上 下
18 / 36
吸血連合篇(前編)

第14話 ルシファー現る

しおりを挟む
2人はくっついてきた水の大精霊を連れて11階層に戻った。

「アオイちゃん、大丈夫だった?」
「うん。私が連れ去られたのは、フォカロルさんが私にお姉ちゃんのことが聞きたかったんだってさ。」
「そっか。アイツ、私を孫でもあるかのように可愛がったり心配したりしてたんだよね。昔から。」
「そうだったんだ。じゃあお姉ちゃん、このは知ってる?」
「知らないよ。その娘はフォカロルと関係あるの?」
「実はこの娘、フォカロルさんの魔力から生まれた水の大精霊らしいんだけど。保護してほしいって言われたから連れてきたの。」
「え⁉まさか72柱が大精霊を生むなんて。ちなみに、この娘の名前は?」
「聞いたんだけど、何も答えてくれなくて。フォカロルさんも何も言ってなかったし…。」
「じゃあ、私たちで名前を付ければいいんじゃない?」
「え?そんなことして大丈夫なのかな?」
「でも、その娘はフォカロルの頼みで保護してきたんなら、名前が無いと不便だし、かわいそうでしょ?」
「うん。それもそうだね。」
「なら、名前はどうする?ご主人様、何かいい案ない?」
「うーん。そうだな…。」

シドラは考えながらその少女を見つめた。その娘は緑青ろくしょう色をしていた。
そしてシドラは思いついた。

「よし、決まった!この娘の名前はパティーナだ。」
「パティーナ?髪とかの色から決めたの?」
「うん、そうだけど。でも、女の子らしい名前にはなってるでしょ?」
「もしかしてお兄ちゃんってネーミングセンスに自信無いの?」
「ま、まぁ、僕はあんまりそういうことは得意じゃ、ないかな。」
「でも、いいと思うよ。」

「それじゃあこれからよろしくね、パティーナ。」
「…。」

せっかく名前を決めたのに、パティーナはただ少し頬を染めただけで何も言わなかった。

「もしかして、名前気に入らなかった?」

今度は、頭を大きく横に何度も振った。

<侵略者ごときが我が眷属の子に名前を付けるとはいかがなものかな。>
「こ、この声は…。」
<そもそも、侵略者の仲間になる奴も侵略者に自分の子を渡す奴も悪い。72柱も堕ちたものだ。>
「お、お前が堕天王ルシファーか?」
<その通りだ。貴様らには私と面会してもらおう。>

すると、全員の足元に魔法陣が出現し、ワープした。

「ようこそ、50階層へ。」
「な、なんで堕天王ルシファーが大精霊ロキの姿をしているんだ⁉」
「聞いたことは無いか?ルシファーとロキが同一人物だという迷信を。」
「そんな情報、誰も充てにするはずがない。」
「しかし、大昔に1人の文献学者はこの説を唱えた。当時は一巻の終わりだと思ったが、地上の生物たちが馬鹿でその説を信じる者が少なくて助かったよ。」
「なら、なぜお前が72柱を従えているんだ?」
「それは、私が大精霊ロキであると同時に堕天王ルシファーであり、<魔術王の鍵マージキングス・キー>のレメゲトンであるからだよ。しかし、2代目以降の72柱は私自身でコントロールできない。だから私に復讐を企む奴が出てくるのだ。」
「ルシファー様。私はルシファー様に愛してほしかったんです。なのに、ルシファー様が全く私にかまってくれないから…」
「すでに裏切ったようなものだ。もうお前は72柱に要らない。」
「そんな…。」
「あと、私自身の我が子も返してもらおうか。」
「我が子?まさか、ヴィネアが…。」
「ほら、パパの命令だ。こっちに来なさい、ヨルムンガンド。」
「私のパパはお前じゃないよ。」
「ほう。知らぬ間に口が利けるようになったかと思えば。親に生意気な口を叩くな。さあ、来い。」
「いやだ。」
「なら、ここで強制的に制限リミットは解除しよう。『解放されよ、禁忌の力。其の真名はヨルムンガンド。大精霊ロキの名のもとに本性をここに権限せよ。』」
「いや、いや…ぁああああああ!!!」

そして、ヴィネアは巨体化し、その間に頭に2本の角を生やした巨大すぎる龍へと変貌してしまった。

「なぜこんなことを…」
「なぜって、もともと私の物だったから取り戻したまでだ。」
「こんな姿にしてヴィネアをどうするつもりだ?」
「こんな姿?これが本性だ。敵とはいえ、錯覚してもらっては困る。どうするつもりか、って部分だが、もちろん親子と眷属で世界征服だ。」
「そんなのは親子じゃない!!お前はただヴィネアを利用しようとしているだけだ。」
「そんなことはな。貴様、私にそんな口を利いたことを後悔しろ。さっきの言葉、私と戦って私が勝てば取り消してもらうぞ。」
「なら、もし僕が勝ったらヴィネアをもとの姿に戻してもらうぞ。」
「臨むところだ。」

「オーディン様、ルシファーを発見しました。」
「総員、かかれ!!」

「誰だ⁉」
「あれは…。オーディンとその天空騎士団だ!!」

「アンタらだけじゃないよ。」
「今度こそ討伐してやるぅー!!」
「おい異世界ロキ、また来たのか。何度も言わせるな。ルシファーなど我らで十分だと。」
「いいじゃん。どうせ最後は取り逃がすんだからさ。」
「そもそも、このルシファーはお前らの世界のだろ?そんな無責任な発言していいのか?」
「なあ、結局帰れってのか戦えってのかはっきりしろよ。」
「すまない。やっぱり戦ってくれ。」

「異世界からの援護?」
「あれは異世界のロキと異世界の戦乙女ワルキューレ追放戦乙女ワルキューレ・ベニシュメントだ。」

「いいだろう‼我々72柱と堕天使で貴様らを返り討ちにしてくれるわ!!!」

続く 次回、世界樹での戦い
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

スキル【合成】が楽しすぎて最初の村から出られない

紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
 15歳ですべての者に授けられる【スキル】、それはこの世界で生活する為に必要なものであった。  世界は魔物が多く闊歩しており、それによって多くの命が奪われていたのだ。  ある者は強力な剣技を。またある者は有用な生産スキルを得て、生活のためにそれらを使いこなしていたのだった。  エメル村で生まれた少年『セン』もまた、15歳になり、スキルを授かった。  冒険者を夢見つつも、まだ村を出るには早いかと、センは村の周囲で採取依頼をこなしていた。

処理中です...