ハゲ戦記

マジキチ組長

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015.禿則満(はげ のりみつ)

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 禿国守護大名 多髪氏が地方豪族の時代より家臣として仕えていた禿氏を祖とする。
 則満は第八代当主 多髪義房に仕えて政務、外交、軍事などあらゆる業務に携わっていた。
 それ故に、守護大名である多髪家の中核を担う存在であった。

 だが、後に義房は禿利将軍家の怒りを買った事により禿国守護の役職を剥奪されてしまう。
 そして則満が新たに禿国守護に任命され、禿家による統治が始まるのであった。

 それから数年が経ったある日、彼は視察の為に領内の禿毟村(はげむしむら)を訪れていた。
 この村では昨年から不作に見舞われているとの事を受けての現地調査であったという。

 そうして視察が終わり、禿城への帰路でそれは起こった。
 禿毟村から少し離れた山道に差し掛かった頃、一人の男が彼に声をかけてきた。
 男は則満に対して下品な笑い声を上げながら言う。

『ぐへへへへ。おいあんた、痛い目に遭いたくなけりゃ金目の物を出しな。』

 男の身なりは茶色く汚れた衣服で刀を手にしていた。
 どうやらこの禿毟村を拠点として活動している山賊のようである。
 則満は男の目を見つめながら静かに答える。

『山賊……か、儂を禿則満と知っての狼藉であるか。』

 そして続けて則満が言う。

『悪き事は申さぬ。大人しく身を引くがお主の為ぞ。』

 この冷静な則満の対応に男は鼻で笑いながら言う。

『へっ、随分と大層な口をきく奴じゃな。その口、きけなくしてやろうか?』

『口で申しても分からぬか。仕方ない、では相手にしてやろうぞ。』

 そう言うと則満は腰にした刀を抜き、構えの姿勢を見せた。

『参る!!』

 次の瞬間、刀がぶつかり合う音が辺りに響き始める。
 こうしてしばらく二人による激しい攻防が繰り広げられる事となった。

 やがて二人は鍔迫り合いとなり、互いがじりじりと攻め寄ろうとする展開となった。
 そこで男が思わず声を漏らす。

『くっ、つ……強い……』

 すると則満は力を入れて男の刀を押し返し、その衝撃で刀は男の手から外れてしまう。

 万事休すか……
 男の表情はみるみるうちに恐怖に満ちた表情へと切り替わる。
 すると則満は刀を鞘に収めて言う。

『お主と儂との力の違いが分かったならば早々に立ち去るが良い。』

 則満のその言葉に男は戸惑いの表情を見せたが、すぐに彼を睨みつけながら声を上げる。

『くそっ!覚えてろよ!』

 そうして男は逃げるようにして山へと消えて行った。

 後にこの山賊衆は、則満が本格的に討伐に乗り出した事で壊滅した。
 その中には以前に則満と刀を交えた男もおり、最期は則満自身の手によって斬り捨てられたという。


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