上 下
9 / 40

8

しおりを挟む
「快斗調子どう?」

いつの間にか朝日が登り、美兎は、快斗の様子を見に来た。


「ん…大丈夫。」

目を擦る快斗に優しく微笑みながら、額に手をやった。


「熱は…ないみたいだね。学校行く?」

「行きたい!」

「わかった!薬忘れずに飲もうね。」

「はーい。」

「美兎。快斗の調子は?」

「あっ!おはよう直人兄!」

「あ、おはよう。学校行くのか?」

「行く!絶対いく!」

「はいはい。じゃあ制服に着替えてこい。」


直人がそう言うと、快斗は、バッとベッドから出て、ひょこひょこと制服を着に行った。


「直兄。本調子じゃなさそうだよね。」

「まあ、行く気があるのはいいことだからな。」

2人して今日のことを思いため息をついた。


「ご飯!ご飯!」

「はいはい。ほら快斗座って。」

「いただきまーす。」

サラダを口に入れようとした時。


「久しぶりね。元気にしていたかしら?」

「母さん?!」

「おはよう直人。珍しいわね。大きな声を出して。ダメよ。」

「いやいや直兄の反応はあってるでしょう。快斗を見てよ。びっくりして固まっているから。」

「あら。」

母は、あまり気にする様子を見せず、口を開いた。

「今日は、学校休みよ。」

「「は?」」「え?」

「怖いわよ。今からアイドルの仕事をしてもらうのよ!」

「…。」

「どういうこと?」

「アイドルってそう簡単になれるものじゃないでしょう?」

「あら?言ってなかったかしら?この前、アイドルの卵のオーデイションがあったのよ!それに私が応募していたの。それで合格したよ。ほら、写真撮ったり、ダンスの動画撮ったり、自己紹介動画を撮ってたりしてたでしょ。それで、お偉いさんに目が止まったとか何とかで。」


「えっ?普通何回もの審査に合格しないといけないのに?」

「ファッションショーとかに出ていたでしょ?それでね。さすが私の子だわ!」

「ついていけない。」

「「うんうん。」」

「何はともあれ行くわよ!」

無理やり。いや、逆らうのを辞めた。

こういう人だ昔から何を言っても止められない。

遠くを見つめた目で、車乗り、どこかへ出発した。
しおりを挟む

処理中です...