6 / 22
6
しおりを挟む
カランカラン
拓哉はいつも通りレストランはやしを訪れた。
昨日は怜太に振られたような気がしていたが、実際は告白すらしていないし、怜太には恋人はいず、フリーのままだった。気を取り直し、習慣通り夕食をとりにきた。
「昨日はご馳走様でした」
怜太が定食を運んできてお礼を言う。そして、また奥に戻っていった。
奥の方で賑やかな話し声が聞こえる。
(お客さんかな?)
金髪碧眼の美少年が奥から出てきた。拓哉を見るとペコンとお辞儀して、怜太にばいばいと手を振って出て行った。入れ替わりにさやかが「ただいま」と帰ってくる。拓哉に「こんばんは」と挨拶し、怜太に「リュカ来てたんだねー」と話しかける。
(リュカ? 聞いたことあるような……)
会計をする時に質問してみる。
「怜太君のお友達? すごい綺麗な人だね」
怜太はえっへんと自慢げに「両親を亡くしていて、うちの養子になったので僕の弟なんです。でも、伊集院美月さんと結婚したので今は別に住んでいるんですが」
「あ! あの人が噂の美月様の運命の番!」
社交界で伊集院美月の運命の番が話題になっていたことを思い出した。
「そうなんです。美男美女で2人並ぶと絵画のようなんです」
怜太がうっとりする。
「美月さんと旅行に行ってきたそうで、お土産を持ってきてくれたんです」
拓哉は会計を終え、レストランはやしを出た。さやかが拓哉の跡を追って出てきて声を掛ける。
「昨日のパフェデート、どうでした?」
「怜太君は運命の番を探しているようだよ」と答える。
さやかが「あー」とオーバーに頭を抱える。
「母はオメガで、父と運命の番なんですよね。その素晴らしさについて耳にタコができるくらい子供に語るんですよ。私や雅兄は興味持てないんですけど、怜兄は憧れちゃってるんですよね。東さんは運命の番……ていうわけではないんですよね」
「好ましい香はするんだけど、電気が流れるような感覚はないね」
「そうでしたか」
さやかは残念そうな顔をして、ぺこりとお辞儀してレストランはやしに戻っていった。
それきり林一家からは怜太と拓哉をくっつけようという動きはなくなった。怜太は特に変わらず、拓哉が行くと、お得意様という感じで親切に接客してくれたが、それ以上距離が縮まることはなかった。
拓哉はいつも通りレストランはやしを訪れた。
昨日は怜太に振られたような気がしていたが、実際は告白すらしていないし、怜太には恋人はいず、フリーのままだった。気を取り直し、習慣通り夕食をとりにきた。
「昨日はご馳走様でした」
怜太が定食を運んできてお礼を言う。そして、また奥に戻っていった。
奥の方で賑やかな話し声が聞こえる。
(お客さんかな?)
金髪碧眼の美少年が奥から出てきた。拓哉を見るとペコンとお辞儀して、怜太にばいばいと手を振って出て行った。入れ替わりにさやかが「ただいま」と帰ってくる。拓哉に「こんばんは」と挨拶し、怜太に「リュカ来てたんだねー」と話しかける。
(リュカ? 聞いたことあるような……)
会計をする時に質問してみる。
「怜太君のお友達? すごい綺麗な人だね」
怜太はえっへんと自慢げに「両親を亡くしていて、うちの養子になったので僕の弟なんです。でも、伊集院美月さんと結婚したので今は別に住んでいるんですが」
「あ! あの人が噂の美月様の運命の番!」
社交界で伊集院美月の運命の番が話題になっていたことを思い出した。
「そうなんです。美男美女で2人並ぶと絵画のようなんです」
怜太がうっとりする。
「美月さんと旅行に行ってきたそうで、お土産を持ってきてくれたんです」
拓哉は会計を終え、レストランはやしを出た。さやかが拓哉の跡を追って出てきて声を掛ける。
「昨日のパフェデート、どうでした?」
「怜太君は運命の番を探しているようだよ」と答える。
さやかが「あー」とオーバーに頭を抱える。
「母はオメガで、父と運命の番なんですよね。その素晴らしさについて耳にタコができるくらい子供に語るんですよ。私や雅兄は興味持てないんですけど、怜兄は憧れちゃってるんですよね。東さんは運命の番……ていうわけではないんですよね」
「好ましい香はするんだけど、電気が流れるような感覚はないね」
「そうでしたか」
さやかは残念そうな顔をして、ぺこりとお辞儀してレストランはやしに戻っていった。
それきり林一家からは怜太と拓哉をくっつけようという動きはなくなった。怜太は特に変わらず、拓哉が行くと、お得意様という感じで親切に接客してくれたが、それ以上距離が縮まることはなかった。
1
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
僕にとっての運命と番
COCOmi
BL
従兄弟α×従兄弟が好きなΩ←運命の番α
Ωであるまことは、小さい頃から慕っているαの従兄弟の清次郎がいる。
親戚の集まりに参加した時、まことは清次郎に行方不明の運命の番がいることを知る。清次郎の行方不明の運命の番は見つからないまま、ある日まことは自分の運命の番を見つけてしまう。しかし、それと同時に初恋の人である清次郎との結婚話="番"をもちかけられて…。
☆※マークはR18描写が入るものです。
☆運命の番とくっつかない設定がでてきます。
☆突発的に書いているため、誤字が多いことや加筆修正で更新通知がいく場合があります。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
これがおれの運命なら
やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。
※オメガバース。Ωに厳しめの世界。
※性的表現あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる