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5.亡霊と呪い
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「どうもベロニカの方が気味が悪いね」
デーティアは眉根を寄せる。
「だいたい、学園でも気に入らなかったんだ。イザベラは単純なおばかさんだったから、人目も気にせずベロニカを虐めていたけど、ベロニカは逃げもしなければ助けを求めもしない。その上…なんていうか無防備すぎた。まるで虐めてくださいと言わんばかりに…」
デーティアはブツブツ言う。
「教本や小物を置きっぱなしだったし、ぼんやりとイザベラの傍を歩くし、噴水の事件だってあんなところに立っていたらイザベラが何をするかわかりそうなもんじゃないか」
デーティアは記憶を辿る。
「おばあさま!じゃあ、虐められていたベロニカが悪いとおっしゃるの?」
フンとデーティアは鼻を鳴らした。
「あたしにしてみればどっちもどっちさ。虐める方の根性は曲がっていたし、虐められた方はてんで不甲斐ないと思っていたよ」
ベアトリスは目を見開いて、驚きを隠せない。
「おばあさまはベロニカがイザベラに虐めるように誘導していた、とおっしゃるの?」
「そうかもしれないね。今日のビーの話を聞くと、ベロニカはきな臭いよ」
右手をひらひらさせるデーティア。
「で?」
デーティアがベアトリスに向き直る。
「あんたはどうしたいんだい?この謎に鼻をつっこむ気かい?」
「あ…」
そう聞かれてベアトリスは言葉に詰まった。そこまで考えていなかったのだ。デーティアに言えば解決してくれるという、甘い考えを持っていた自分に気づいた。
「いいかい?あたしは亡霊や死とはあまり縁がないし、そっち方面は決して強くない。できることと言ったら呪いの解除くらいだね。それも」
一拍置いて強く言う。
「誰がどういう呪いをかけたか。それを探らなきゃ話にならない。呪いを解くも解かないも、あんたの力次第だよ」
「わたくし!?」
「何を驚くことがあるんだい?あんたが始めたことだよ。決まったら連絡をおくれ。解呪に必要なものを用意しておくけどね、一応」
ベアトリスは困り果てた。
あれ以上、亡霊から話を聞けそうもない。どうしたらいいのだろう。
その表情を見てデーティアが笑う。
「ワイアット家のことはワイアット家の者に聞けばいいだろう。あんたの婚約者は誰なんだい?」
ああ!そうだったわ。ベアトリスは早速行動に移すことにした。
デーティアは
「やれやれ。結果も考えずに猛獣の洞穴に飛び込んだってことにならないといいね」
と呆れたが、可愛いベアトリスのために加護の魔法を強化した。
ベアトリスは週末ごとに行われる、婚約者のユージーン・ワイアット公爵とのお茶の席で事の顛末を話した。
「ベロニカ・カタリナか。確か嫁いで子供もなさずに死んだから、イザベラとの学園でのいざこざの話と絡めて聞いたことはあるけれど、ワイアットの系譜から外されている人だね」
「お願い。わかることがあったら調べて欲しいの」
ベアトリスのおねだりにユージーンは笑って約束した。
「家の書庫の本を調べてみましょう」
ベアトリスが婚約者のユージーン・ワイアット公爵に、学園の二人の亡霊の話を語った翌週。ユージーンとベアトリスの午後のお茶の日。
ユージーンが予想していた通り、ベアトリスは好奇心ではち切れそうな様子で彼を待っていた。
彼女の可愛い我儘や気まぐれは、彼にとっては魅力的だった。
物怖じしない真っすぐな気性、火花のように煌めく才気や瞳に現れる変わりやすい機嫌すらも、ユージーンにとっては可愛くてたまらないらしい。
デーティアは眉根を寄せる。
「だいたい、学園でも気に入らなかったんだ。イザベラは単純なおばかさんだったから、人目も気にせずベロニカを虐めていたけど、ベロニカは逃げもしなければ助けを求めもしない。その上…なんていうか無防備すぎた。まるで虐めてくださいと言わんばかりに…」
デーティアはブツブツ言う。
「教本や小物を置きっぱなしだったし、ぼんやりとイザベラの傍を歩くし、噴水の事件だってあんなところに立っていたらイザベラが何をするかわかりそうなもんじゃないか」
デーティアは記憶を辿る。
「おばあさま!じゃあ、虐められていたベロニカが悪いとおっしゃるの?」
フンとデーティアは鼻を鳴らした。
「あたしにしてみればどっちもどっちさ。虐める方の根性は曲がっていたし、虐められた方はてんで不甲斐ないと思っていたよ」
ベアトリスは目を見開いて、驚きを隠せない。
「おばあさまはベロニカがイザベラに虐めるように誘導していた、とおっしゃるの?」
「そうかもしれないね。今日のビーの話を聞くと、ベロニカはきな臭いよ」
右手をひらひらさせるデーティア。
「で?」
デーティアがベアトリスに向き直る。
「あんたはどうしたいんだい?この謎に鼻をつっこむ気かい?」
「あ…」
そう聞かれてベアトリスは言葉に詰まった。そこまで考えていなかったのだ。デーティアに言えば解決してくれるという、甘い考えを持っていた自分に気づいた。
「いいかい?あたしは亡霊や死とはあまり縁がないし、そっち方面は決して強くない。できることと言ったら呪いの解除くらいだね。それも」
一拍置いて強く言う。
「誰がどういう呪いをかけたか。それを探らなきゃ話にならない。呪いを解くも解かないも、あんたの力次第だよ」
「わたくし!?」
「何を驚くことがあるんだい?あんたが始めたことだよ。決まったら連絡をおくれ。解呪に必要なものを用意しておくけどね、一応」
ベアトリスは困り果てた。
あれ以上、亡霊から話を聞けそうもない。どうしたらいいのだろう。
その表情を見てデーティアが笑う。
「ワイアット家のことはワイアット家の者に聞けばいいだろう。あんたの婚約者は誰なんだい?」
ああ!そうだったわ。ベアトリスは早速行動に移すことにした。
デーティアは
「やれやれ。結果も考えずに猛獣の洞穴に飛び込んだってことにならないといいね」
と呆れたが、可愛いベアトリスのために加護の魔法を強化した。
ベアトリスは週末ごとに行われる、婚約者のユージーン・ワイアット公爵とのお茶の席で事の顛末を話した。
「ベロニカ・カタリナか。確か嫁いで子供もなさずに死んだから、イザベラとの学園でのいざこざの話と絡めて聞いたことはあるけれど、ワイアットの系譜から外されている人だね」
「お願い。わかることがあったら調べて欲しいの」
ベアトリスのおねだりにユージーンは笑って約束した。
「家の書庫の本を調べてみましょう」
ベアトリスが婚約者のユージーン・ワイアット公爵に、学園の二人の亡霊の話を語った翌週。ユージーンとベアトリスの午後のお茶の日。
ユージーンが予想していた通り、ベアトリスは好奇心ではち切れそうな様子で彼を待っていた。
彼女の可愛い我儘や気まぐれは、彼にとっては魅力的だった。
物怖じしない真っすぐな気性、火花のように煌めく才気や瞳に現れる変わりやすい機嫌すらも、ユージーンにとっては可愛くてたまらないらしい。
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