299 / 350
第二十四話
7
しおりを挟む
学校に行く時って、必ずと言っていいほど確認する。
制服をしっかりと着こなしているかどうかを──
スカートの丈が少し短く、少し動いただけで翻ってしまい、中の下着が見えそうになっちゃうけど、気にしたら負けだと思う。
「おはよう、弟くん」
「おはよう、香奈姉ちゃん。その……」
私の家の玄関先で待っていた楓は、何かを言いかけようとしたが、口を閉ざす。
なんだろう。
私、楓に何かしたのかな?
「どうしたの?」
「ううん。なんでもない。香奈姉ちゃんは、いつもどおりだなって思って」
「なによ、それ? いつもどおりって言われたらたしかにそうだけど……」
私は、そう言って楓と一緒に歩き始める。
そうしていつもどおり楓と一緒に登校していると、途中で奈緒ちゃんと会う。
「おはよう、香奈。楓君も──」
「おはよう、奈緒ちゃん」
「奈緒さん、おはようございます」
奈緒ちゃんは、どうしてなのかわからないが私の隣ではなく、楓の隣を歩き出す。
楓は、特に変わった様子はない。
見た感じはいつもどおりだ。
「ねぇ、楓君」
「ん? どうしたんですか? 奈緒さん」
「今日は、あたしと付き合えるかな? ちょっとした用事があってね」
「変な用事でなければ、別にいいですけど。何かあったんですか?」
「ここでは、ね。ちょっと説明しづらいかも……」
奈緒ちゃんは、私の方をチラリと見てそう言っていた。
ここでピンときた。
私に聞かれたらマズイ話だということに……。
それに奈緒ちゃんのあの目は──
「奈緒ちゃんが困ってるんだから、しっかりと聞いてあげないとね」
私は、笑顔でそう言った。
「香奈姉ちゃん……」
楓は、何かを訴えかけるような目で見てくる。
楓には悪いけど、奈緒ちゃんのスキンシップに付き合ってあげられるのは、あなたしかいないんだよ。
ここはぜひ、頑張ってもらわないと──
私と奈緒ちゃんとは昔からの親友だから、目を見ればわかってしまう。
もしかしたら、奈緒ちゃんにもわかっているのかもしれない。
今の私と楓の関係性が──
「香奈もこう言ってるんだし。いいよね?」
奈緒ちゃんのその言葉は、逆を言わせたら『まさか断らないよね?』っていう風にも聞こえてくる。
現にそう言って楓に迫っている時、制服の胸元の襟が少し開いていて下着がチラッと見えていた。
奈緒ちゃんなりに楓を誘惑しているのがわかる。
ちなみに、色はピンクと白のツートンカラーだった。
奈緒ちゃんも、そんな色の下着を着用するんだな。
もしかして、楓のためにそんな下着を?
楓は、奈緒ちゃんから視線を逸らして言う。
「す、少しくらいなら……」
ばっちり見ちゃったくせに今さら視線を逸らすとか、ありえないんだけどな。
まったく、楓ったら……。
「ありがとう、楓君」
奈緒ちゃんは、とても嬉しそうな表情を浮かべる。
奈緒ちゃんのスタイルはかなり良い。
楓の心を掴むには充分だろう。
私も負けられないって思えてしまうくらいに……。
放課後。下校時間。
今日の授業が終わると、奈緒ちゃんは私よりもはやく帰っていった。
行ったところは、すぐにわかる。
「ねぇ、香奈ちゃん」
声をかけてきたのは、理恵ちゃんだった。
きっと奈緒ちゃんがいないので、不思議に思ったんだろう。
私は、帰り支度をしながら返事をする。
「ん? どうしたの、理恵ちゃん?」
「美沙なんだけど、どこに行ったか知らないかな? なんか見当たらないんだよね……」
「え……」
見当違いの質問に私は驚いてしまい、周囲を見渡す。
たしかに、美沙ちゃんの姿がない。
学校を休んだとは聞いてないし。
そういえば、奈緒ちゃんが帰ってしまったタイミングでいなくなったような。
もしかして──
「まさか、ねぇ……」
私は、つい言葉に出してしまう。
その言葉が聞こえていたのか、理恵ちゃんは思案げな表情で訊いてきた。
「なにか心当たりでもあるの?」
「どうだろう。あるって言えばあるし、ないって言えばないかなぁ……。どちらにしても、ちょっと説明しづらいかも」
私は、どちらともとれないような表現で言う。
理恵ちゃんは、どちらかといえば消極的なタイプだ。
私の返答一つで、答えを決めると思っていい。
「そっか。それなら、聞かない方がいいのかな?」
「奈緒ちゃんに聞けばわかるんじゃないかな。先に帰っちゃったからどうにもならないけど、たぶん弟くんのところにいると思うよ」
「楓君のところか……」
「どうする? 弟くんのところまで行ってみる?」
神妙な表情を浮かべて言う理恵ちゃんに、私は訊いてみる。
すると理恵ちゃんは、不安そうな表情で私を見てきた。
「香奈ちゃんが付き合ってくれるのなら……」
「私は、別に構わないよ」
即答してしまうあたり、私も奈緒ちゃんのことが気になってるんだと思う。
美沙ちゃんの事も、だけど。
「ありがとう、香奈ちゃん」
理恵ちゃんは、とても嬉しそうにお礼を言っていた。
男子校にたどり着いたものの、そこに奈緒ちゃんの姿はなかった。
まさに『一足違い』と言ったところだろうか。
「奈緒ちゃんは、いないね。どうやら、弟くんと帰っちゃったみたいだね」
「美沙もいないみたいだし。一体、どこへ行っちゃったんだろう……」
理恵ちゃんは、美沙ちゃんも奈緒ちゃんと一緒に行動しているものと思っているみたいだ。
たぶん違うと思うんだけど。
「美沙ちゃんに関しては、たぶん奈緒ちゃんたちとは違うところに行ったんじゃないかな」
「わかるの?」
「うん。たぶんね」
断言はできないけど、だいたいはわかってしまう。
美沙ちゃんの場合、単独行動が結構多いから。
今回の場合は、約束もしてないだろうし。
「そっか」
理恵ちゃんは、やっぱり寂しそうだった。
普段から仲がいいもんね。美沙ちゃんと理恵ちゃんは──
そういえば、楓と理恵ちゃんが一緒の時ってあまりないけど、どうなんだろう?
やっぱり仲良しなのかな。
改めてそんな事を聞けるような雰囲気ではないし。
「どうする? 美沙ちゃんが立ち寄りそうなところを行ってみよっか?」
私は、そう提案してみた。
奈緒ちゃんなら、大丈夫だろうと思ったからだ。
まさかエッチなことはしないだろう。
とりあえずは、美沙ちゃんを追いかけてみるのが最適解だ。
「うん。そうだね」
理恵ちゃんは、不安そうな表情を隠しもせずにそう答えた。
美沙ちゃんの行動範囲は、理恵ちゃんが一番よく知っているはずだから、知らないところには行ってないだろう。
「それじゃ、早速だけど行ってみよう」
私は、そう言って歩きだした。
目的地もなく歩くのは、あまり推奨はしないんだけど……。この際、仕方ないか。
ナンパにさえ気をつければ、大丈夫だろう。
制服をしっかりと着こなしているかどうかを──
スカートの丈が少し短く、少し動いただけで翻ってしまい、中の下着が見えそうになっちゃうけど、気にしたら負けだと思う。
「おはよう、弟くん」
「おはよう、香奈姉ちゃん。その……」
私の家の玄関先で待っていた楓は、何かを言いかけようとしたが、口を閉ざす。
なんだろう。
私、楓に何かしたのかな?
「どうしたの?」
「ううん。なんでもない。香奈姉ちゃんは、いつもどおりだなって思って」
「なによ、それ? いつもどおりって言われたらたしかにそうだけど……」
私は、そう言って楓と一緒に歩き始める。
そうしていつもどおり楓と一緒に登校していると、途中で奈緒ちゃんと会う。
「おはよう、香奈。楓君も──」
「おはよう、奈緒ちゃん」
「奈緒さん、おはようございます」
奈緒ちゃんは、どうしてなのかわからないが私の隣ではなく、楓の隣を歩き出す。
楓は、特に変わった様子はない。
見た感じはいつもどおりだ。
「ねぇ、楓君」
「ん? どうしたんですか? 奈緒さん」
「今日は、あたしと付き合えるかな? ちょっとした用事があってね」
「変な用事でなければ、別にいいですけど。何かあったんですか?」
「ここでは、ね。ちょっと説明しづらいかも……」
奈緒ちゃんは、私の方をチラリと見てそう言っていた。
ここでピンときた。
私に聞かれたらマズイ話だということに……。
それに奈緒ちゃんのあの目は──
「奈緒ちゃんが困ってるんだから、しっかりと聞いてあげないとね」
私は、笑顔でそう言った。
「香奈姉ちゃん……」
楓は、何かを訴えかけるような目で見てくる。
楓には悪いけど、奈緒ちゃんのスキンシップに付き合ってあげられるのは、あなたしかいないんだよ。
ここはぜひ、頑張ってもらわないと──
私と奈緒ちゃんとは昔からの親友だから、目を見ればわかってしまう。
もしかしたら、奈緒ちゃんにもわかっているのかもしれない。
今の私と楓の関係性が──
「香奈もこう言ってるんだし。いいよね?」
奈緒ちゃんのその言葉は、逆を言わせたら『まさか断らないよね?』っていう風にも聞こえてくる。
現にそう言って楓に迫っている時、制服の胸元の襟が少し開いていて下着がチラッと見えていた。
奈緒ちゃんなりに楓を誘惑しているのがわかる。
ちなみに、色はピンクと白のツートンカラーだった。
奈緒ちゃんも、そんな色の下着を着用するんだな。
もしかして、楓のためにそんな下着を?
楓は、奈緒ちゃんから視線を逸らして言う。
「す、少しくらいなら……」
ばっちり見ちゃったくせに今さら視線を逸らすとか、ありえないんだけどな。
まったく、楓ったら……。
「ありがとう、楓君」
奈緒ちゃんは、とても嬉しそうな表情を浮かべる。
奈緒ちゃんのスタイルはかなり良い。
楓の心を掴むには充分だろう。
私も負けられないって思えてしまうくらいに……。
放課後。下校時間。
今日の授業が終わると、奈緒ちゃんは私よりもはやく帰っていった。
行ったところは、すぐにわかる。
「ねぇ、香奈ちゃん」
声をかけてきたのは、理恵ちゃんだった。
きっと奈緒ちゃんがいないので、不思議に思ったんだろう。
私は、帰り支度をしながら返事をする。
「ん? どうしたの、理恵ちゃん?」
「美沙なんだけど、どこに行ったか知らないかな? なんか見当たらないんだよね……」
「え……」
見当違いの質問に私は驚いてしまい、周囲を見渡す。
たしかに、美沙ちゃんの姿がない。
学校を休んだとは聞いてないし。
そういえば、奈緒ちゃんが帰ってしまったタイミングでいなくなったような。
もしかして──
「まさか、ねぇ……」
私は、つい言葉に出してしまう。
その言葉が聞こえていたのか、理恵ちゃんは思案げな表情で訊いてきた。
「なにか心当たりでもあるの?」
「どうだろう。あるって言えばあるし、ないって言えばないかなぁ……。どちらにしても、ちょっと説明しづらいかも」
私は、どちらともとれないような表現で言う。
理恵ちゃんは、どちらかといえば消極的なタイプだ。
私の返答一つで、答えを決めると思っていい。
「そっか。それなら、聞かない方がいいのかな?」
「奈緒ちゃんに聞けばわかるんじゃないかな。先に帰っちゃったからどうにもならないけど、たぶん弟くんのところにいると思うよ」
「楓君のところか……」
「どうする? 弟くんのところまで行ってみる?」
神妙な表情を浮かべて言う理恵ちゃんに、私は訊いてみる。
すると理恵ちゃんは、不安そうな表情で私を見てきた。
「香奈ちゃんが付き合ってくれるのなら……」
「私は、別に構わないよ」
即答してしまうあたり、私も奈緒ちゃんのことが気になってるんだと思う。
美沙ちゃんの事も、だけど。
「ありがとう、香奈ちゃん」
理恵ちゃんは、とても嬉しそうにお礼を言っていた。
男子校にたどり着いたものの、そこに奈緒ちゃんの姿はなかった。
まさに『一足違い』と言ったところだろうか。
「奈緒ちゃんは、いないね。どうやら、弟くんと帰っちゃったみたいだね」
「美沙もいないみたいだし。一体、どこへ行っちゃったんだろう……」
理恵ちゃんは、美沙ちゃんも奈緒ちゃんと一緒に行動しているものと思っているみたいだ。
たぶん違うと思うんだけど。
「美沙ちゃんに関しては、たぶん奈緒ちゃんたちとは違うところに行ったんじゃないかな」
「わかるの?」
「うん。たぶんね」
断言はできないけど、だいたいはわかってしまう。
美沙ちゃんの場合、単独行動が結構多いから。
今回の場合は、約束もしてないだろうし。
「そっか」
理恵ちゃんは、やっぱり寂しそうだった。
普段から仲がいいもんね。美沙ちゃんと理恵ちゃんは──
そういえば、楓と理恵ちゃんが一緒の時ってあまりないけど、どうなんだろう?
やっぱり仲良しなのかな。
改めてそんな事を聞けるような雰囲気ではないし。
「どうする? 美沙ちゃんが立ち寄りそうなところを行ってみよっか?」
私は、そう提案してみた。
奈緒ちゃんなら、大丈夫だろうと思ったからだ。
まさかエッチなことはしないだろう。
とりあえずは、美沙ちゃんを追いかけてみるのが最適解だ。
「うん。そうだね」
理恵ちゃんは、不安そうな表情を隠しもせずにそう答えた。
美沙ちゃんの行動範囲は、理恵ちゃんが一番よく知っているはずだから、知らないところには行ってないだろう。
「それじゃ、早速だけど行ってみよう」
私は、そう言って歩きだした。
目的地もなく歩くのは、あまり推奨はしないんだけど……。この際、仕方ないか。
ナンパにさえ気をつければ、大丈夫だろう。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる