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第三十五話 海春くんを好きな人が増えている (寿々子サイド)
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りなこちゃんとの話は続く。
「海春くん、最近クラスの女の子の中での人気が上がってきているのよ」
「そうなのかなあ……」
「彼、いつも気難しい表情をしているから、彼のことを敬遠している人も結構いる。でもそれは彼のことをよく知らないからだと思う。わたしは、親切で優しい人だと思う。気持ちが落ち込んでいた人をさりげなく勇気づけたり、重い荷物を運んでいて大変なところを助けたり。しかも男女関係なく。それに、学級委員でもないのに、まとまらなかったクラスをまとめあげたりしたでしょう。頼もしさもある。そして、一人暮らしなのに、家事をきちんとしているというし。すごいと思うわ。彼のそういったところを好きになってきている女の子が増えてきているのよ」
そういう海春くんのいいところを理解しているのはわたしだけだと思っていた。
「わたしだって、海春くんのことは好きよ」
わたしは驚いた。
りなこちゃんが、海春くんのことを好き……。
「付き合っている彼と知り合っていなかったら、海春くんにアプロ-チしていたかも」
「りなこちゃん……」
わたしは、自分の表情が怒りで硬くなっていくのを感じた。
「冗談よ、冗談。付き合っている彼がいるんだし、アプローチはしないわよ」
りなこちゃんは手を振った。
なんだかホッとした気分。
「でも怒る寸前になると言うことは、海春くんのことがやっぱり好きということなのね」
「りなこちゃんに言われて、なんだか、海春くんが取られちゃうんじゃないかと思うと、今まで思ったことのないような気持ちになった」
「わたしにやきもちをやいたということね」
「そうかもしれない」
「それは彼のことが好きでなければ、出てこない気持ちだと思う」
「寿々子ちゃんの言っている通りかもしれない」
「でも、彼に好意を持つ人は増えてきている。まだ恋というところまでは行っていないと思うけど、あれだけ魅力的な人ですもの。彼に告白する人は出てくると思う。だから、寿々子ちゃん、今のうちに告白すべきだと思うわ」
「りなこちゃんの言うこともわかるんだけど……。わたし、海春くんともっと仲良くなりたいとは思っている。わたしたち、幼馴染だから、今の疎遠な関係からは脱却したいと思っている。昔みたいに、楽しくおしゃべりしたい。一緒にアニメを見て楽しみたい」
「そう思っているなら、恋人になるべきだと思う」
「でも恋人ということになると、どうなるんだろう。わたし、うまくやっていける自信がないの。告白する前から何を言っているの、って言うかもしれないけど。恋人どうしって、お互いに恋心があるから成り立つものでしょう? わたし、自分では恋心を持ってもらうまでの魅力があるようには思えないんだけど……」
「寿々子ちゃん」
りなこちゃんは、一回言葉を切った後、続ける。
「既に何人かの男の子に告白されている女の子が、魅力のない子のないわけじゃないでしょう? 優しくてかわいくて、ピアノもうまいんだから。もっと自信を持たないと」
「ピアノはりなこちゃんの方がうまいと思うけど」
「そんなことはない。寿々子ちゃんの方がうまいわ。とにかく寿々子ちゃんは魅力があるんだから、自分の恋心を海春くんに伝えたら、きっと相思相愛になれる」
「そうだといいんだけど……」
「まあ」
りなこちゃんはちょっと腕組みをして考えた後、
「あまりあせって告白しても、相思相愛になれないかもしれないわね。それに、寿々子ちゃん、心のどこかの幼馴染のままでいたい気持ちがあるようね」
「仲の良い幼馴染のままでいた方がいいという気持ちはどうしてもある。それに、もし恋人になって、その関係が壊れたとするじゃない。そうすると、幼い頃の思い出すべてが壊れてしまって、何も残らない気がする。それも怖いの」
「気持ちはわからなくはない。幼い頃の思い出は大事にしたいものね。でも寿々子ちゃん、さっき、わたしが海春くんのこと『好き』って言った時、やきもちをやいたでしょう? ということは、海春くんのことが好きで、誰にも渡したくないってことじゃない」
「それはそうだけど」
「仲の良い幼馴染のままだったら、いずれ誰かの恋人になってしまうわよ。その時、告白しておけばよかったと思っても、間に合わないかもしれないわよ。もちろん、そこから挽回できなくはないとは思うけど」
海春くんが他の女の子と恋仲になる……。
りなこちゃんの言う通り、わたしが恋人にならなければ、いずれ他の女の子と結びついてしまうだろう。
そうならない為には、告白しなければならないのだけど……。
「ごめん。りなこちゃんの言うことはわかるんだけど、まだ告白するだけの勇気はない。もう少し、勇気が湧いてくるまでの時間がほしい」
わたしはそう言った。
「今はしょうがないわね」
ため息をつくりなこちゃん。
「わたし、寿々子ちゃんを応援しているわ。寿々子ちゃんが海春くんと恋人どうしになるのを応援している」
「ありがとう」
「うん。とにかく想いをもっと強くしていくのよ」
そう言うと、りなこちゃんは微笑んだ。
「海春くん、最近クラスの女の子の中での人気が上がってきているのよ」
「そうなのかなあ……」
「彼、いつも気難しい表情をしているから、彼のことを敬遠している人も結構いる。でもそれは彼のことをよく知らないからだと思う。わたしは、親切で優しい人だと思う。気持ちが落ち込んでいた人をさりげなく勇気づけたり、重い荷物を運んでいて大変なところを助けたり。しかも男女関係なく。それに、学級委員でもないのに、まとまらなかったクラスをまとめあげたりしたでしょう。頼もしさもある。そして、一人暮らしなのに、家事をきちんとしているというし。すごいと思うわ。彼のそういったところを好きになってきている女の子が増えてきているのよ」
そういう海春くんのいいところを理解しているのはわたしだけだと思っていた。
「わたしだって、海春くんのことは好きよ」
わたしは驚いた。
りなこちゃんが、海春くんのことを好き……。
「付き合っている彼と知り合っていなかったら、海春くんにアプロ-チしていたかも」
「りなこちゃん……」
わたしは、自分の表情が怒りで硬くなっていくのを感じた。
「冗談よ、冗談。付き合っている彼がいるんだし、アプローチはしないわよ」
りなこちゃんは手を振った。
なんだかホッとした気分。
「でも怒る寸前になると言うことは、海春くんのことがやっぱり好きということなのね」
「りなこちゃんに言われて、なんだか、海春くんが取られちゃうんじゃないかと思うと、今まで思ったことのないような気持ちになった」
「わたしにやきもちをやいたということね」
「そうかもしれない」
「それは彼のことが好きでなければ、出てこない気持ちだと思う」
「寿々子ちゃんの言っている通りかもしれない」
「でも、彼に好意を持つ人は増えてきている。まだ恋というところまでは行っていないと思うけど、あれだけ魅力的な人ですもの。彼に告白する人は出てくると思う。だから、寿々子ちゃん、今のうちに告白すべきだと思うわ」
「りなこちゃんの言うこともわかるんだけど……。わたし、海春くんともっと仲良くなりたいとは思っている。わたしたち、幼馴染だから、今の疎遠な関係からは脱却したいと思っている。昔みたいに、楽しくおしゃべりしたい。一緒にアニメを見て楽しみたい」
「そう思っているなら、恋人になるべきだと思う」
「でも恋人ということになると、どうなるんだろう。わたし、うまくやっていける自信がないの。告白する前から何を言っているの、って言うかもしれないけど。恋人どうしって、お互いに恋心があるから成り立つものでしょう? わたし、自分では恋心を持ってもらうまでの魅力があるようには思えないんだけど……」
「寿々子ちゃん」
りなこちゃんは、一回言葉を切った後、続ける。
「既に何人かの男の子に告白されている女の子が、魅力のない子のないわけじゃないでしょう? 優しくてかわいくて、ピアノもうまいんだから。もっと自信を持たないと」
「ピアノはりなこちゃんの方がうまいと思うけど」
「そんなことはない。寿々子ちゃんの方がうまいわ。とにかく寿々子ちゃんは魅力があるんだから、自分の恋心を海春くんに伝えたら、きっと相思相愛になれる」
「そうだといいんだけど……」
「まあ」
りなこちゃんはちょっと腕組みをして考えた後、
「あまりあせって告白しても、相思相愛になれないかもしれないわね。それに、寿々子ちゃん、心のどこかの幼馴染のままでいたい気持ちがあるようね」
「仲の良い幼馴染のままでいた方がいいという気持ちはどうしてもある。それに、もし恋人になって、その関係が壊れたとするじゃない。そうすると、幼い頃の思い出すべてが壊れてしまって、何も残らない気がする。それも怖いの」
「気持ちはわからなくはない。幼い頃の思い出は大事にしたいものね。でも寿々子ちゃん、さっき、わたしが海春くんのこと『好き』って言った時、やきもちをやいたでしょう? ということは、海春くんのことが好きで、誰にも渡したくないってことじゃない」
「それはそうだけど」
「仲の良い幼馴染のままだったら、いずれ誰かの恋人になってしまうわよ。その時、告白しておけばよかったと思っても、間に合わないかもしれないわよ。もちろん、そこから挽回できなくはないとは思うけど」
海春くんが他の女の子と恋仲になる……。
りなこちゃんの言う通り、わたしが恋人にならなければ、いずれ他の女の子と結びついてしまうだろう。
そうならない為には、告白しなければならないのだけど……。
「ごめん。りなこちゃんの言うことはわかるんだけど、まだ告白するだけの勇気はない。もう少し、勇気が湧いてくるまでの時間がほしい」
わたしはそう言った。
「今はしょうがないわね」
ため息をつくりなこちゃん。
「わたし、寿々子ちゃんを応援しているわ。寿々子ちゃんが海春くんと恋人どうしになるのを応援している」
「ありがとう」
「うん。とにかく想いをもっと強くしていくのよ」
そう言うと、りなこちゃんは微笑んだ。
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