37 / 53
第三十七話 好きだと言えないわたし (寿々子サイド)
しおりを挟む
三月中旬。
少しずつ暖かくなってきて、もう少しで桜が咲きそうになってきた頃。
放課後。
いつものように、わたしはりなこちゃんと一緒にお茶をしていた。
「寿々子ちゃん、そろそろ海春くんに告白した方がいいんじゃない?」
りなこちゃんがそう言う。
「そろそろかなあ……」
「以前は、幼馴染としての海春くんが好きだったと思うけど、今はもうその想いが強くなって、恋している状態だと思う。そうでしょう?」
わたしは、今年に入ってからも海春くんとは満足に話をしていない。
しかし、わたしの中では、海春くんの存在が日ごとに大きくなってきていた、
去年の十月上旬に、海春くんから言われた優しい言葉。
その言葉がわたしを恋の方向へ導き出している。
特にこの三月になってからは、彼のことを想う度に、胸が熱くなっていた。
わたしは海春くんが好き。もう幼馴染としてではない。一人の男の子として海春くんが好き。
告白して、相思相愛になって、婚約をする。
そして、結婚をする。
でも、それにはわたしが海春くんに告白をしなければならない。
彼の方から告白してくることはまずなさそうだからだ。
とはいうものの、告白する勇気まではまだ出てこない。
高校卒業まで後二年ほどあるとはいえ、こんな調子では、告白できないままになってしまうかもしれない。
それは避けたい。
恋人どうしになるのが遅れれば遅れるほど、高校生での恋人どうしでいられる時間が少なくなる。そういう時間は無駄にしたくない。
そう思ってはいるのだけど……。
最近のわたしは、なんとかして告白する勇気を出そうとしているところだった。
「わたし、告白したいとは思っている。その気持ちはどんどん強くなってきている」
「それなら三学期中に告白するのがいいと思う」
「でも最近彼の前に行くと、恥ずかしくなっちゃって。告白なんてできそうもない気がする。彼の方から告白してきてくれれば、それが一番いいんだけど」
「その気持ちはわからなくはないんだけど。でも無理そうなんでしょう?」
「海春くん、わたしの気持ちに気づいていないから。わたしが海春くんのことを恋の対象として想っていることに気づいていないから。だからわたしの方から想いを伝えるしかないの。そこのところはよく理解しているんだけど……」
「でもこのままじゃ、他の子に告白されちゃうわよ。最近、何人かの女の子が彼のこと恋し始めているようだから」
「そういう子が出てきているの?」
「そうよ。今までは好意を持っていたところまでだったんだけど、それ以上の想いを持っている子が出てきているようだわ」
「それは困るわ」
「まあ告白されるだけだったら、まだいいんだけど。告白してきた子が好みのタイプだったら、彼はその告白を受け入れることもあると思う。そうなると、二人は恋人どうしになってしまう。恋人どうしになってしまったら、海春くんを寿々子ちゃんの方へ振り向かせるのは、なかなか難しいことになってしまうと思う」
「そうなってほしくない」
海春くんが、他の女の子と付き合っているところを想像するだけでも、つらい気持ちになる。
「そうでしょう。だったら、彼のことを好きな子たちが告白する前に、告白しないと。春休み前がいいと思うけど、遅くとも四月上旬までにはした方がいいと思う」
「もう告白すべきところに来ているということね」
「寿々子ちゃんの告白が遅れれば遅れるほど、寿々子ちゃんの恋が成就する可能性は低くなってくると思う」
「その通りだと思うんだけど……」
「寿々子ちゃん。この一か月ほどが大切よ。ここで、海春くんを恋人にするのよ。わたし、応援しているから」
りなこちゃんは熱を込めてそう言った。
しかし、わたしは、結局、三学期中には告白はできなかった。
「海春くん、おはよう」
というところまでは言えるのだが、その後、
「ちょっと話をしたいことがあるんだけど……」
と言う言葉を続けることができない。
そこまで言うことができれば、後は、人がいないところへ行き、
「海春くんのことが好き。わたしと付き合って」
と言えばいいのだけど、そこまで到達することができない。
我ながら、なんでうまく言うことができないのだろう……。
応援してくれているりなこちゃんにも申し訳ない。
春休みの間、悶々とするわたし。
海春くんの家に行って告白しようとも思った。
しかし、いきなり行っては、彼が嫌がるかもしれない。
小学校三年生の時以来、彼の家には行っていないのだ。
彼の嫌がることをしたら、告白をOKしてくれないことだってありうる。
わたしの心にはだんだんあせりが出てきていた。
このままだと、他の子が海春くんに告白するかもしれない。
しかも、この春休みの間に。
いや、さすがに春休みの間はないだろうとも思う。
わたし以上に関係が薄い子がいきなり彼の家に来ても、嫌がるだけだとは思うからだ。
でも、それでも彼の好みの子だったらOKする可能性もあるのかな……。
いろいろな思いがわたしの心の中に浮かんでくる。
こうしてわたしは、海春くんに何もアプローチできないまま、始業式を迎えることになった。
少しずつ暖かくなってきて、もう少しで桜が咲きそうになってきた頃。
放課後。
いつものように、わたしはりなこちゃんと一緒にお茶をしていた。
「寿々子ちゃん、そろそろ海春くんに告白した方がいいんじゃない?」
りなこちゃんがそう言う。
「そろそろかなあ……」
「以前は、幼馴染としての海春くんが好きだったと思うけど、今はもうその想いが強くなって、恋している状態だと思う。そうでしょう?」
わたしは、今年に入ってからも海春くんとは満足に話をしていない。
しかし、わたしの中では、海春くんの存在が日ごとに大きくなってきていた、
去年の十月上旬に、海春くんから言われた優しい言葉。
その言葉がわたしを恋の方向へ導き出している。
特にこの三月になってからは、彼のことを想う度に、胸が熱くなっていた。
わたしは海春くんが好き。もう幼馴染としてではない。一人の男の子として海春くんが好き。
告白して、相思相愛になって、婚約をする。
そして、結婚をする。
でも、それにはわたしが海春くんに告白をしなければならない。
彼の方から告白してくることはまずなさそうだからだ。
とはいうものの、告白する勇気まではまだ出てこない。
高校卒業まで後二年ほどあるとはいえ、こんな調子では、告白できないままになってしまうかもしれない。
それは避けたい。
恋人どうしになるのが遅れれば遅れるほど、高校生での恋人どうしでいられる時間が少なくなる。そういう時間は無駄にしたくない。
そう思ってはいるのだけど……。
最近のわたしは、なんとかして告白する勇気を出そうとしているところだった。
「わたし、告白したいとは思っている。その気持ちはどんどん強くなってきている」
「それなら三学期中に告白するのがいいと思う」
「でも最近彼の前に行くと、恥ずかしくなっちゃって。告白なんてできそうもない気がする。彼の方から告白してきてくれれば、それが一番いいんだけど」
「その気持ちはわからなくはないんだけど。でも無理そうなんでしょう?」
「海春くん、わたしの気持ちに気づいていないから。わたしが海春くんのことを恋の対象として想っていることに気づいていないから。だからわたしの方から想いを伝えるしかないの。そこのところはよく理解しているんだけど……」
「でもこのままじゃ、他の子に告白されちゃうわよ。最近、何人かの女の子が彼のこと恋し始めているようだから」
「そういう子が出てきているの?」
「そうよ。今までは好意を持っていたところまでだったんだけど、それ以上の想いを持っている子が出てきているようだわ」
「それは困るわ」
「まあ告白されるだけだったら、まだいいんだけど。告白してきた子が好みのタイプだったら、彼はその告白を受け入れることもあると思う。そうなると、二人は恋人どうしになってしまう。恋人どうしになってしまったら、海春くんを寿々子ちゃんの方へ振り向かせるのは、なかなか難しいことになってしまうと思う」
「そうなってほしくない」
海春くんが、他の女の子と付き合っているところを想像するだけでも、つらい気持ちになる。
「そうでしょう。だったら、彼のことを好きな子たちが告白する前に、告白しないと。春休み前がいいと思うけど、遅くとも四月上旬までにはした方がいいと思う」
「もう告白すべきところに来ているということね」
「寿々子ちゃんの告白が遅れれば遅れるほど、寿々子ちゃんの恋が成就する可能性は低くなってくると思う」
「その通りだと思うんだけど……」
「寿々子ちゃん。この一か月ほどが大切よ。ここで、海春くんを恋人にするのよ。わたし、応援しているから」
りなこちゃんは熱を込めてそう言った。
しかし、わたしは、結局、三学期中には告白はできなかった。
「海春くん、おはよう」
というところまでは言えるのだが、その後、
「ちょっと話をしたいことがあるんだけど……」
と言う言葉を続けることができない。
そこまで言うことができれば、後は、人がいないところへ行き、
「海春くんのことが好き。わたしと付き合って」
と言えばいいのだけど、そこまで到達することができない。
我ながら、なんでうまく言うことができないのだろう……。
応援してくれているりなこちゃんにも申し訳ない。
春休みの間、悶々とするわたし。
海春くんの家に行って告白しようとも思った。
しかし、いきなり行っては、彼が嫌がるかもしれない。
小学校三年生の時以来、彼の家には行っていないのだ。
彼の嫌がることをしたら、告白をOKしてくれないことだってありうる。
わたしの心にはだんだんあせりが出てきていた。
このままだと、他の子が海春くんに告白するかもしれない。
しかも、この春休みの間に。
いや、さすがに春休みの間はないだろうとも思う。
わたし以上に関係が薄い子がいきなり彼の家に来ても、嫌がるだけだとは思うからだ。
でも、それでも彼の好みの子だったらOKする可能性もあるのかな……。
いろいろな思いがわたしの心の中に浮かんでくる。
こうしてわたしは、海春くんに何もアプローチできないまま、始業式を迎えることになった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!
いーじーしっくす
青春
赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。
しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。
その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。
証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。
そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。
深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。
拓真の想いは届くのか? それとも……。
「ねぇ、拓真。好きって言って?」
「嫌だよ」
「お墓っていくらかしら?」
「なんで!?」
純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件
木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか?
■場所 関西のとある地方都市
■登場人物
●御堂雅樹
本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。
●御堂樹里
本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。
●田中真理
雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる