大魔道士の兄

大魔道士ルカ・ハリス

屋敷

「大丈夫か兄さん」

「大丈夫に見えるか？」

「うん」

「お前……」

　兄の腕の中で弟が真顔でうなづく。なんとも言えない表情で塁は元凶を見下ろした。

「2人で広い屋敷を探索か。冒険みたいでワクワクするな」

「俺の家だけどな」

「我が弟ながら、あらためて凄いヤツだと認識させられるわ」

「凄い……か。兄さんの方が何倍も凄いと思うけど」

「そう……なのか？」

「うん」

　そんなわけないだろといいかけるも本気でそう思っているとわかる真剣な目で見られ塁は言い淀む。瑠夏の返事は静かだが抱っこしてもらっている兄の腕を痛くない程度に掴む。
　こんな凄い弟から尊敬される。嬉しくなんだか少し恥ずかしくもあり塁は話題を変えることにした。

「しっかし広いな……迷子になりそうだ」

「大丈夫。自室から客間。食堂や拷問部屋まで全部知ってるから」

「一個変なのなかったか？」

「必要な時もあるはず」

「あ、よかった未使用なのか」

　流石にそこで死人でてたらこの屋敷に住むのは遠慮したい。
　死んでないなら問題ないかと、瑠夏のナビのもと進んでいく。

「そういや、前世の名前はなんていうんだ？」

「ルカ・ハリス」

「こっちでもルカだったのか」

「だけど俺は今の両親につけられた名前のほうがいい」

「なんでだ？同じルカなんだろ読み方」

「こっちではルカは奴隷の名前なんだよ。瑠夏は。活発で心の美しい子に育ってほしいってつけてくれたから。考えて意味までもくれた。俺の宝物の一つなんだ」

「……瑠夏。お前は絶対に幸せにするからな」

「もう幸せだよ。十分に」

　……この事は直ぐに父さんたちに知らせよう。そしてめいいっぱい甘やかしてやろう。