上 下
44 / 53

第四十四話 デートへの道

しおりを挟む
「じゃあこの映画案でいいかな?」

「そうですね。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく。これから計画を立てて行くから、集合時間とかはまた連絡するよ」

「ありがとうございます。楽しみですね」

こうして、俺と紗緒里ちゃんは、ゴールデンウイークの中で出かけることになった。

「ところでおにいちゃん、これってデートですよね?」

紗緒里ちゃんは微笑みながら言う。

「デ、デート……」

「まだわたしたち、恋人どうしじゃないですけど、仲の良い二人がお出かけするんですもの。しかも最近はどんどん仲良くなってきていますし。わたしはもうデートだと思っています」

改めてデートと言われると急速に恥ずかしくなってくる。

紗緒里ちゃんの言う通り、俺達はどんどん仲が良くなっている。

彼女の俺に対する想いも、始業式の時に比べてますます大きくなっているように思うけど、俺の方ももう彼女に恋をしているところまで来ていた。

後は俺から告白をすれば、俺達は恋人どうしになれる。

しかし、今回のお出かけの中で、俺は彼女に告白をすべきか、というところでも悩んでいた。

一緒に出かけるところまでは決断できたが、告白となるとまた別の話になる。

告白して、恋人どうしになるということは、彼女への結婚への道が開けるということだ。

その道へ行くからには、今までのようにただ「好き」ということではなく、彼女を心から幸せにしたいと想っていくことが必要になってくる。

彼女に告白すべきかどうかで悩んでいる俺だが、告白すると決めた場合は、レストランで食事をして、その後、くつろぎながらおしゃべりを楽しんだ後、告白するつもりでいる。

彼女に対して、それでもまだいとことしての認識が残っている俺にとっては、そういう場で告白をすることが、恋人どうしとして生まれ変わる一番いい場所だと思う。

とはいうものの、告白することを決めたとしても、それをうまく彼女に伝えることができるのだろうか……。

俺はデートという言葉を聞いただけでも心が熱くなって、浮き上がってしまう。

当日もそういう状態になったら、彼女に、

「好きだ。付き合ってほしい」

と言うことができるのだろうか。

その言葉のうちの、

「好き」

という言葉も言うことができないかもしれない。

いとことしての「好き」ではなく、恋人どうしとしての「好き」と言わなければならない。

同じ「好き」でも、全く違う言葉だ。

いとこから恋人へ。

俺はその心の切り替えをきちんとするつもりでいる。

それをしなければ、これからも魅力を増してくるであろう紗緒里ちゃんを前に、悩みはどんどん強くなってくるだろうと思う。

しかし、言葉で言うのは難しくはないが、その心の切り替えはなかなか難しい。

それでももう少しのところまではきた。後少しなのだけど、そこが難しい……。

そう思っていると、

「おにいちゃんも、そういう気持ちで行ってくれるといいなあ、と思っています」

と紗緒里ちゃんは言った。

この気持ちにどう応えるべきだろうか。

まだデートとは言えない、とまだ言うのだろうか。

いや、もうここまできたらそれは言えないだろう。

彼女は、俺のことを気づかってくれている。その気持ちには応えていかなくてはいけない。

そして、俺自体も、彼女とデートをするという気持ちで盛り上がり始めていた。

デートという言葉を使うことについて、恥ずかしいという気持ちはまだまだ強いが、そういう気持ちに打ち勝っていかなくてはならない。

「俺も紗緒里ちゃんとデートをすると思っているんだ」

思い切って俺はそう言った。

「そう思ってくれるのですか?」

紗緒里ちゃんの驚いた声。

「ごめん。まだ俺達恋人どうしじゃないけど、紗緒里ちゃんの言う通り、仲が良いものどうしが一緒に行動するんだ。デートとして行きたいと思う」

「うれしいです。おにいちゃんがそう言ってくれるなんて、思っていなかったです」

紗緒里ちゃんは、少し涙声になりながら、続ける。

「おにいちゃんがどんどんわたしのことを好きになってくれている、ということですよね」

「そ、そうだな」

「ありがとうございます。おにいちゃんが、わたしの恋人になってくれるようにより一層努力します」

そう言ってくれるのはうれしい。しかし、俺は、その彼女の想いにまだ応えられていない。

応える為にも、今度のデートは大切なものになると思う。

彼女が喜んでもらえるよう、準備をしっかりしていこう。

「今でも充分努力していると思うよ。俺の為に尽くしてくれている。申し訳ないぐらいだよ」

「そんな、申し訳ないだなんて。わたしこそ、おいしい晩ご飯をご馳走になっています。それに、ゆくゆくはおにいちゃんの妻になるんです。もっともっとおにいちゃんに尽くしていかなければならないと思っています」

「ありがとう。そう言ってくれて」

俺は紗緒里ちゃんのことが、ますます好きになってきた。

「今度の初デートは、思い出に残るものにしたいです」

「俺もそうなるといいなあ、と思っている」

「おにいちゃん、好きです、好きです、大好きです」

紗緒里ちゃんはそう言いながら、微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...