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キスは好きな人と
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「……ぅ……あ」
小さな声で唸ってから、パチリとニーナの目が開いた。
カーテンが開け放たれた窓からは日の光が差し込んでいる。久々の日光の眩しさに目を細めた。
(多分、けっこう寝てたな……)
ニーナは自分の腕に管がついておらず、手足の包帯の数が減っていることに気がついた。体は動かしにくいが、痛みがマシになっている。
(治癒魔法のお陰かな?)
あの管から流れる液体の効果なのかは分からないが、胸の傷はかさぶたになっており、くすぶるような熱もなくなっている。
(良かった。これでカインにあの親子のことを聞きに行ける!)
ニーナは起き上がろうとしてはっとした。
(どんな顔してカインに会えば良いんだ?)
気を失う前、カインに告白をした。ニーナはカインへの気持ちを今ははっきりと自覚している。
(避難している間、ずっとカインのことを考えてたし……オレがあのまま魔獣に襲われて……カインに会えなくなるのが、怖くて怖くて仕方なくて……だってカインが好き、大好きだから、側にいたくて……側にいて欲しくて……うぅ~)
ニーナは顔が熱くなって自分の手で顔を覆った。
(オレはなんて馬鹿なんだ! 死にかけないと自分の気持ち一つ認められないなんて……またカインを傷つける所だった)
カインはニーナのことを大事に想っており、ニーナにも痛いほどその心は伝わっていた。それなのにニーナは大怪我をして、カインの腕の中で死にかけてやっと気持ちを認めることが出来た。
(馬鹿馬鹿……ほんっとうに、馬鹿なんだよ。オレは……)
これが恋心という物かは相変わらずニーナには分からない。なぜならニーナはそういった気持ちを胸の奥に閉じ込め、無い物としてずっと遠ざけていたからだ。だが――
(大事にしても、いつか無くしちゃうのが怖くて……でも本当は、誰かを好きになって慈しみあったり……愛してるって……大好きだって言いたかった)
カインが側にいてくれると、ニーナはまたニナルヤ・ジオとして過去と向き合って生きることが出来ると感じていた。
(だから、カインがオレと一緒に生きてくれたら嬉しい。オレもカインの側にいたいし……それに、何て言うか……カインの側にいるのはオレじゃなきゃヤダ)
ただ一言「大好き」と素直に伝えてから、閉じ込めていた胸の奥の鍵が開いていくようだった。
(そりゃ……恋心なんてオレには分かんないよな。だって恋なんてしたことなかったんだから!)
ニーナがカインに抱いた感情は、どうやら「恋心」という以前に「初恋」という物らしかった。
(は、初恋……オレが、こんな……でも、これが……)
人生で初めての恋を自覚したニーナは、あまりの甘ったるさに顔を覆ったまましばらく身悶えていた。
「こちら、アルノルト君の知り合いなんですよね」
「……はい」
呻きながら身悶えていると、扉の外からカインと誰か知らない男の声が聞こえたので、ニーナは慌てて目を瞑った。
(つい、目を瞑ってしまった。だってどんな顔すれば良いか分かんないし……)
扉が開き、ベッドの側まで二人の足音が近づいて来た。
「先生の治療術のお陰で彼も回復しています。本当に……本当にありがとうございます」
カインの声色は普段通りだが、どこか寂しげだ。ニーナは胸がギュッと切なくなった。カインに先生と呼ばれた男は「出来ることをしたまでですよ」と軽やかに返した。
「まだ意識が戻っていないので、君も心配でしょう」
「ええ……心配です。先生、実はこの青年は……国境沿いの町で出会って以来、俺がずっと口説いていた人なんです」
「そ、そうですか。あのアルノルト君が……いや、失礼……それなら尚の事心配ですねえ」
男は狼狽えたような声を出したが、すぐに元通りの声色になって咳払いをした。
(な、何を言ってるんだよっ!? 突然そんなこと言われたら反応に困るだろ!)
ニーナは目を瞑っているのに耐えられなくなり飛び起きた。突然の動きに体はギシギシとして上手く動かない。傷口もかさぶたになったとはいえ、鈍い痛みが体に響く。
(う……体が重い……いや、それよりカインだ。一言言ってやらないと)
「ニーナ……?」
カインは起き上がったニーナを見て泣きそうな顔をした後に、ベッド脇の床に膝をついてニーナの手を握りしめた。
「ニーナ……ニーナ……!」
カインと話していたのはキリッとした目つきの壮年の男だ。プレートメイルは着けていないがカインと似たような黒装束を纏っている。男はうんうんと頷き、何も言わずに部屋を出て行った。
「カ……イン……」
久しぶりに声を出したせいか上手く口が回らない。カインに言いたいことは沢山あったが、何日かぶりに感じる手の温かさにニーナは涙ぐんでしまった。
小さな声で唸ってから、パチリとニーナの目が開いた。
カーテンが開け放たれた窓からは日の光が差し込んでいる。久々の日光の眩しさに目を細めた。
(多分、けっこう寝てたな……)
ニーナは自分の腕に管がついておらず、手足の包帯の数が減っていることに気がついた。体は動かしにくいが、痛みがマシになっている。
(治癒魔法のお陰かな?)
あの管から流れる液体の効果なのかは分からないが、胸の傷はかさぶたになっており、くすぶるような熱もなくなっている。
(良かった。これでカインにあの親子のことを聞きに行ける!)
ニーナは起き上がろうとしてはっとした。
(どんな顔してカインに会えば良いんだ?)
気を失う前、カインに告白をした。ニーナはカインへの気持ちを今ははっきりと自覚している。
(避難している間、ずっとカインのことを考えてたし……オレがあのまま魔獣に襲われて……カインに会えなくなるのが、怖くて怖くて仕方なくて……だってカインが好き、大好きだから、側にいたくて……側にいて欲しくて……うぅ~)
ニーナは顔が熱くなって自分の手で顔を覆った。
(オレはなんて馬鹿なんだ! 死にかけないと自分の気持ち一つ認められないなんて……またカインを傷つける所だった)
カインはニーナのことを大事に想っており、ニーナにも痛いほどその心は伝わっていた。それなのにニーナは大怪我をして、カインの腕の中で死にかけてやっと気持ちを認めることが出来た。
(馬鹿馬鹿……ほんっとうに、馬鹿なんだよ。オレは……)
これが恋心という物かは相変わらずニーナには分からない。なぜならニーナはそういった気持ちを胸の奥に閉じ込め、無い物としてずっと遠ざけていたからだ。だが――
(大事にしても、いつか無くしちゃうのが怖くて……でも本当は、誰かを好きになって慈しみあったり……愛してるって……大好きだって言いたかった)
カインが側にいてくれると、ニーナはまたニナルヤ・ジオとして過去と向き合って生きることが出来ると感じていた。
(だから、カインがオレと一緒に生きてくれたら嬉しい。オレもカインの側にいたいし……それに、何て言うか……カインの側にいるのはオレじゃなきゃヤダ)
ただ一言「大好き」と素直に伝えてから、閉じ込めていた胸の奥の鍵が開いていくようだった。
(そりゃ……恋心なんてオレには分かんないよな。だって恋なんてしたことなかったんだから!)
ニーナがカインに抱いた感情は、どうやら「恋心」という以前に「初恋」という物らしかった。
(は、初恋……オレが、こんな……でも、これが……)
人生で初めての恋を自覚したニーナは、あまりの甘ったるさに顔を覆ったまましばらく身悶えていた。
「こちら、アルノルト君の知り合いなんですよね」
「……はい」
呻きながら身悶えていると、扉の外からカインと誰か知らない男の声が聞こえたので、ニーナは慌てて目を瞑った。
(つい、目を瞑ってしまった。だってどんな顔すれば良いか分かんないし……)
扉が開き、ベッドの側まで二人の足音が近づいて来た。
「先生の治療術のお陰で彼も回復しています。本当に……本当にありがとうございます」
カインの声色は普段通りだが、どこか寂しげだ。ニーナは胸がギュッと切なくなった。カインに先生と呼ばれた男は「出来ることをしたまでですよ」と軽やかに返した。
「まだ意識が戻っていないので、君も心配でしょう」
「ええ……心配です。先生、実はこの青年は……国境沿いの町で出会って以来、俺がずっと口説いていた人なんです」
「そ、そうですか。あのアルノルト君が……いや、失礼……それなら尚の事心配ですねえ」
男は狼狽えたような声を出したが、すぐに元通りの声色になって咳払いをした。
(な、何を言ってるんだよっ!? 突然そんなこと言われたら反応に困るだろ!)
ニーナは目を瞑っているのに耐えられなくなり飛び起きた。突然の動きに体はギシギシとして上手く動かない。傷口もかさぶたになったとはいえ、鈍い痛みが体に響く。
(う……体が重い……いや、それよりカインだ。一言言ってやらないと)
「ニーナ……?」
カインは起き上がったニーナを見て泣きそうな顔をした後に、ベッド脇の床に膝をついてニーナの手を握りしめた。
「ニーナ……ニーナ……!」
カインと話していたのはキリッとした目つきの壮年の男だ。プレートメイルは着けていないがカインと似たような黒装束を纏っている。男はうんうんと頷き、何も言わずに部屋を出て行った。
「カ……イン……」
久しぶりに声を出したせいか上手く口が回らない。カインに言いたいことは沢山あったが、何日かぶりに感じる手の温かさにニーナは涙ぐんでしまった。
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