寒くてたまらなくなってきた。

 俺が前世のことを思い出している間に、相応の時間が経っていたようだ。

 このままここにいると、生命に影響が出てくるかもしれない。

 ここから家までは少し距離がある。

 歩くのも難しくなるぐらいこの公園では積もってきている。

 本降りで、風も強くなってきていて、吹雪のような状態。

 寒くて、つらく苦しい道のりではあるが、とにかく家に帰らなければならない。

 これから俺は、生まれ変わるのだ。

 このくらいの苦難など、苦難だとは思わないようにしなければならない。

 俺は立ち上がると、まず、自分の体に積もった雪をはらった。

 そして、積もった雪に苦しみ、冷たく吹きつける雪に苦しみながら、家に向かって少しずつ歩き始めた。
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