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第十七話
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今日も、香奈姉ちゃんは僕の部屋に泊まっていくつもりだろう。
わざわざ部屋着を用意しているくらいだから、訊くまでもないか。
冬に着る厚手の部屋着も、充分すぎるほどに似合っている。
ただ、下に履いてるショートパンツはどうにかならなかったんだろうか。
まぁ、エアコンは入っているので寒くはないけど。
僕が黙って床に座っていると、香奈姉ちゃんは僕の傍に寄り添ってくる。
「最近、寒くなったね」
「そうだね。冬だから、多少の寒さは我慢してるんだけど」
「私なんか、我慢しようにも制服のスカートが短いから、冷たい風が脚に直撃するんだよ。そろそろストッキングとか用意するべきなのかなって思っちゃうくらいなんだから」
「そうなんだ。女の子は大変なんだね」
まだ雪が降っていないので、どこまで寒くなるのかわからない。
寒いのなら素直にストッキングを履けばいいのに……。
そういえば、奈緒さんも香奈姉ちゃんと同じことを言っていたような。
「やっぱり、ストッキングは履いた方がいいのかな? 楓は、どう思う?」
「どうして僕に聞くの?」
「ん~、なんとなくかな。楓なら、私の悩みにも答えてくれるかなって思って」
そんなこと聞かれてもな。
なんて答えればいいのかわからない。
それで寒さが多少和らぐのなら、履いた方がいいだろうし。
「僕に聞かれても、わからないな。ストッキングとかって、好みの問題もあるって誰かが言ってたような気が──」
「私は、個人的にストッキングとかは嫌なんだよね」
「そうなんだ」
ストッキングは嫌だから履かないっていうのも、ありだとは思う。
決めるのは、香奈姉ちゃん自身だ。
「でも脚が冷えるから、『やっぱり履かないとダメかも……』って考えちゃうんだよね……」
「そこは香奈姉ちゃんの判断に任せるけど……」
「楓は、考えてくれないの?」
「え……。それは、その……」
香奈姉ちゃんが決めることに、僕がとやかく言う資格はないと思うんだけど。
判断を僕に委ねるっていうのは、さすがに『ない』と思う。
「楓が望むなら履いてあげてもいいよ。でも、膝枕とかできなくなっちゃうしな……。悩んでしまうなぁ」
「問題はそこなの?」
膝枕ができなくなるって……。今、香奈姉ちゃんの本音が聞こえてきたんだけど。
それをするつもりで素足でいたってことなのか。
僕の視線は、本能的に香奈姉ちゃんの綺麗な両脚にいってしまう。
すると香奈姉ちゃんは、僕の頭を抱き寄せて、そのまま膝の上に乗せた。
「私の膝枕を楽しみにしてるくせに、そんなこと言っちゃうんだ。楓って、意外と薄情なんだね」
「別に楽しみには──」
「楽しみにしてないの?」
香奈姉ちゃんは、思案げな表情でそう訊いてくる。
まさか、そんな風に思われていたなんて……。
別に香奈姉ちゃんの膝枕を、楽しみにしていたわけではないんだけど。
もしかして、奈緒さんも香奈姉ちゃんと同じ思いで膝枕とかをしてきているのか。
そうだとしたら、奈緒さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「少しは…だけど。楽しみにはしてます」
僕は、香奈姉ちゃんの脚にそっと手を触れてそう答えた。
ここで否定したら、香奈姉ちゃんのことだから確実に怒るだろう。
香奈姉ちゃんは、僕のその言葉が嬉しかったのか脚を触れている手をギュッと掴んでくる。
「楓ならそう言うと思ってたよ。やっぱりストッキングを履くのはやめておくね」
「香奈姉ちゃんが決めたことなら、反対はしないよ」
風邪さえ引かなければ、問題ないし。
女の子って、お洒落や好きな男の人のためには苦労は惜しまないって本当なんだな。
香奈姉ちゃんや奈緒さんには、絶対に無理はさせないでおこう。
翌日。
僕が目を覚ますと、香奈姉ちゃんは当然のようにそこにいて、自分の部屋にいるのと変わらぬ感じで着替えをしていた。
なんだか僕の部屋に香奈姉ちゃんがいるのが日常的になってきてるけど、気のせいかな。
それに香奈姉ちゃんが女子校の制服を一つ一つ着用していくのを見てると、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
僕がいることなんてまるで意識していないかのように着替えをしていくので、ここが本当に僕の部屋なのか疑ってしまう程だ。
「あ、楓。見てたんだ」
「今、起きたところだからね」
僕は、ゆっくりとベッドから起き上がり、そう言っていた。
香奈姉ちゃんにとっては、僕が起きていようが寝ていようが、どっちでもいいことなんだろう。
「それなら話が早い。楓は、どっちの下着がいいと思う? こっちかな? それともこっちの方がいいかな?」
香奈姉ちゃんは、笑顔で二種類の下着を僕に見せてくる。
そんなこと言われても……。
下着くらい、自分で選ぶことはできないのだろうか。
僕のそうした本心を言おうものなら、不機嫌になることは間違いないだろうし。
「僕に聞かれても……。参考になるかわからないよ」
「今日、着用していくわけじゃないから、気にしなくてもいいよ。あくまでも、今後の参考に…ね」
そこまで言うなら、答えても大丈夫かな。
わざわざここで穿くわけじゃないのなら、問題はない。
「そっちの派手じゃない方の下着…かな」
「なるほどね。楓は、この派手な下着より、こっちの可愛い下着の方が好みなのか」
香奈姉ちゃんは、ピンク色の可愛い下着を見て、悪戯っぽく笑みを浮かべる。
かなりテキトーに選んだだけなんだが、香奈姉ちゃんにとっては、それが重要だったようだ。
「それじゃ、明日はこっちの下着にしようかな。楓のためにも──」
「いやいや。下着は僕のためじゃなくて、自分のために穿こうよ」
「それだと、つまらないじゃない。楓が、私の穿いてる下着を想像するからいいんだよ」
香奈姉ちゃんは、そう言って履いたばかりのスカートの裾を指で掴み、少しだけ引き上げる。
見えるか見えないかのギリギリまで引き上げて、僕のことを挑発していた。
そんなものを見て、喜ぶような男じゃないんだけど、それでも視線を釘付けにするには充分だ。
それでも僕は、そんなところを見続ける事はないけど。
僕は、ハンガーに掛けてある自分の制服に手を伸ばす。
「それは、どこの変態かな? 僕は、そんなこと想像したりはしないよ」
「そっか。それなら、奈緒ちゃんが穿いてる下着なら想像するんだね。なんか意外だな」
「なんで奈緒さんが出てくるの?」
「だって楓ったら、奈緒ちゃんの下着だけで三枚くらいは渡されてるじゃない。いくら仲が良いからって、ちょっと受け取りすぎだよ」
「そんなに受け取ってないよ」
「ホントかなぁ? 私に隠してるだけじゃないの?」
香奈姉ちゃんは、少しだけムッとした表情で僕を見てくる。
香奈姉ちゃんにだけは知られたくない。
奈緒さんから渡された下着の枚数は──。
僕は、制服に着替えながら言う。
「そんなことないよ。香奈姉ちゃんに隠したって、何の得にもならないから」
「それじゃ、何枚渡されてるの?」
香奈姉ちゃんは、神妙な面持ちで訊いてくる。
そんな顔をして訊いてきても、答えられるわけがない。
──いや。
絶対に言わないぞ。
「そんな質問されても……。答えられるわけないじゃないか」
僕は、赤面してそう答えていた。
香奈姉ちゃんを見ていたら、つい奈緒さんの下着姿を想像してしまったのだ。
そんなものを想像しちゃうなんて……。
奈緒さんに怒られちゃう。
それを見た香奈姉ちゃんは、余計に興味が出てきたのか、さらに強請るように訊いてくる。
「え~。どうしてもダメ?」
「ダメなものはダメだよ」
「そっか。それならしょうがないね……」
香奈姉ちゃんは、残念そうな表情を浮かべてそう言った。
──そうそう。
僕の口からは、何も答えないよ。
そう思って僕が黙っていると、香奈姉ちゃんは何を思ったのか突然笑みを浮かべる。そして──
「しょうがないから、奈緒ちゃんから聞こうかな。その方が手っ取り早いよね」
「え……」
名案だと言わんばかりにそう言ってしまう香奈姉ちゃんに、僕は呆然となってしまう。
奈緒さんから聞くって……。
まさか奈緒さんが、そんな大事なことを香奈姉ちゃんに言うわけがないだろうし。でも……。どうなんだろう。
考えていてもしょうがない。
とりあえず、朝ごはんの支度をしなきゃ。
着替えを終えると僕は、机の上に置いてあった鞄を手に取り、自分の部屋を後にした。
「あ、楓。待ってよ!」
香奈姉ちゃんも鞄を手に持って、僕の後をついてくる。
ちなみに、着替えは僕よりも先にしていたから、僕が着替えを終えた時には、もう終わっていたみたい。
僕は、ある事が気になってチラッと香奈姉ちゃんの脚を見やる。
やっぱりストッキングは、履かなかったみたいだ。
こんな季節だし、風邪とか引かなければいいんだけど……。
わざわざ部屋着を用意しているくらいだから、訊くまでもないか。
冬に着る厚手の部屋着も、充分すぎるほどに似合っている。
ただ、下に履いてるショートパンツはどうにかならなかったんだろうか。
まぁ、エアコンは入っているので寒くはないけど。
僕が黙って床に座っていると、香奈姉ちゃんは僕の傍に寄り添ってくる。
「最近、寒くなったね」
「そうだね。冬だから、多少の寒さは我慢してるんだけど」
「私なんか、我慢しようにも制服のスカートが短いから、冷たい風が脚に直撃するんだよ。そろそろストッキングとか用意するべきなのかなって思っちゃうくらいなんだから」
「そうなんだ。女の子は大変なんだね」
まだ雪が降っていないので、どこまで寒くなるのかわからない。
寒いのなら素直にストッキングを履けばいいのに……。
そういえば、奈緒さんも香奈姉ちゃんと同じことを言っていたような。
「やっぱり、ストッキングは履いた方がいいのかな? 楓は、どう思う?」
「どうして僕に聞くの?」
「ん~、なんとなくかな。楓なら、私の悩みにも答えてくれるかなって思って」
そんなこと聞かれてもな。
なんて答えればいいのかわからない。
それで寒さが多少和らぐのなら、履いた方がいいだろうし。
「僕に聞かれても、わからないな。ストッキングとかって、好みの問題もあるって誰かが言ってたような気が──」
「私は、個人的にストッキングとかは嫌なんだよね」
「そうなんだ」
ストッキングは嫌だから履かないっていうのも、ありだとは思う。
決めるのは、香奈姉ちゃん自身だ。
「でも脚が冷えるから、『やっぱり履かないとダメかも……』って考えちゃうんだよね……」
「そこは香奈姉ちゃんの判断に任せるけど……」
「楓は、考えてくれないの?」
「え……。それは、その……」
香奈姉ちゃんが決めることに、僕がとやかく言う資格はないと思うんだけど。
判断を僕に委ねるっていうのは、さすがに『ない』と思う。
「楓が望むなら履いてあげてもいいよ。でも、膝枕とかできなくなっちゃうしな……。悩んでしまうなぁ」
「問題はそこなの?」
膝枕ができなくなるって……。今、香奈姉ちゃんの本音が聞こえてきたんだけど。
それをするつもりで素足でいたってことなのか。
僕の視線は、本能的に香奈姉ちゃんの綺麗な両脚にいってしまう。
すると香奈姉ちゃんは、僕の頭を抱き寄せて、そのまま膝の上に乗せた。
「私の膝枕を楽しみにしてるくせに、そんなこと言っちゃうんだ。楓って、意外と薄情なんだね」
「別に楽しみには──」
「楽しみにしてないの?」
香奈姉ちゃんは、思案げな表情でそう訊いてくる。
まさか、そんな風に思われていたなんて……。
別に香奈姉ちゃんの膝枕を、楽しみにしていたわけではないんだけど。
もしかして、奈緒さんも香奈姉ちゃんと同じ思いで膝枕とかをしてきているのか。
そうだとしたら、奈緒さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「少しは…だけど。楽しみにはしてます」
僕は、香奈姉ちゃんの脚にそっと手を触れてそう答えた。
ここで否定したら、香奈姉ちゃんのことだから確実に怒るだろう。
香奈姉ちゃんは、僕のその言葉が嬉しかったのか脚を触れている手をギュッと掴んでくる。
「楓ならそう言うと思ってたよ。やっぱりストッキングを履くのはやめておくね」
「香奈姉ちゃんが決めたことなら、反対はしないよ」
風邪さえ引かなければ、問題ないし。
女の子って、お洒落や好きな男の人のためには苦労は惜しまないって本当なんだな。
香奈姉ちゃんや奈緒さんには、絶対に無理はさせないでおこう。
翌日。
僕が目を覚ますと、香奈姉ちゃんは当然のようにそこにいて、自分の部屋にいるのと変わらぬ感じで着替えをしていた。
なんだか僕の部屋に香奈姉ちゃんがいるのが日常的になってきてるけど、気のせいかな。
それに香奈姉ちゃんが女子校の制服を一つ一つ着用していくのを見てると、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
僕がいることなんてまるで意識していないかのように着替えをしていくので、ここが本当に僕の部屋なのか疑ってしまう程だ。
「あ、楓。見てたんだ」
「今、起きたところだからね」
僕は、ゆっくりとベッドから起き上がり、そう言っていた。
香奈姉ちゃんにとっては、僕が起きていようが寝ていようが、どっちでもいいことなんだろう。
「それなら話が早い。楓は、どっちの下着がいいと思う? こっちかな? それともこっちの方がいいかな?」
香奈姉ちゃんは、笑顔で二種類の下着を僕に見せてくる。
そんなこと言われても……。
下着くらい、自分で選ぶことはできないのだろうか。
僕のそうした本心を言おうものなら、不機嫌になることは間違いないだろうし。
「僕に聞かれても……。参考になるかわからないよ」
「今日、着用していくわけじゃないから、気にしなくてもいいよ。あくまでも、今後の参考に…ね」
そこまで言うなら、答えても大丈夫かな。
わざわざここで穿くわけじゃないのなら、問題はない。
「そっちの派手じゃない方の下着…かな」
「なるほどね。楓は、この派手な下着より、こっちの可愛い下着の方が好みなのか」
香奈姉ちゃんは、ピンク色の可愛い下着を見て、悪戯っぽく笑みを浮かべる。
かなりテキトーに選んだだけなんだが、香奈姉ちゃんにとっては、それが重要だったようだ。
「それじゃ、明日はこっちの下着にしようかな。楓のためにも──」
「いやいや。下着は僕のためじゃなくて、自分のために穿こうよ」
「それだと、つまらないじゃない。楓が、私の穿いてる下着を想像するからいいんだよ」
香奈姉ちゃんは、そう言って履いたばかりのスカートの裾を指で掴み、少しだけ引き上げる。
見えるか見えないかのギリギリまで引き上げて、僕のことを挑発していた。
そんなものを見て、喜ぶような男じゃないんだけど、それでも視線を釘付けにするには充分だ。
それでも僕は、そんなところを見続ける事はないけど。
僕は、ハンガーに掛けてある自分の制服に手を伸ばす。
「それは、どこの変態かな? 僕は、そんなこと想像したりはしないよ」
「そっか。それなら、奈緒ちゃんが穿いてる下着なら想像するんだね。なんか意外だな」
「なんで奈緒さんが出てくるの?」
「だって楓ったら、奈緒ちゃんの下着だけで三枚くらいは渡されてるじゃない。いくら仲が良いからって、ちょっと受け取りすぎだよ」
「そんなに受け取ってないよ」
「ホントかなぁ? 私に隠してるだけじゃないの?」
香奈姉ちゃんは、少しだけムッとした表情で僕を見てくる。
香奈姉ちゃんにだけは知られたくない。
奈緒さんから渡された下着の枚数は──。
僕は、制服に着替えながら言う。
「そんなことないよ。香奈姉ちゃんに隠したって、何の得にもならないから」
「それじゃ、何枚渡されてるの?」
香奈姉ちゃんは、神妙な面持ちで訊いてくる。
そんな顔をして訊いてきても、答えられるわけがない。
──いや。
絶対に言わないぞ。
「そんな質問されても……。答えられるわけないじゃないか」
僕は、赤面してそう答えていた。
香奈姉ちゃんを見ていたら、つい奈緒さんの下着姿を想像してしまったのだ。
そんなものを想像しちゃうなんて……。
奈緒さんに怒られちゃう。
それを見た香奈姉ちゃんは、余計に興味が出てきたのか、さらに強請るように訊いてくる。
「え~。どうしてもダメ?」
「ダメなものはダメだよ」
「そっか。それならしょうがないね……」
香奈姉ちゃんは、残念そうな表情を浮かべてそう言った。
──そうそう。
僕の口からは、何も答えないよ。
そう思って僕が黙っていると、香奈姉ちゃんは何を思ったのか突然笑みを浮かべる。そして──
「しょうがないから、奈緒ちゃんから聞こうかな。その方が手っ取り早いよね」
「え……」
名案だと言わんばかりにそう言ってしまう香奈姉ちゃんに、僕は呆然となってしまう。
奈緒さんから聞くって……。
まさか奈緒さんが、そんな大事なことを香奈姉ちゃんに言うわけがないだろうし。でも……。どうなんだろう。
考えていてもしょうがない。
とりあえず、朝ごはんの支度をしなきゃ。
着替えを終えると僕は、机の上に置いてあった鞄を手に取り、自分の部屋を後にした。
「あ、楓。待ってよ!」
香奈姉ちゃんも鞄を手に持って、僕の後をついてくる。
ちなみに、着替えは僕よりも先にしていたから、僕が着替えを終えた時には、もう終わっていたみたい。
僕は、ある事が気になってチラッと香奈姉ちゃんの脚を見やる。
やっぱりストッキングは、履かなかったみたいだ。
こんな季節だし、風邪とか引かなければいいんだけど……。
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