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三人目

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「こちらはエリザ・ノイマット。見ての通り青髪青眼の青系女子。こちらはライズ・メノア。見ての通り金髪赤眼のギャル系女子。以上」

 トーストの病室に顔を出した翌日。
 彼の頼みを受け入れ、ライズを仲間にすると決めた俺とエリザは、早速ギルドでの顔合わせを実施しているのだった。

「いや、以上って。ジンさん、さすがに適当過ぎませんか?」
「そうだよジンさん。もっとちゃんと紹介しれくれないと困るなっ」

 二人の年下女子に挟まれ、文句を言われる俺。
 ザ・不憫。

「それに何ですか、青系女子って。人を外見だけで系統立てないでください。こう見えても好きな色は紫なんですから」
「私全然ギャルじゃないからね。見た目は派手かもしれないけど、心はいつでも冒険者だよ」

 朝っぱらからやいのやいのと元気な奴らである。
 あー、お腹空いたなー。

「あっ、その顔はあれですね、音声をシャットアウトして脳内に逃げ込んでいる顔ですね」
「ダメだよジンさん。そういうことばっかりしてると友達なくすよ?」

 昨日の夜はガッツリ肉系だったから、あっさりしたものが食べたい気分だ。サラダをメインに、軽く魚でもつまめれば最高である。

「この状態になったジンさんはテコでも動かないですよ……ほんと、面倒くさがり屋さんなのですから」
「やっぱり変わってる人だね。頭のネジが飛んでるっていうか」
「いえいえ。彼の場合、そもそもネジ穴がないのですよ。基本からも道理からも逸脱した存在なのです」
「あー、確かにそんな感じかも……さすがエリザさん。ジンさんみたいな変人でも、長く一緒にいれば理解度が上がるんだね」
「私なんかまだまだですよ……ですが、ジンさんみたいな変人でも、よくよく観察していると見えてくるものがあるのです」
「そうだよねっ。ジンさんみたいな変人でも、理解することを諦めたらいけないよね」
「枕詞みたいに『ジンさんみたいな変人でも』と言うのはやめろ。そろそろ傷つく」

 堪らず会話に復帰した俺を見て、二人は勝ち誇ったように笑う。
 変なところで意気投合しやがって……まあ、仲が悪いよりはマシか。
 これからは一応、仲間になるんだし。

「じゃ、改めて……ライズ・メノアです。A級パーティー『紅の月』のリーダーをやっていました。不束者ですが、よろしくお願いします」
「エリザ・ノイマットです。直近ではS級パーティーの『覇王の道』に所属していました。末永くよろしくお願いします、ライズさん」
「やだなー、ライズでいいよー」
「わかりました、ライズ。では、私のこともエリザと呼んでください」
「おっけー、エリザ。これからよろしくねっ」

 向かい合ったまま握手を交わすエリザとライズ。
 幸先の良いスタートを切れそうで、当面は安心である。

「さてと……これでようやく三人のパーティーになれたことだし、大手を振ってダンジョンを攻略できるな。早速どこか潜りに行こうぜ」
「あら、いきなり仕切り出しましたね、ジンさん。さっきまでは極力会話に混ざろうとしなかったのに、現金な人です」
「まーまー、ジンさんはダンジョン馬鹿なんだもんね。いくら強くたって、単独で赤魔法陣に潜るなんて正気の沙汰じゃないもの」
「うるせーうるせー。俺は魔術を使えるから一人でも大丈夫なの」
「魔術……?」

 突然出てきた魔術という言葉に、小首を傾げるライズ。
 そう言えば、俺の生い立ちや何やらについて説明する機会がなかったな……悪魔なんて突拍子のない話をして、果たしてライズは信じてくれるだろうか。

「もしかして、ジンさんのとんでもない力の正体は魔術だったの? この世界のどこかに悪魔の生き残りがいて、魔術を習ったとか?」
「理解力高っ」

 推理力凄っ。
 察知力鬼っ。
 ポロっと零れた単語だけで、ほとんど全てを言い当てられてしまった……微妙に悔しい。

「いやまあ、大体当たり……実は俺、アスモデウスっていう悪魔に育てられてさ。人間の癖に魔術を使えるってわけ」
「ふーん、なるほど」
「……もっとこう、悪魔についてリアクションとかないのか? こっちとしては補足説明の手間が省けてありがたいけど」
「悪魔に生き残りがいるかもしれないって話はデリオラから聞いてたから、そんなに驚かないかな……ジンさんの実力も目の当たりにしてるしね。百聞は一見に如かず、ってやつ」

 ライズはうんうんと首を縦に頷いたが……次第にその動きが鈍くなる。

「……どうした?」
「んー……そう言えば私、ジンさんの手を取ってからの記憶が曖昧なんだよね。あの時も魔術を使ってたの?」
「ジンさんっ! まさか、ライズのことを勝手に魔武器に変えたんですか!」

 自身にされた仕打ちを思い出したのか、物凄い剣幕で怒鳴るエリザ。

「あれは不可抗力というか、切羽詰まっていて説明の時間が無くて……」
「いきなり無生物に変えられる気持ちがわからないのですか! あれ、捉えようによっては死んでますからね⁉」
「ごめんなさい……」

 ごもっともな意見だった。
 反省(n回目)。

「全くもう……次からはしっかり事前に許可を取ってくださいね。ライズもビックリしちゃいますから」
「よくわかんないけど、前もって言ってくれれば何でもいいよ。魔術ってだけで曰く付きだし、覚悟の上だしね」

 おおらかな奴だ。
 自分が小さく見えるから是非やめてほしい。

「ジンさんも反省してくれたみたいですし、仕事の話を進めましょうか。まずはお互いに使える魔法を把握して、戦闘の方向性を決めるところからですね」
「うん、そうだね。三人での戦闘ってなると、今までと戦い方を変えなきゃだし……とりあえず、頻発しそうな状況を想定してのイメージトレーニングも必須かな」
「アクシデントに備えたシミュレーションも大事です。緊急時の取り決めをしておかないと、いざという時に動けませんから」
「それなら、デリオラの指南書が参考になるよ。エリザにも独自のやり方があると思うから、お互いの負担にならないように上手く擦り合わせていこう」

 エリザとライズは真剣な面持ちで机に向かい、ああでもないこうでもないと話を続ける。
 こうやって仲間同士で意見をぶつけ合い、パーティーというのは形になっていくのだろう。

「……」

 俺の意見は?

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