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第二十話
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バレンタインデー当日。
この日の香奈姉ちゃんは、少し緊張しているのか、僕を見てわずかに頬を赤らめていた。
「お、おはよう、楓」
「おはよう、香奈姉ちゃん」
「せっかくだから、今日は途中まで一緒に学校に行こうか?」
通う学校が違うのだから待つ必要はないというのに、わざわざ制服姿で僕のことを待っていたのだ。それも玄関先で──
あきらかに何かあると思われる。
間違っても、これは断ってはいけないやつだ。
「う、うん。別にいいけど。一緒に行くのは、いつもの事じゃ──」
「今日は、違うの! 今日は、特別な日なんだから! だから一緒に行ってくれるよね?」
香奈姉ちゃんは、そう言って僕の腕にしがみついてくる。
大きめの胸が当たって、なんとも言えない感触だ。
制服を着ているからある程度小さく見えるけど、香奈姉ちゃんの場合は、それを隠しきれていないのがすぐにわかる。
バレンタインデーのせいなのかどうかわからないけど、いつになく必死だな。
「わかったから。とにかく離れてよ。胸が当たってるって──」
「あ……。ごめん……」
香奈姉ちゃんは、状況を理解したのか、すぐに離れた。
本心では、そうしてくれるのは嬉しいんだけど、やっぱり体裁も大事だ。
それに、まだ学校に行く準備もできてないし。
準備って言っても、教材等が入った鞄とお弁当。そして、人数分のバレンタインデーのプレゼントを持っていくだけなんだけど。
ちなみに、プレゼントは女の子からチョコを受け取った時にお返しとして渡すようにするのが鉄則だ。
「とりあえず、準備してくるね」
「うん」
僕は、いったん居間に戻る。
そして、そこに置いてあった鞄とお弁当を持って再び玄関へと向かう。
香奈姉ちゃんは、じっと家の玄関先で待っていた。
その姿は、綺麗に咲いた一輪の華にも見える。
香奈姉ちゃんの制服姿が、ここまで絵になるなんて……。
これは、撮影しておかないとダメな気がする。なんとなくだが。
僕は、ポケットからスマホを取り出して、香奈姉ちゃんの立ち姿を撮影した。
撮影は一回で成功した。
これほど綺麗な香奈姉ちゃんの立ち姿は、何回撮れるかわからない。
それほどまでに、見惚れてしまいそうな立ち姿だ。
香奈姉ちゃんは、シャッター音に気づいたのかムッとした表情で僕を睨んでくる。
「今、スマホで撮ったでしょ?」
「うん」
「なんで撮ったの?」
「な、なんとなく……」
「なんとなく? そんな理由で?」
「綺麗だったから、その……」
「っ……」
僕の言葉に、香奈姉ちゃんは赤面してしまう。
そう言った僕自身も、恥ずかしくて顔から火が噴きそうなんだけど。
香奈姉ちゃんは、撮影内容が気になったのか頬を赤らめたまま言った。
「ちょっと見せてみなさい」
「それは……。さすがに見せるわけには──」
僕は、恥ずかしさのあまり、スマホを制服のポケットの中にすばやく入れて香奈姉ちゃんの顔から視線を逸らす。
香奈姉ちゃんは納得がいかないのか、不満げな表情で僕の顔をジーッと見つめてくる。
「見せられないって……。そんなに綺麗に撮れなかった?」
「そういうわけじゃ……」
「どっちでもいいけど、写真を撮りたいのなら言ってくれればいいのに。今なら、どんな格好だってしてあげるよ」
その言葉と同時に、制服のスカートを少しだけたくし上げる動作をするのはやめてほしい。
別に、スカートの中の下着を見たいわけじゃないんだし。
でも、白の下着がチラッと見えてしまった。
ホント、安易に見せないでほしい。
「うん。ありがとう。…でも、本当に大丈夫だから。気まぐれに撮っただけだから」
僕は、苦笑いをしてそう言っていた。
これから学校に行くというのに、『今なら』だなんて言われても……。そんな時間はないだろう。
「そうなの? なんかつまんないなぁ~」
香奈姉ちゃんは、いかにも退屈だと言わんばかりにそう言っていた。
僕は、そんな香奈姉ちゃんをまともには相手にはせず、微苦笑して言う。
「そんなことよりも、はやく学校に行こうよ。こういう日でも遅刻は嫌だから──」
「そうね。それじゃ、行こっか?」
「うん」
僕は、いつもどおりに靴を履いて外に出る。
僕の返事に反応してのことなのかわからないが、玄関先で待っていた香奈姉ちゃんは、いきなり僕の手を握ってきた。
あまりにも急なことに僕は呆然となるが、香奈姉ちゃんはすぐに走り出したので、ハッとなったのもすぐのことだ。
──それにしても。
奈緒さんたちは、一緒じゃないのかな。
いつもなら登下校の時間は一緒になることが多いのに。
そんな質問もあえて声には出さず、喉の奥に仕舞い込んだ。
この日の香奈姉ちゃんは、少し緊張しているのか、僕を見てわずかに頬を赤らめていた。
「お、おはよう、楓」
「おはよう、香奈姉ちゃん」
「せっかくだから、今日は途中まで一緒に学校に行こうか?」
通う学校が違うのだから待つ必要はないというのに、わざわざ制服姿で僕のことを待っていたのだ。それも玄関先で──
あきらかに何かあると思われる。
間違っても、これは断ってはいけないやつだ。
「う、うん。別にいいけど。一緒に行くのは、いつもの事じゃ──」
「今日は、違うの! 今日は、特別な日なんだから! だから一緒に行ってくれるよね?」
香奈姉ちゃんは、そう言って僕の腕にしがみついてくる。
大きめの胸が当たって、なんとも言えない感触だ。
制服を着ているからある程度小さく見えるけど、香奈姉ちゃんの場合は、それを隠しきれていないのがすぐにわかる。
バレンタインデーのせいなのかどうかわからないけど、いつになく必死だな。
「わかったから。とにかく離れてよ。胸が当たってるって──」
「あ……。ごめん……」
香奈姉ちゃんは、状況を理解したのか、すぐに離れた。
本心では、そうしてくれるのは嬉しいんだけど、やっぱり体裁も大事だ。
それに、まだ学校に行く準備もできてないし。
準備って言っても、教材等が入った鞄とお弁当。そして、人数分のバレンタインデーのプレゼントを持っていくだけなんだけど。
ちなみに、プレゼントは女の子からチョコを受け取った時にお返しとして渡すようにするのが鉄則だ。
「とりあえず、準備してくるね」
「うん」
僕は、いったん居間に戻る。
そして、そこに置いてあった鞄とお弁当を持って再び玄関へと向かう。
香奈姉ちゃんは、じっと家の玄関先で待っていた。
その姿は、綺麗に咲いた一輪の華にも見える。
香奈姉ちゃんの制服姿が、ここまで絵になるなんて……。
これは、撮影しておかないとダメな気がする。なんとなくだが。
僕は、ポケットからスマホを取り出して、香奈姉ちゃんの立ち姿を撮影した。
撮影は一回で成功した。
これほど綺麗な香奈姉ちゃんの立ち姿は、何回撮れるかわからない。
それほどまでに、見惚れてしまいそうな立ち姿だ。
香奈姉ちゃんは、シャッター音に気づいたのかムッとした表情で僕を睨んでくる。
「今、スマホで撮ったでしょ?」
「うん」
「なんで撮ったの?」
「な、なんとなく……」
「なんとなく? そんな理由で?」
「綺麗だったから、その……」
「っ……」
僕の言葉に、香奈姉ちゃんは赤面してしまう。
そう言った僕自身も、恥ずかしくて顔から火が噴きそうなんだけど。
香奈姉ちゃんは、撮影内容が気になったのか頬を赤らめたまま言った。
「ちょっと見せてみなさい」
「それは……。さすがに見せるわけには──」
僕は、恥ずかしさのあまり、スマホを制服のポケットの中にすばやく入れて香奈姉ちゃんの顔から視線を逸らす。
香奈姉ちゃんは納得がいかないのか、不満げな表情で僕の顔をジーッと見つめてくる。
「見せられないって……。そんなに綺麗に撮れなかった?」
「そういうわけじゃ……」
「どっちでもいいけど、写真を撮りたいのなら言ってくれればいいのに。今なら、どんな格好だってしてあげるよ」
その言葉と同時に、制服のスカートを少しだけたくし上げる動作をするのはやめてほしい。
別に、スカートの中の下着を見たいわけじゃないんだし。
でも、白の下着がチラッと見えてしまった。
ホント、安易に見せないでほしい。
「うん。ありがとう。…でも、本当に大丈夫だから。気まぐれに撮っただけだから」
僕は、苦笑いをしてそう言っていた。
これから学校に行くというのに、『今なら』だなんて言われても……。そんな時間はないだろう。
「そうなの? なんかつまんないなぁ~」
香奈姉ちゃんは、いかにも退屈だと言わんばかりにそう言っていた。
僕は、そんな香奈姉ちゃんをまともには相手にはせず、微苦笑して言う。
「そんなことよりも、はやく学校に行こうよ。こういう日でも遅刻は嫌だから──」
「そうね。それじゃ、行こっか?」
「うん」
僕は、いつもどおりに靴を履いて外に出る。
僕の返事に反応してのことなのかわからないが、玄関先で待っていた香奈姉ちゃんは、いきなり僕の手を握ってきた。
あまりにも急なことに僕は呆然となるが、香奈姉ちゃんはすぐに走り出したので、ハッとなったのもすぐのことだ。
──それにしても。
奈緒さんたちは、一緒じゃないのかな。
いつもなら登下校の時間は一緒になることが多いのに。
そんな質問もあえて声には出さず、喉の奥に仕舞い込んだ。
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