婚約者は想像と違います

プロローグ？

「クロウ殿下、ニヤニヤが気持ち悪いですよ。」

「うるさい、もうすぐ毎日シルに会えるんだ。ニヤニヤを我慢しろと言う方が無理だ。」

 もうすぐ私は、『ノブレス学園』に入学する。
婚約者のシルとは３ヶ月に１度しか会えないが、学園に通うようになれば毎日会える！
これがニヤニヤを押さえられるか。

「シルが見たらがっかりするでしょうね～」

「次の仕事は？」

「こちらを。」

 シルはよく理想の男について話す。
見てきたような言いぶりで、誰か好きなやつが居るのかと問いただしたら「クロウですよ」と目を輝かせて言われる。
そうなるように期待されてると思うと悪い気はしない。

 シルに出会わないで居たらもしかしたら、そんな人間だったかも知れない。
でも私は、今の私が気に入っている。
くだらないような事でも笑い、父上と母上に感情のまま接する。
カイのおかげで、切り替えが出来るようになった。
人前では理想の王子。身内では少し情けないただのクロウ。
シルは理想の王子が好きなようなので、そちらで接している。
それでも私で有ることは変わらない。
ずるではない…

「クロウ、これが終わったらお祖父様がお呼びですよ。」

「わかった。」

 カイのお祖父様は宰相だ。
私のお祖父様の時から勤めてくれている、だから父上を実の息子のように扱い、私を孫のように可愛がってくれる。
本当はお祖父様と一緒に隠居する予定だったが、後をついで欲しい者に断られたそうだ。
王宮に缶詰になるより、可愛い妻を愛でたいとか？ぐれて他国に引っ越すなど脅されたとか。

「お祖父様、殿下をお連れしました。」

「誰も居ない。楽にしていい。」

 執務室には小さいキッチンがついている。
お茶を飲むために人を呼ぶのが面倒だと作ってしまったらしい。

「今日のようは何ですか？」

「学園での生活についてだが、勉強はシルも殿下も学ぶ事は少ないと思う。殿下は生徒でも有るが。理事でもある。より良い学園にしてくれ。間違っても。シルとイチャイチャするために権力を使わないように。」

「…わかっている。」

 ばれてたか…

「カイはシルの面倒をよく見なさい。何か有ればすぐ報告するように。今日は陛下のおかげで私は入学祝いに参加できない。シルにプレゼントを渡しておいてくれ。」

「わかりました。」

 かわいらしい熊のぬいぐるみだ。

「私の自信作だ。」

「伝えておきます。」

「殿下はこちらを。」

私もぬいぐるみか？
本だった。
タイトルは、好きな女性を意識させる方法１００。
どうしてだ？私とシルは両想いでは？

「殿下、学園は出会いの場でもあります。シルは殿下を家族として思っておりますが。異性としてではないと思います。私はシルに好きな男性が出来たら応援したいと思うので。これで頑張ってください。」

……そうなのか！？
ラブラブだと思っていたが違うのか？

「カイ本当か？」

「面白くて黙ってましたねそうですね。」



こいつ…