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「これが表紙? 全然チンケじゃん」
 蓮がヘアメイクしている横を通ってぼそっと聞こえるように呟く。
 銀色の髪に紫の瞳、透きとおるような白い肌、首には蓮も知っている高級ブランドのロゴ入りのチョーカーをしている。小柄だが顔が小さく手足が長くスラッとしている。ぞっとするような美少年だ。
 蓮がスタジオ入りしてヘアメイクしている横で慣れている感じで何着も服を着てカメラマンに撮影されている。洗練されており服の着こなしも上手い。

「気にしないでね。嫉妬だから」
 蓮のヘアメイクしてくれる女性が蓮にだけ聞こえるように囁く。ヘアは邪魔にならないようお団子1つにして自分はメイクっ気のない人である。
「お肌つやつやだからテカらないようパウダーだけにしておくわね。素肌感出したいから。唇も色味のないリップで艶だけ出すわね。眉、少し整えさせてね」
 ヘアメイクさんに顔をいじってもらいながら、「嫉妬も何も、向こうの方が本職さんなんでしょ。僕は素人だから」と蓮は言う。
 ヘアメイクさんは囁く。
「RYOさんはオメガ風俗のナンバーワンキャストなのよ。美しいのは最も。でもモデルとしてブランドの顔にはなれないの。だって愛しい番のオメガにオメガ風俗の子と同じ格好させたいアルファがいると思う?」
(オメガ風俗のナンバーワン! 確かにすごい美貌)
「オメガ風俗の子に自立の機会をあげようと美樹さんがモデルとして何人か雇ってるの。でもRYOさん位、オメガ風俗で人気があると顔バレしちゃうのでカタログには顔出せないのよ。今までの表紙はAzuさんで女性だったから仕方ないと思ってたんでしょうけど、今回オメガ男性が表紙と決まって自分が負けたとショックなんでしょうね」

 蓮は3着衣装を着る予定。イメージは新婚の可愛い番でお金持ちのアルファの心をくすぐるライン。
 1着目はテレビで人気が出たエプロンスタイル。テレビで着た物よりカジュアルにコットン素材で日常的に着用できる形。蓮はフライパンを持ってポーズを取った。
 2着目は番とパーティに出たり、ディナーに行くためのフォーマルなスーツ姿。襟にレースを重ね、ラインをしなやかにし、ネクタイの柄を可愛くしてフォーマルな中に遊び心を加えたスーツ。
 3着目はパジャマ。上に大き目のフワモコのパーカーを羽織る。フードには耳が付いているあざとい仕様。蓮はパーカーを羽織っている可愛い姿で写真が撮られる。中のタンクトップはシースルーになっていて、総レースのパンツも付いている。
 番の1日というシリーズで2着目のフォーマルスーツが春夏カタログの表紙になるらしい。
 蓮はかちんこちんで他のモデルのように上手くできなかった。しかし、カメラマンは注文も付けずにぱしゃぱしゃ撮影しあっさりと終わってしまった。呆気なさすぎて驚いたがあまり期待もされていないのかと拍子抜けした。
 宝条美樹さんもやってきて「ありがとう。良かったわ。お疲れ様」と労ってくれた。
「あ、いいえ、あまり上手にポーズ取れなくてごめんなさい」
「そお? 初々しくて良かったわよ」
 美樹がカメラマンの所に行って写真を見る。蓮も見せてもらった。
 RYOの写真は目力も強く、魅力的な物が多かった。
 自分は……七五三か? という感じ。RYOに皮肉言われても仕方ない。
「いいわね。服の良さが引き立っている。これは売れそう」
 美樹はご満悦。
 カメラマンも「可愛く撮れて新鮮でした」とにこにこしてた。

 後日、送られてきたMiki Hojoのカタログを優斗と見た。表紙の自分は緊張しているように見えた。
 それを見た優斗が頭を抱える。
「何これ、可愛すぎ」
 蓮が慌てる。
「いやいや、それは優斗の贔屓目だよ。同じオメガ男性のRYOさんとか、すごかったんだよ」
 後ろのページのRYOの写真を探す。RYOの写真は顔がカットされて首から下の物が多かった。
「そうかなぁ」
 優斗はまた蓮のページに戻る。
「うわ……このパジャマ……猫耳? あざとすぎる……これ買いたい。買ったら着てくれる?」
「モデルのお礼で着用した3着はもらったよ」
「是非着てください」と何故か敬語でお願いされる。
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