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このお嬢さま、世間を知らなすぎるのではなくて?
ソフィア様に対する私のこの第一印象は、出会ってから数年たった今でも、変わっていません。
カレスティアナ王国のこの茶番の作戦会議に招かれて、自分に刺さる視線は、隣国と変わりませんでした。
いえ、それよりも纏わりつく好色な視線は不躾で気分の悪いものでした。
そんな中で、「仮婚約」破棄を望むご令嬢ソフィア様の私を見る目は、蔑みを含むものであったり、憐れみを含むものであったり、嫌悪感を隠さないものであったりと、ころころ色を変えていました。
この婚約破棄は、世間知らずのご令嬢の我儘なのかしら?
詳細を聞いて、ソフィア様に対するここにいる全員の態度を見て、そんな私の考が誤りであるとすぐに分かりました。
可哀そうに。
このご令嬢は、ただの駒。
心がある人として扱われたことすら、ないのでしょう。
それでも、このご令嬢の目は死んでいません。
興味が湧きました。
このカレスティアナ王国には、他国では考えられないほど馬鹿らしい「仮婚約」という法律があります。
珍しく人口比で女性が多いこの国は一夫多妻制で、「仮婚約」で女性をこの国に縛り付けています。
そうでなくても、男性は申請すれば誰でも簡単に出国できるのに、女性が出国することは余程のことがないと許可されません。
そして「仮婚約」で縛られ続け「婚約」できなかった、この国に有益でないとされた貴族の女性だけが、何かしらの王国の利益と引き換えに他国に嫁ぎます。
反吐が出ますわ。
ターゲットのお馬鹿第一王子ジェームズは、一言で言えば、クズ、でしたわ。
私に夢中にさせるだけではなく、情報を引き出します。
お馬鹿さんから引き出せる情報は僅かでしたけれど、お馬鹿さんの18人の「仮婚約」者については、興味深いことが分かりましたわ。
その中でも興味深かったのは、お馬鹿さんにはお馬鹿さんのお仲間がいらして、彼女たちが付けられていた貞操帯は、貞操帯という名の何の機能も持たない、ただの衣装の一部でしかなかったということ。
お馬鹿第一王子ジェームズは、自慢げに、17人の「仮婚約」者達の具合をお話ししてくださいました。
「残りはあのソフィアだけなんだよ。俺は好きなものは最後に楽しむタイプなんだ、ぐふふふっ」
側に寄らないでくださいませ。
鳥肌が立ちます。
ソフィア様は、ご自分の体が目的で付きまとわれていると思っていらっしゃいましたが、体目的という点では間違ってはいませんが、理由は少し違ったようです。
さて、では、このお馬鹿第一王子ジェームズには、自分に都合のいい夢を見ていただきましょうか。
「傾国の女」の二つ名をもつ高級娼婦というのは、仮の姿でございます。
仮の姿を演じながら、自分の運命の人を探し続ける、ただの愛を求め続ける平凡な女でございます。
娼婦という職業に偏見はございませんが、私は私の愛する方としか結ばれたくありません。
娼婦という職業は、非力な女の身で選べた、最善の道だったと思います。
私は、幻影魔法使い、エミリー。
めくるめく夢のようなひと時を、高額な金銭と情報と引き換えに、あなたに。
ソフィア様に対する私のこの第一印象は、出会ってから数年たった今でも、変わっていません。
カレスティアナ王国のこの茶番の作戦会議に招かれて、自分に刺さる視線は、隣国と変わりませんでした。
いえ、それよりも纏わりつく好色な視線は不躾で気分の悪いものでした。
そんな中で、「仮婚約」破棄を望むご令嬢ソフィア様の私を見る目は、蔑みを含むものであったり、憐れみを含むものであったり、嫌悪感を隠さないものであったりと、ころころ色を変えていました。
この婚約破棄は、世間知らずのご令嬢の我儘なのかしら?
詳細を聞いて、ソフィア様に対するここにいる全員の態度を見て、そんな私の考が誤りであるとすぐに分かりました。
可哀そうに。
このご令嬢は、ただの駒。
心がある人として扱われたことすら、ないのでしょう。
それでも、このご令嬢の目は死んでいません。
興味が湧きました。
このカレスティアナ王国には、他国では考えられないほど馬鹿らしい「仮婚約」という法律があります。
珍しく人口比で女性が多いこの国は一夫多妻制で、「仮婚約」で女性をこの国に縛り付けています。
そうでなくても、男性は申請すれば誰でも簡単に出国できるのに、女性が出国することは余程のことがないと許可されません。
そして「仮婚約」で縛られ続け「婚約」できなかった、この国に有益でないとされた貴族の女性だけが、何かしらの王国の利益と引き換えに他国に嫁ぎます。
反吐が出ますわ。
ターゲットのお馬鹿第一王子ジェームズは、一言で言えば、クズ、でしたわ。
私に夢中にさせるだけではなく、情報を引き出します。
お馬鹿さんから引き出せる情報は僅かでしたけれど、お馬鹿さんの18人の「仮婚約」者については、興味深いことが分かりましたわ。
その中でも興味深かったのは、お馬鹿さんにはお馬鹿さんのお仲間がいらして、彼女たちが付けられていた貞操帯は、貞操帯という名の何の機能も持たない、ただの衣装の一部でしかなかったということ。
お馬鹿第一王子ジェームズは、自慢げに、17人の「仮婚約」者達の具合をお話ししてくださいました。
「残りはあのソフィアだけなんだよ。俺は好きなものは最後に楽しむタイプなんだ、ぐふふふっ」
側に寄らないでくださいませ。
鳥肌が立ちます。
ソフィア様は、ご自分の体が目的で付きまとわれていると思っていらっしゃいましたが、体目的という点では間違ってはいませんが、理由は少し違ったようです。
さて、では、このお馬鹿第一王子ジェームズには、自分に都合のいい夢を見ていただきましょうか。
「傾国の女」の二つ名をもつ高級娼婦というのは、仮の姿でございます。
仮の姿を演じながら、自分の運命の人を探し続ける、ただの愛を求め続ける平凡な女でございます。
娼婦という職業に偏見はございませんが、私は私の愛する方としか結ばれたくありません。
娼婦という職業は、非力な女の身で選べた、最善の道だったと思います。
私は、幻影魔法使い、エミリー。
めくるめく夢のようなひと時を、高額な金銭と情報と引き換えに、あなたに。
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