19 / 36
19.獲物と生餌
しおりを挟む
アンリ・オランジュ男爵ははっきり言って愚か者だ。
武芸と勇猛さにおいて若い頃は抜きんでていたが、中年になった今は爵位を鼻にかけ鍛錬をやめた肥えた愚鈍な男に成り下がった。
領地の経営は王家から派遣した間諜を兼ねた使用人に任せきりで、自ら経営に手を出さないどころか学ぼうとしない。息子のシーア・オランジュが王立学園で文官科と経営科で学んだからこそ、なんとか生活の資金を賄えている。また、嫁いだ娘シルヴィアからの援助もある。
しかし愚かな故に、彼に接触する反女王派の末端を把握しやすかった。そこから辿って現在の主要貴族の目星はついている。
また、神殿で稀人達の衣装や小物を調える時に呼んだ商会との繋がりからも洗い出していた。
神殿で稀人召喚を唆した神官もだ。アデルという若い神官だった。
今までオランジュ男爵の目立つが杜撰な言動で隠されていた一派の目星をつけることができたのは、今般の召喚事件のお陰だ。
召喚を行った神官達は、まさに憑き物が落ちたように心底悔いていたので、取り調べはするすると進んだ。
神官達は、彼らを唆した貴族達の目的を知ると震えあがった。
成人になっても神殿に残り神に仕えることを選んだ神官の多くは、神学をはじめとする学問に没頭したい者がほとんどで、俗世の欲に免疫がない。
そんな彼らが召喚の儀を行った目的は、ただひとつ。
聖女不在の神殿の不完全さを強く説かれたからだった。
炙り出した女王反対派の過激な有力貴族は、シラニー公爵とジルダイン伯爵の他にイズハン侯爵、ガイゼン侯爵、センダール伯爵、シラウン伯爵、ジシア子爵。
稀人召喚の発表もしていないのに面会を求めてきた者の一部だ。
他の貴族達はザイディー曰く「うまく使われている感じだった」
「利権に目がくらんだ欲が隠しきれていなかった」とダイル。「稀人に気に入られれば近いうちに重鎮になれるとか、金もうけができるとか思いこんでいるのが見え見えだった」
五人は神官達の証言からも、商会との繋がりとも矛盾しない。シラニー公爵とジルダイン伯爵は裏で資金を援助したり、指示を出したりしながら巧妙に身を隠しているらしい。
あとは、それらの貴族をいかに、どの稀人にぶつけるかだ。
ジウン達がぐったりしながら選択したのは、以下四人だ。
マイ、アカリ、レイ、シノブ。
ミサも入るだろうと思っていたが
「あんなバカ丸出しを表に出させるか」とジウンが吐き捨てた。
他のヒロイン達には庭園の散歩を許可し、偶然を装って攻略対象五人に会わせた。ラン以外の稀人達は、わたくしが「絶対に会わせない」と言ったはずの攻略対象との邂逅に有頂天になったらしい。
ランは怯えて逃げ去ったという。後で謝罪しなければ。だから「誰とも結婚しない」などと言ったのかもしれない。
「しかし、シラウン伯爵はミサと会いたがっていた」ジリアンが眉を顰める。
「いやいや、あの娘は誰にも会わせてはいかんだろう」眉間に皺を寄せたエグゼルが続ける。
「下品で破廉恥な言動をするのに、無邪気さを装ってて気味が悪い。ニヤつきながら同情を引こうとしていた」とジウン。
「ベタベタ触ってきて、引きはがそうとしたらわざとらしく転んだ」ダイルが首を振る。
「あの上目遣いの瞬きはゾッとしたな」ザイディーの言葉に全員がうんうんと頷く。
「妙に甘ったるい声も気味が悪かった」とエグゼル。
「シジア伯爵に限っては、ミサを自分のものにしたいよう口ぶりだったがな。その辺を利用して揺さぶれないか?」ジウンが提案する。
「ミサは中年には興味はないだろう。ジリアンによろけたふりで抱き着いてニヤついていたよ」ザイディーが人の悪い笑顔で言う。ジリアンは心底嫌そうな顔をする。
このままではミサの悪口大会になりそうなので、話を強引に進めたい。
「みなさんいいお年ですし、利権と令息の妻に迎えたい意向がありそうですね。なにしろ聖女は一人いればいいのですから、残った方を令息と婚姻させれば王家からなんらかの恩恵が与えられるか、または昔のように背徳の遊びができると思っていらっしゃるような口ぶりでした」
「シャイロ、わかっているか?」ジウンが厳しい声で詰め寄る。
「七人のうち誰かが聖女の座に就く。そして女王戴冠を廃止にする。そのためには、シャイロを亡き者にする必要があるということを」
妹に甘い兄達は第三の計画に真っ向反対している。
「でもね、兄上?そうしないと何も進まないのですよ?」
「何をするかわからんことをどう防ぐのだ?」ダイルがうめく。
「我が王家の"影"の腕の見せ所でしょうね」落ち着いたサイディーの言い分はわたくしを代弁してくれている。
「あなたの身は私が守ります」
わたくしはザイディーを見て微笑んだ。
ここでわたくしはランから聞いた『エルダー王国の花聖女と十二人の守護者』のおおまかな内容を説明した。
「聞けば聞くほどあり得ませんね」
ジリアンが厳しい顔で言う。
「学園で恋愛沙汰を起こすなんて前代未聞です」
エグゼルが首を振る。
「しかも王族相手や婚約者がいる相手に?正気か?」
ダイルがあきれ果てたように言う。
「恋愛は遊びじゃありませんよ」
この冬に結婚予定のエグゼルにとっては嫌な話なのだろう。
「何年も親交を深めた相手を、たった一年くらいで捨てる男も大概だな」
ジウン兄上、それは『ハナシュゴ』のあなたもですよ。
「わたくしは"金に汚いケチ王女"だそうです」
みんなどっと笑う。ひどい。
「女王反対派はそう思っているかもな」
ダイル兄上、ひどいです。
ふくれっつらをしてしまったわたくしをなだめるようにザイディーがわたくしの手に自分の手を優しく重ねる。
「女王反対派は中央政権から外されていますし、収支報告書をまともに読まずに増税と援助を求めていますからね。領地を健全に運営できずに売却した家も多いですし、中央から監査が入って指導措置や一時没収された家もありますから」
逆恨みもいいところだ。
「しかし」
ダイルがわたくしを見て微笑む。
「シャイロが感情をあからさまに出すようになったのは嬉しいな」
ジウンも頷く。
「学園生活で少しは年相応になるかと思ったが、ますます堅苦しい無表情になって、このままではザイディーに愛想をつかされるかと思ったよ」
重ねられたザイディーの手に力がこもって、軽く握られる。
「ここ数年は、行く必要もない学園に時間をとられるのが辛かったですか?」
わたくしの顔を覗き込むザイディーに頬が熱くなるのを感じる。
「私は頼ってくれないのが辛かったですよ?学園以外の時間は政務室に籠りきりで。少しだけこの事件に感謝してしまいそうです」
「わたくし、結婚までに色々片付けておきたくて…」
思わず言い訳に力が入る。
ジウンが笑って手を振る。
「今は女王反対派を潰すことに全力を振り切ろう。いくつかの爵位を取り潰す分、後が色々やりやすくなるだろうから」
そうなのだ。何をしようにも反対派に焚きつけられた勢力の横槍が邪魔だったのだ。
「さあ、どうやって炙り出すか。狩りの計画を立てようじゃないか」
ダイルが立ち上がってニヤリと笑う。
「私達は生餌であり猟犬だ。生餌を放って獲物を藪から出し、猟犬が仕留めるわけだ」
ジウンの言葉に皆が立ち上がる。
武芸と勇猛さにおいて若い頃は抜きんでていたが、中年になった今は爵位を鼻にかけ鍛錬をやめた肥えた愚鈍な男に成り下がった。
領地の経営は王家から派遣した間諜を兼ねた使用人に任せきりで、自ら経営に手を出さないどころか学ぼうとしない。息子のシーア・オランジュが王立学園で文官科と経営科で学んだからこそ、なんとか生活の資金を賄えている。また、嫁いだ娘シルヴィアからの援助もある。
しかし愚かな故に、彼に接触する反女王派の末端を把握しやすかった。そこから辿って現在の主要貴族の目星はついている。
また、神殿で稀人達の衣装や小物を調える時に呼んだ商会との繋がりからも洗い出していた。
神殿で稀人召喚を唆した神官もだ。アデルという若い神官だった。
今までオランジュ男爵の目立つが杜撰な言動で隠されていた一派の目星をつけることができたのは、今般の召喚事件のお陰だ。
召喚を行った神官達は、まさに憑き物が落ちたように心底悔いていたので、取り調べはするすると進んだ。
神官達は、彼らを唆した貴族達の目的を知ると震えあがった。
成人になっても神殿に残り神に仕えることを選んだ神官の多くは、神学をはじめとする学問に没頭したい者がほとんどで、俗世の欲に免疫がない。
そんな彼らが召喚の儀を行った目的は、ただひとつ。
聖女不在の神殿の不完全さを強く説かれたからだった。
炙り出した女王反対派の過激な有力貴族は、シラニー公爵とジルダイン伯爵の他にイズハン侯爵、ガイゼン侯爵、センダール伯爵、シラウン伯爵、ジシア子爵。
稀人召喚の発表もしていないのに面会を求めてきた者の一部だ。
他の貴族達はザイディー曰く「うまく使われている感じだった」
「利権に目がくらんだ欲が隠しきれていなかった」とダイル。「稀人に気に入られれば近いうちに重鎮になれるとか、金もうけができるとか思いこんでいるのが見え見えだった」
五人は神官達の証言からも、商会との繋がりとも矛盾しない。シラニー公爵とジルダイン伯爵は裏で資金を援助したり、指示を出したりしながら巧妙に身を隠しているらしい。
あとは、それらの貴族をいかに、どの稀人にぶつけるかだ。
ジウン達がぐったりしながら選択したのは、以下四人だ。
マイ、アカリ、レイ、シノブ。
ミサも入るだろうと思っていたが
「あんなバカ丸出しを表に出させるか」とジウンが吐き捨てた。
他のヒロイン達には庭園の散歩を許可し、偶然を装って攻略対象五人に会わせた。ラン以外の稀人達は、わたくしが「絶対に会わせない」と言ったはずの攻略対象との邂逅に有頂天になったらしい。
ランは怯えて逃げ去ったという。後で謝罪しなければ。だから「誰とも結婚しない」などと言ったのかもしれない。
「しかし、シラウン伯爵はミサと会いたがっていた」ジリアンが眉を顰める。
「いやいや、あの娘は誰にも会わせてはいかんだろう」眉間に皺を寄せたエグゼルが続ける。
「下品で破廉恥な言動をするのに、無邪気さを装ってて気味が悪い。ニヤつきながら同情を引こうとしていた」とジウン。
「ベタベタ触ってきて、引きはがそうとしたらわざとらしく転んだ」ダイルが首を振る。
「あの上目遣いの瞬きはゾッとしたな」ザイディーの言葉に全員がうんうんと頷く。
「妙に甘ったるい声も気味が悪かった」とエグゼル。
「シジア伯爵に限っては、ミサを自分のものにしたいよう口ぶりだったがな。その辺を利用して揺さぶれないか?」ジウンが提案する。
「ミサは中年には興味はないだろう。ジリアンによろけたふりで抱き着いてニヤついていたよ」ザイディーが人の悪い笑顔で言う。ジリアンは心底嫌そうな顔をする。
このままではミサの悪口大会になりそうなので、話を強引に進めたい。
「みなさんいいお年ですし、利権と令息の妻に迎えたい意向がありそうですね。なにしろ聖女は一人いればいいのですから、残った方を令息と婚姻させれば王家からなんらかの恩恵が与えられるか、または昔のように背徳の遊びができると思っていらっしゃるような口ぶりでした」
「シャイロ、わかっているか?」ジウンが厳しい声で詰め寄る。
「七人のうち誰かが聖女の座に就く。そして女王戴冠を廃止にする。そのためには、シャイロを亡き者にする必要があるということを」
妹に甘い兄達は第三の計画に真っ向反対している。
「でもね、兄上?そうしないと何も進まないのですよ?」
「何をするかわからんことをどう防ぐのだ?」ダイルがうめく。
「我が王家の"影"の腕の見せ所でしょうね」落ち着いたサイディーの言い分はわたくしを代弁してくれている。
「あなたの身は私が守ります」
わたくしはザイディーを見て微笑んだ。
ここでわたくしはランから聞いた『エルダー王国の花聖女と十二人の守護者』のおおまかな内容を説明した。
「聞けば聞くほどあり得ませんね」
ジリアンが厳しい顔で言う。
「学園で恋愛沙汰を起こすなんて前代未聞です」
エグゼルが首を振る。
「しかも王族相手や婚約者がいる相手に?正気か?」
ダイルがあきれ果てたように言う。
「恋愛は遊びじゃありませんよ」
この冬に結婚予定のエグゼルにとっては嫌な話なのだろう。
「何年も親交を深めた相手を、たった一年くらいで捨てる男も大概だな」
ジウン兄上、それは『ハナシュゴ』のあなたもですよ。
「わたくしは"金に汚いケチ王女"だそうです」
みんなどっと笑う。ひどい。
「女王反対派はそう思っているかもな」
ダイル兄上、ひどいです。
ふくれっつらをしてしまったわたくしをなだめるようにザイディーがわたくしの手に自分の手を優しく重ねる。
「女王反対派は中央政権から外されていますし、収支報告書をまともに読まずに増税と援助を求めていますからね。領地を健全に運営できずに売却した家も多いですし、中央から監査が入って指導措置や一時没収された家もありますから」
逆恨みもいいところだ。
「しかし」
ダイルがわたくしを見て微笑む。
「シャイロが感情をあからさまに出すようになったのは嬉しいな」
ジウンも頷く。
「学園生活で少しは年相応になるかと思ったが、ますます堅苦しい無表情になって、このままではザイディーに愛想をつかされるかと思ったよ」
重ねられたザイディーの手に力がこもって、軽く握られる。
「ここ数年は、行く必要もない学園に時間をとられるのが辛かったですか?」
わたくしの顔を覗き込むザイディーに頬が熱くなるのを感じる。
「私は頼ってくれないのが辛かったですよ?学園以外の時間は政務室に籠りきりで。少しだけこの事件に感謝してしまいそうです」
「わたくし、結婚までに色々片付けておきたくて…」
思わず言い訳に力が入る。
ジウンが笑って手を振る。
「今は女王反対派を潰すことに全力を振り切ろう。いくつかの爵位を取り潰す分、後が色々やりやすくなるだろうから」
そうなのだ。何をしようにも反対派に焚きつけられた勢力の横槍が邪魔だったのだ。
「さあ、どうやって炙り出すか。狩りの計画を立てようじゃないか」
ダイルが立ち上がってニヤリと笑う。
「私達は生餌であり猟犬だ。生餌を放って獲物を藪から出し、猟犬が仕留めるわけだ」
ジウンの言葉に皆が立ち上がる。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません
おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。
ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。
さらっとハッピーエンド。
ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。
そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。
朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。
そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。
こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる