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吸血連合篇(前編)
第7話 Shall we smile?
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あの後、何だかんだあって夕食を済ませたシドラとアオイだったが、シドラは気持ちの靄が振り払いきれず、そのままテントで寝ようとした。
「お兄ちゃん、あの悪魔たちが来てからなんか変だよ。」
「べ、別にちょっと気持ちが落ち着かないだけで何もないけど。」
「誤魔化さないで!何かあるんでしょ?」
「だから、別に何もないって。」
「何で本当のこと話してくれないの?私、分かってるからね。お兄ちゃんが何か隠してるって。」
「分かってないよ。だって、僕の本当の気持ちは…」
「謝ってよ。私にお兄ちゃんぶって、強がって、私に何か隠してること。」
「僕は、アオイにお兄ちゃんぶりたくないよ。できることなら…」
「謝って!謝ってよ…。」
「別に、僕に謝ることなんか…」
「お兄ちゃんなんかもう知らない!3階層から先は私が進めるからお兄ちゃんは先に帰ってればいい!!」
「あ、ちょっと…。」
そして、アオイの姿は3階層の入り口の奥へ消えていった。
*
「僕、どうすればいいんだろう…。」
「ったく、最近の男は女の心が全く分かっとらん!!」
「…⁉お前、72柱のなかでも上位悪魔だな?」
「おいおい、アスモデウスの奴から聞いとったが、だいぶケンカ腰だな…。もっと人、いや、悪魔を信用できんか!!安心せい。俺は72柱の序列13、ベレトだ。俺はお前にあの少女と仲直りする手伝いをしに来ただけだ。」
「僕がアオイと仲直りする手伝い?そんなもの、無くたって…」
「そこだ、そこがあかんのだ!!そうやって一人で背負い込むのがあかん!!あのな、お前は人の心が読めんか?」
「悪魔じゃないから…」
「物理的な話ではない!!お前は人と関わるなかで相手の性格が分かるか?」
「…あんまり。」
「何度も言わせるな、そこがあかん!!あのな、恋愛に於いて男女が長い時間をともにするには、互いの相手に対する理念を自然なうちに理解せねばならん。それができんのなら、その男女は早々に決別する。」
「自然なうちに、って、そんなことができるわけ…」
「お前は、すぐそうやって否定的になるところもあかん!!少なくとも、あの少女はお前にできる限り尽くそうと考えておった。しかし、お前がそれにも気づかず、敵を自分だけで撃破するからあの少女はお前に必要とされているかを心配してお前にひたすら話しかけた。」
「…えっ?」
「で、お前に話しかける口実でお前の身を案じたが、その口実が運悪くお前の図星を指してお前は誤魔化そうとした。それがいけなかったな。少女は自分はもうお前に必要とされていないとも考えてしまった。」
「…そうか。…ん、“も”?」
「気づいたか。その気づきを少女に回してやれればな。」
「ぐっ…。」
「そうだ。少女はお前にもっと必要とされたい、という想いが一番大きいのだ。だから、認めてもらえるよう虚勢を張ってお前に先に帰れと言った。お前は、自分の気持ちにも少女の気持ちにも鈍感すぎたんだ。」
「自分の気持ちにも?」
「お前、ゼパルに変な魔法をかけられただろ?」
「ああ、確かにあの後から気持ちが変で落ち着かなかったな…。」
「その感情こそが”恋”だ。」
「この気持ちが、恋…。」
「そう気づいたからには、少女に正直に振舞ってみるのはどうだ?あの少女はお前の心を見透かしている。恋の感情までは見透かせなかったみたいだが。」
「正直に、か。」
「俺の専門は恋愛だ。またお前が恋愛でつまずいたら俺は必ずお前の相談に乗る。」
「お前は敵じゃないのか?」
「…さあね。」
そして、メギドは消えていった。
「…謝らないと。」
*
「アオイ!!大丈夫?」
「ほっといてよ。」
「さっきはごめん。」
「いいよ、謝らないで。」
「本当にごめん!これからは隠し事はしないから…」
「言ったね?」
「え?」
「じゃあ1つ聞くよ。お兄ちゃんは私のことが好きなの?」
「え、えっと…、それは…、好きじゃないよ。」
「え?そんな…。私はお兄ちゃんが大好きなのに…」
「…それだよ。僕はアオイのことは好きじゃない。でも、大好きなんだ。」
「お、お兄ちゃん…。からかってるつもり?」
「からかってなんかないよ。義理の兄妹としても、同胞としても、友人としても…」
「こ、恋人としては…?」
「そりゃあ、もちろん!だから、笑って。僕は、アオイの笑ってる顔が一番大好きだな。」
「…ありがとう。でも、まだお兄ちゃんと恋人同士にはなりたくないな。」
「何で⁉」
「だって…、まだ今の関係のままでいたいから…。」
「…そっか。」
「じゃあ、これからは友達以上恋人未満の関係になりたいな。」
「いいよ。これからもよろしくね。」
「…うん!!」
続く 次回、グラシャラボラス現る
「お兄ちゃん、あの悪魔たちが来てからなんか変だよ。」
「べ、別にちょっと気持ちが落ち着かないだけで何もないけど。」
「誤魔化さないで!何かあるんでしょ?」
「だから、別に何もないって。」
「何で本当のこと話してくれないの?私、分かってるからね。お兄ちゃんが何か隠してるって。」
「分かってないよ。だって、僕の本当の気持ちは…」
「謝ってよ。私にお兄ちゃんぶって、強がって、私に何か隠してること。」
「僕は、アオイにお兄ちゃんぶりたくないよ。できることなら…」
「謝って!謝ってよ…。」
「別に、僕に謝ることなんか…」
「お兄ちゃんなんかもう知らない!3階層から先は私が進めるからお兄ちゃんは先に帰ってればいい!!」
「あ、ちょっと…。」
そして、アオイの姿は3階層の入り口の奥へ消えていった。
*
「僕、どうすればいいんだろう…。」
「ったく、最近の男は女の心が全く分かっとらん!!」
「…⁉お前、72柱のなかでも上位悪魔だな?」
「おいおい、アスモデウスの奴から聞いとったが、だいぶケンカ腰だな…。もっと人、いや、悪魔を信用できんか!!安心せい。俺は72柱の序列13、ベレトだ。俺はお前にあの少女と仲直りする手伝いをしに来ただけだ。」
「僕がアオイと仲直りする手伝い?そんなもの、無くたって…」
「そこだ、そこがあかんのだ!!そうやって一人で背負い込むのがあかん!!あのな、お前は人の心が読めんか?」
「悪魔じゃないから…」
「物理的な話ではない!!お前は人と関わるなかで相手の性格が分かるか?」
「…あんまり。」
「何度も言わせるな、そこがあかん!!あのな、恋愛に於いて男女が長い時間をともにするには、互いの相手に対する理念を自然なうちに理解せねばならん。それができんのなら、その男女は早々に決別する。」
「自然なうちに、って、そんなことができるわけ…」
「お前は、すぐそうやって否定的になるところもあかん!!少なくとも、あの少女はお前にできる限り尽くそうと考えておった。しかし、お前がそれにも気づかず、敵を自分だけで撃破するからあの少女はお前に必要とされているかを心配してお前にひたすら話しかけた。」
「…えっ?」
「で、お前に話しかける口実でお前の身を案じたが、その口実が運悪くお前の図星を指してお前は誤魔化そうとした。それがいけなかったな。少女は自分はもうお前に必要とされていないとも考えてしまった。」
「…そうか。…ん、“も”?」
「気づいたか。その気づきを少女に回してやれればな。」
「ぐっ…。」
「そうだ。少女はお前にもっと必要とされたい、という想いが一番大きいのだ。だから、認めてもらえるよう虚勢を張ってお前に先に帰れと言った。お前は、自分の気持ちにも少女の気持ちにも鈍感すぎたんだ。」
「自分の気持ちにも?」
「お前、ゼパルに変な魔法をかけられただろ?」
「ああ、確かにあの後から気持ちが変で落ち着かなかったな…。」
「その感情こそが”恋”だ。」
「この気持ちが、恋…。」
「そう気づいたからには、少女に正直に振舞ってみるのはどうだ?あの少女はお前の心を見透かしている。恋の感情までは見透かせなかったみたいだが。」
「正直に、か。」
「俺の専門は恋愛だ。またお前が恋愛でつまずいたら俺は必ずお前の相談に乗る。」
「お前は敵じゃないのか?」
「…さあね。」
そして、メギドは消えていった。
「…謝らないと。」
*
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「ほっといてよ。」
「さっきはごめん。」
「いいよ、謝らないで。」
「本当にごめん!これからは隠し事はしないから…」
「言ったね?」
「え?」
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「…それだよ。僕はアオイのことは好きじゃない。でも、大好きなんだ。」
「お、お兄ちゃん…。からかってるつもり?」
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「こ、恋人としては…?」
「そりゃあ、もちろん!だから、笑って。僕は、アオイの笑ってる顔が一番大好きだな。」
「…ありがとう。でも、まだお兄ちゃんと恋人同士にはなりたくないな。」
「何で⁉」
「だって…、まだ今の関係のままでいたいから…。」
「…そっか。」
「じゃあ、これからは友達以上恋人未満の関係になりたいな。」
「いいよ。これからもよろしくね。」
「…うん!!」
続く 次回、グラシャラボラス現る
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