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第二十三話

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香奈姉ちゃんの大事なところを拭き取ったハンカチは兄に見つかると大変なので、とりあえず僕の部屋に置いておこうと思う。
そんな事を思いながら、僕はハンカチを握る。
こんな事ができたのは、おそらく僕だけだろうし。

「なに? そんなにそのハンカチの匂いを嗅いじゃったりしたいの?」

香奈姉ちゃんは、僕が持ってたハンカチを見るなり、悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言ってくる。
そんなに、自身の秘部を拭き取られたハンカチが気になっているのかな。
失禁したわけじゃなく、香奈姉ちゃんの秘部から出た液体だから、よけいに気になるのかもしれないけど。

「え、ちが……。そういうんじゃなくて……」
「もう! しょうがないなぁ、弟くんは──」

さすがに時と場所をわきまえてほしいんだけど。
香奈姉ちゃんは、下着を穿くことなく立ち上がり、そのままベンチから離れる。

「あ、香奈姉ちゃん。パンツ──」

僕は、咄嗟にもう片方の手に持ってた香奈姉ちゃんのパンツを渡そうとした。
だが香奈姉ちゃんに断られてしまう。

「それは、弟くんの家に帰るまで預かっておいて」
「でも……。ノーパンのまま歩かせるわけには──」
「大丈夫だよ。私って、意外とノーパンにも慣れてるんだよね」

香奈姉ちゃんは、そう言ってワンピースのスカートの部分を指先で掴み、大事なところが見えるか見えないかのギリギリまでたくしあげる。
香奈姉ちゃんなりにアプローチしてるつもりなんだろうけど。
少なくとも、それはこんなところでする事じゃない。

「ちょっ……。香奈姉ちゃん。見えちゃうって……」
「弟くんになら、見せちゃっても平気だよ」

香奈姉ちゃんは、嬉しそうにそう言う。
これ以上は、本気で大事なあそこをここで見せそうなので、言うのをやめておく。

「………」

このパンツは、どうしたらいいんだろう。
香奈姉ちゃんに返したくても、受け取らずに断っちゃうし……。
ぞんざいにするわけにもいかないから、これも大事に仕舞っておこう。

「なんでおし黙っちゃうの? 私のは、見たくないの?」
「あー。えっと……」

この場合、どう反応すればいいのかわからない。
見たいか見たくないかと聞かれたら、『見たい』っていうのが一番の本音なんだけど、場所がね。
香奈姉ちゃんの大事なあそこは、魅惑的な感じがするんだけど。
見るならじっくりと舐めるように見たいし。

「弟くんがそんな態度だと、もう見せてあげないかもなぁ」

香奈姉ちゃんは、ムッとしたような表情になる。
僕は、慌てて口を開く。

「いや、見たいです。でも、さすがにこんな場所じゃ──」
「そっか。公園だと逆に恥ずかしいもんね」
「うんうん。そういうのは、家に帰ってからじっくりと──」
「『じっくりと』、か。弟くんって、意外とエッチなんだね?」

香奈姉ちゃんは、意識してしまったのか頬を赤くして大事なあそこに手を添える。
それは、香奈姉ちゃんにだけは、絶対に言われたくなかったな。
季節的にはノーパンでも問題はなさそうだけど。
生理とかは大丈夫なんだろうか。
そこが心配だ。

家に帰ってくると、香奈姉ちゃんはさっそく僕に迫ってくる。
僕の部屋だとわかっていても迫ってくるあたり、よっぽど香奈姉ちゃんは僕と一緒に居たいんだな。

「さぁ、弟くん。あの後の続き、始めよっか?」
「あ、えっと……。まずはお風呂に入ってからで──」

僕は、焦り気味にそう言っていた。
それが一番いけない選択肢なのをわかっていながら。

「それなら、私も一緒に入ろうかな。…別にいいよね?」
「ダメじゃないけど……」
「やった! さすが弟くん! 話が早くて助かるよ」

何が助かるのかわからないんだが。
僕と一緒にお風呂に入るのって、香奈姉ちゃんにとって何のメリットがあるんだろうか。
僕にとっては、香奈姉ちゃんの綺麗な全裸を見れて眼福なんだろうけど。

「いいの? 一緒に入るって事は、香奈姉ちゃんの裸を──」

そう言いかけて、香奈姉ちゃんに止められてしまう。
口元に指を添えられて。

「いいんだよ。弟くんには、私のことをしっかりと見てもらいたいから──」
「香奈姉ちゃん」

そんな事を言われてしまったら、一緒に入るしかないじゃないか。

「もしかして、お風呂に入っている最中にエッチなことをしようなんて考えてないよね?」
「それは……。全然考えてないっていうか、その……」

僕は、ふいに視線を逸らす。
それは、僕の口からはなんとも言えない。
香奈姉ちゃん次第だと思う。

「なんで私を見ないのかな? ひょっとして図星だったとか?」
「そりゃ、一緒に入ったりしたらエッチなことの一つくらい、考えたりは──」
「もうしちゃってる仲なのに?」

香奈姉ちゃんは、意味ありげな笑みを浮かべながらそう言ってきた。

「それは……。流れ的にっていうか。その……。僕も『男』だから……」
「そうだよね。一緒に入っていたら、したくなっちゃうよね。むしろ、何もしない方が不自然だし」

何もしない方が不自然、か。
そんな事を言われてしまうと、よけいに意識してしまうじゃないか。
香奈姉ちゃん的には、僕に何かしてほしいのかな。
お風呂はゆっくりと入りたいんだけど……。

「ひょっとして、私が喘ぐ姿なんかを想像しちゃった?」

香奈姉ちゃんは、耳元で囁くようにそう訊いてくる。

「っ……」

僕は、なんて言えばいいのかわからず、そのまま口をつぐんでしまう。
少なからず想像くらいはしてしまうものだ。
そんな香奈姉ちゃんを、また見てみたいと思ってしまうほどに。
──ダメだ。
そんな事を考えてしまったら、香奈姉ちゃんの顔をまともに見れない。

「そんな恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。弟くんの体は、大体把握してるから」

安心させるようにそう言ってくるけど、全然説得力がない。
普通に聞いたら、その言葉がどのくらい恥ずかしいものなのか、わかりそうなものなのに……。

「普通に恥ずかしいんだけど……」

僕は、ボソリと呟くようにそう言っていた。

「何か言った?」
「いや。別に……」

やっぱり、香奈姉ちゃんには逆らえそうにない。
香奈姉ちゃんは、僕の肩に手を添えて、そのまま浴室へと誘導していく。

「それなら、まずはお風呂を沸かさなくっちゃ!」
「そ、そうだね」

僕は、そうとしか答える事ができなかった。
香奈姉ちゃんの行動力には、尊敬してしまう。
本来なら、その行動力は僕が持ってなきゃいけないものだ。
いつも香奈姉ちゃんにリードされているのって、『男』としてどうなんだろう。
でも僕の行動原理は、自分でも驚いてしまうくらい狭い。
それは、香奈姉ちゃんも知っているはずだ。
香奈姉ちゃんの本音を聞いたことがないから、どう思っているのか聞きたいくらいなんだけど。

「ん? どうしたの?」

僕の視線に気づいた香奈姉ちゃんは、思案げにそう訊いてきた。
どうやら、まじまじと見すぎてしまったみたいだ。

「あ、いや……。なんでもないよ」
「なんでもなくないでしょ。何かあるから、私のことを見てるんでしょ? …はっきり言ってよね。そういうのは──」

何でそこで不機嫌そうになるのかわからないんだが。

「また胸が大きくなった?」

僕は、誤魔化すように適当にそんな事を言っていた。
すると香奈姉ちゃんは、胸を誇張するかのように両腕で押し上げて、見せびらかしてくる。

「触りたいのかな?」
「いや……。ちょっと気になっただけで……。深い意味はなくて──」

僕は、慌ててそう言う。
誤魔化すのも大変だな。

「そう……」

香奈姉ちゃんは、なぜかしょんぼりとなる。
一体、どうしてほしいのか。
香奈姉ちゃんの胸を揉みしだくなんて事は、絶対にあってはならないんだ。
あの時は入浴中で、場の流れでやってしまったけど、普段はあんな事は絶対に──
そんな事を思いながら、僕はお風呂の準備をし始めた。
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