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第二十二話 朝から家に来たい紗緒里ちゃん
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今日は休日。
朝九時になり、俺は目が覚めた。
昨日の夜から今日にかけてゲームをしていたので、ついつい夜更かしをしてしまった。
眠い。なんだか起きるのが面倒だ。もう一度寝ようか、と思う。
起きようとも思ったのだが、眠気には勝てず。そのまままた眠りにつき、起きたのは昼前。
さすがに起きなければ、と思っていると。
ピンポーン!
とチャイムが鳴った。
そうだ、紗緒里ちゃんが来るんだった。これじゃ彼女に申し訳ない。
俺はあわてて玄関へと向かい、ドアを開ける。
「ちょっとソファ座って待ってもらえる? ちょっと身支度したいから。ごめん」
俺は彼女にそう呼びかけると、洗面台に向かった。
「いいですよ。待っていますから」
そう応える彼女。
俺はシャワーを浴びると、急いで普段着に着替える。
「ごめん、待ったよね」
「いいえ、いいんです。朝からおにいちゃんの家に行きたいって言ったのはわたしですから」
最初紗緒里ちゃんは、今日の午後三時すぎから来ることになっていた。しかし、彼女の頼みで正午頃から来ることになった。
それが決まったのは、昨日の学校からの帰り道だった。
毎日一緒に帰るようになった俺達。
短い時間ではあるが、紗緒里ちゃんは楽しそうだ。
俺も女の子と一緒に帰るというシチュエーションにあこがれていたので、結構楽しい。
今日も一緒に帰っている。
「明日の夜は、楽しみにしていてね。もしかすると、あまりうまくないかもしれないけど」
俺がそう言うと、
「おにいちゃんの料理がおいしくないわけないじゃないですか」
と彼女は言ってくれる。
「ありがとう。俺も最近料理は結構上達してきたと思っているんだ。期待に応えられるかはわからないけど、少しでもいい味が出せるようにするつもりだよ」
「わたしは、おにいちゃんの料理が食べられるだけでうれしいです」
そう言って彼女は微笑んだ。
この彼女の笑顔の為にも、おいしい料理を作らねば。
「でもおにいちゃん、わたし、本当に手伝わなくていいんですか?」
「料理は俺が今回全部やりたい。紗緒里ちゃんの世話になってばかりじゃいけないから」
それを聞くと、彼女は少し真剣な表情になり、
「おにいちゃんの世話をしたいのに、それじゃ、わたしがおにいちゃんの世話になってしまいます。何かさせてください」
と言ってきた。
俺は、
「別に気にしないでいいよ。買い物に付き合ってくれるんだし」
と言った。
買い物に付き合ってくれるだけでも、ありがたいと思っている。
しかし、彼女は、
「わたしはおにいちゃんの役に立ちたいんです。本当なら平日も、朝ご飯やお昼のお弁当、そして晩ご飯も作ってあげたいのに……。わたし、おにいちゃんと会えなくなってから、ずっとそういうことが出来る日を夢見ていたんですよ。おにいちゃんさえその気になれば、これから作っていこうと思っています」
「そんなことをしたら、紗緒里ちゃんの体が持たないよ。俺は紗緒里ちゃんのことを思っているから、平日は遠慮させてもらっているんだ」
「おにいちゃんって、なんて優しいんですか。わたしますます好きになっちゃいます」
「いや、親しい子の体調を気づかうのは当然だと思うけど」
「でもそこまで気づかってくれる人ってなかなかいないと思いますよ。うれしいです」
俺は当然のことを言っているだけなのに、彼女の想いはますます強まっているようだ。
俺もうれしいのはうれしいけど。
そうしている内に、俺と彼女の家の分岐点にきた。
俺達は立ち止まる。
「お願いです。明日、朝からおにいちゃんの家に行かせてください」
「朝から?」
「そうです。朝から行って、家の家事をさせてください。洗濯とかそうじとか。朝食と昼食も作りますよ。おにいちゃん、いつも朝ご飯作るので大変だと思いますので、休日くらいはわたしが作ります」
「それは紗緒里ちゃんに申し訳ない。特に朝食と昼食は」
「わたしは喜んで作るんですから、心配しなくていいです」
「でも炊事・洗濯・そうじ全部と言うのは……」
俺もそれらの大変さはよくわかっているので、そういうことはさせたくないと思う。
でも全部させないとなると、今度は彼女の方が悲しむだろう。これだけやる気があるのだ。
「じゃあ、こうしよう。正午頃きてもらえないだろうか。それで昼食を一緒に食べて、それから洗濯やそうじをしてもらうことにしよう。申し訳ないけど」
「朝からじゃないんですか?」
「朝からはさすがに紗緒里ちゃんがつらいだろう」
「わたしはつらくないですけど」
「いや、ここは昼からにしてほしい。やっぱり紗緒里ちゃんの負担は少しでも少なくしたいんだ」
「お昼ご飯はどうします? これはさすがにわたしが作りますよ。いや、作らせてください。お願いします」
紗緒里ちゃんが頭を下げる。
「昼食も俺が作ろうと思ったんだけど……」
「わたしが作ります」
「そこまで言うんなら、お願いすることにしよう」
「では昼食は私の方で」
「お願いします」
「お昼ご飯の食材はわたしが買っておきます」
「申し訳ないね。ありがとう」
「わたしの方こそ、受け入れてもらってありがたいです。では正午頃伺います」
「うん。正午頃ね」
「おにいちゃん、それではまた明日。その前に手をつなぎたいです。今日はこれでお別れなんですから」
紗緒里ちゃんは、顔を赤くしながらそう言った。かわいい。
朝九時になり、俺は目が覚めた。
昨日の夜から今日にかけてゲームをしていたので、ついつい夜更かしをしてしまった。
眠い。なんだか起きるのが面倒だ。もう一度寝ようか、と思う。
起きようとも思ったのだが、眠気には勝てず。そのまままた眠りにつき、起きたのは昼前。
さすがに起きなければ、と思っていると。
ピンポーン!
とチャイムが鳴った。
そうだ、紗緒里ちゃんが来るんだった。これじゃ彼女に申し訳ない。
俺はあわてて玄関へと向かい、ドアを開ける。
「ちょっとソファ座って待ってもらえる? ちょっと身支度したいから。ごめん」
俺は彼女にそう呼びかけると、洗面台に向かった。
「いいですよ。待っていますから」
そう応える彼女。
俺はシャワーを浴びると、急いで普段着に着替える。
「ごめん、待ったよね」
「いいえ、いいんです。朝からおにいちゃんの家に行きたいって言ったのはわたしですから」
最初紗緒里ちゃんは、今日の午後三時すぎから来ることになっていた。しかし、彼女の頼みで正午頃から来ることになった。
それが決まったのは、昨日の学校からの帰り道だった。
毎日一緒に帰るようになった俺達。
短い時間ではあるが、紗緒里ちゃんは楽しそうだ。
俺も女の子と一緒に帰るというシチュエーションにあこがれていたので、結構楽しい。
今日も一緒に帰っている。
「明日の夜は、楽しみにしていてね。もしかすると、あまりうまくないかもしれないけど」
俺がそう言うと、
「おにいちゃんの料理がおいしくないわけないじゃないですか」
と彼女は言ってくれる。
「ありがとう。俺も最近料理は結構上達してきたと思っているんだ。期待に応えられるかはわからないけど、少しでもいい味が出せるようにするつもりだよ」
「わたしは、おにいちゃんの料理が食べられるだけでうれしいです」
そう言って彼女は微笑んだ。
この彼女の笑顔の為にも、おいしい料理を作らねば。
「でもおにいちゃん、わたし、本当に手伝わなくていいんですか?」
「料理は俺が今回全部やりたい。紗緒里ちゃんの世話になってばかりじゃいけないから」
それを聞くと、彼女は少し真剣な表情になり、
「おにいちゃんの世話をしたいのに、それじゃ、わたしがおにいちゃんの世話になってしまいます。何かさせてください」
と言ってきた。
俺は、
「別に気にしないでいいよ。買い物に付き合ってくれるんだし」
と言った。
買い物に付き合ってくれるだけでも、ありがたいと思っている。
しかし、彼女は、
「わたしはおにいちゃんの役に立ちたいんです。本当なら平日も、朝ご飯やお昼のお弁当、そして晩ご飯も作ってあげたいのに……。わたし、おにいちゃんと会えなくなってから、ずっとそういうことが出来る日を夢見ていたんですよ。おにいちゃんさえその気になれば、これから作っていこうと思っています」
「そんなことをしたら、紗緒里ちゃんの体が持たないよ。俺は紗緒里ちゃんのことを思っているから、平日は遠慮させてもらっているんだ」
「おにいちゃんって、なんて優しいんですか。わたしますます好きになっちゃいます」
「いや、親しい子の体調を気づかうのは当然だと思うけど」
「でもそこまで気づかってくれる人ってなかなかいないと思いますよ。うれしいです」
俺は当然のことを言っているだけなのに、彼女の想いはますます強まっているようだ。
俺もうれしいのはうれしいけど。
そうしている内に、俺と彼女の家の分岐点にきた。
俺達は立ち止まる。
「お願いです。明日、朝からおにいちゃんの家に行かせてください」
「朝から?」
「そうです。朝から行って、家の家事をさせてください。洗濯とかそうじとか。朝食と昼食も作りますよ。おにいちゃん、いつも朝ご飯作るので大変だと思いますので、休日くらいはわたしが作ります」
「それは紗緒里ちゃんに申し訳ない。特に朝食と昼食は」
「わたしは喜んで作るんですから、心配しなくていいです」
「でも炊事・洗濯・そうじ全部と言うのは……」
俺もそれらの大変さはよくわかっているので、そういうことはさせたくないと思う。
でも全部させないとなると、今度は彼女の方が悲しむだろう。これだけやる気があるのだ。
「じゃあ、こうしよう。正午頃きてもらえないだろうか。それで昼食を一緒に食べて、それから洗濯やそうじをしてもらうことにしよう。申し訳ないけど」
「朝からじゃないんですか?」
「朝からはさすがに紗緒里ちゃんがつらいだろう」
「わたしはつらくないですけど」
「いや、ここは昼からにしてほしい。やっぱり紗緒里ちゃんの負担は少しでも少なくしたいんだ」
「お昼ご飯はどうします? これはさすがにわたしが作りますよ。いや、作らせてください。お願いします」
紗緒里ちゃんが頭を下げる。
「昼食も俺が作ろうと思ったんだけど……」
「わたしが作ります」
「そこまで言うんなら、お願いすることにしよう」
「では昼食は私の方で」
「お願いします」
「お昼ご飯の食材はわたしが買っておきます」
「申し訳ないね。ありがとう」
「わたしの方こそ、受け入れてもらってありがたいです。では正午頃伺います」
「うん。正午頃ね」
「おにいちゃん、それではまた明日。その前に手をつなぎたいです。今日はこれでお別れなんですから」
紗緒里ちゃんは、顔を赤くしながらそう言った。かわいい。
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