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 深い眠りから目が覚めた。もう日が高いのか眩しい。
(知らない部屋)
 怜太が体を起こすと、大き目の怜太のではないTシャツ1枚でベッドの中にいることに気が付いた。昨夜を思い出す。体はさらっとしていて、シーツも清潔なものが敷かれている。色々どろどろしていたが、拓哉が綺麗にしてくれたんだろうか。ベッドから降りようとして股関節が筋肉痛になっているのに気が付いた。
「起きた?」
 拓哉がTシャツとジーンズでこちらに向かってくる。
「おはようございます」
「体、大丈夫?」
「ちょっと筋肉痛……くらいです」
「お腹すかない? パン買ってきた。持っていくからベッドで食べよう」
 拓哉がお盆にミルクとパンをのせ運んでくる。
「うちの近所のパン屋さん。焼きたてだよ」
 拓哉がジーンズを脱いで、ベッドに入ってきた。怜太の頬にキスする。
「昨日、夕ご飯食べてないから、お腹すいたでしょ」
「たくさんあるね」
「怜太君、どれ好きか分かんなくて色々買ってきた」
 怜太は喉が渇いていたので、まずミルクをゴクゴクと飲む。拓哉はクロワッサンを手に取りちぎって「はい、あーん」と怜太の口元に差し出す。怜太もつられてパクリと食べる。サクっとして噛みしめるとバターの風味が口の中で広がる。美味しい。拓哉は残ったクロワッサンを食べ「上手いなー、これ」と言っている。2人でベッドでご飯を食べる。少しお行儀悪いかもしれないがピクニックのようで怜太は楽しくなってきた。
「僕、これ食べてみる」
 デニッシュをとる。
「俺にも一口ちょうだい」
 拓哉はあーんと口を開ける。怜太は笑ってデニッシュをちぎり、拓哉の口に持って行った。ぱくっと怜太の指ごとくわえる。怜太がびっくりした顔をすると、拓哉が笑って怜太の指から口を外す。
「怜太君の指、美味しい」
 怜太は顔を赤らめる。これだと恋人みたい。恋人なのか? 付き合って下さいって言ったよね。
 拓哉はベッドから出ると怜太のスマホを持ってきた。
「さやかちゃんにメッセージ送っておいたけど、自宅、心配してると思うから電話した方がいいよ」
(外泊したんだ。初めて……だよね)
 怜太は自宅に電話した。

「怜太君ともう少し一緒にいたいけど、初外泊のようだから、ご飯食べたら送るね。下着洗濯しといたから着替える?」
 拓哉は洗濯した下着と昨日の服を持ってきたので、怜太はベッドの中で下着を履いた。拓哉はお盆を台所に持って行って、コップを洗い始めた。
「準備できました」
 怜太が居間に出てきた。拓哉はコップを洗い終え、怜太に向かう。
「俺は怜太君の恋人になったっていうことで大丈夫?」
 怜太は赤くなり頷く。
「良かった」と怜太を軽く抱き締める。
「番になりたいし、結婚もしたいんだけど」
 怜太は言葉も出ずこくこくと頷く。
「じゃ、今日おうちに送っていって、おうちの人に挨拶するね」
 拓哉はタクシーを呼び、怜太をレストランはやしに送った。
 カランカラン
「ただいま」
 怜太が入っていくと、みどりと沙雪が出てきた。
 拓哉はお辞儀して「怜太君と結婚を前提にお付き合いさせていただくことになりました」と挨拶した。
 みどりが「まあまあ……」と言いながら、拓哉と怜太の所に寄り「みんな、学校や仕事で私達しかいないの」と言う。
「東さん、お茶入れてくるから座って」
 拓哉は「また後日、みなさんのいらっしゃる時に挨拶に来ます。私も仕事があるので、これで今日は失礼します」と挨拶して出て行った。

 拓哉は仕事をしに事務所に行った。優斗には感謝のメッセージを送った。
 仕事をしながら、これからについて思いをはせる。怜太の気が変わらないうちに番になり結婚まで進めよう。早いけど子供を作ってもいい。子供がいれば自分と別れようと思わないだろう。
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