うさぎ穴の姫

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「あら、いたら悪いのかしら」
 夫人は動揺を隠せないニームを挑発的な視線で見た。それはつまり、年端もいかないニームを一般的な異性として扱うような態度に見えた。しかしそれはもちろん夫人がニームをそのような対象として見ているという意味ではなく、夫人が母としての成熟をしていないからであり、自分の外見を武器と自覚している女性が、その武器が錆びつかないように常に磨きをかけることを心がけているようであり、ただ無垢に咲いているバラが見るものを魅惑するように、オルレアン自身がただそう感じているだけなのかもしれなかった。
「いや、しかし」ニームは、ダンケルクの夫人ともあるべきひとが、病院以外の場所で、老婆と時と場所を同じにしていたことが、容認できないようだった。
「なに?」夫人はニームを見下して、堂々としていた。
「先生に怒られませんか」
「叱られたって、かまいはしないわ」夫人はふんと鼻をならした。「それにどうして怒られるっていうの。昔なじみとのご近所つきあいのなにが悪いのかしら」
「それはそうですが」
「お金の計算はあのひとにさせておけばいいのよ。どうして男のひとって、自分が手にしているお金だけを見れないのかしら。金庫からお金を盗まれたわけでもないのに。あのひとは自分が手に入れたわけでもない空想のお金を、誰かに盗られることも嫌なのね」
 私にはもう十分すぎるくらいなのにと、夫人は星の小さな明かりさえ逃さずに輝く石を、左の薬指につけてきらめかせた。
 そうしてオルレアンがその淡い青の光に思わず見とれていると、「春の夜風は老体には身に染みる。早く扉をしめてもらえんかね」と、アンティーブ夫人が影となって見えていなかった家の中から、しわがれた灰色の声が聞こえてきた。老婆の声に違いなかった。
「ごめんなさいね」夫人は老婆にそう謝ると、オルレアンとニームを家の中に招き入れた。「どうぞお入りなさい」
 オルレアンが中に入ると、老婆は安楽椅子に座って暖炉の日に当たっていた。その光景は、季節外れの冬のようであった。オルレアンやニームのような血の巡りのよい若者には火の熱さで、部屋の中はむっと感じられた。扉を開けた一階は完全に老婆が生活するための居間だった。壁際に階段がつけられていて、それをあがった二階が客室になっているのだろうが、それがなければここは普通の民家のようだった。ただ、普通の民家といっても、色褪せて毛のはげかけた絨毯や、老婆の前の端の欠けたカップを見ると、暮らし向きは普通よりもずっと貧相に見えた。老婆の座る安楽椅子だけが、この部屋の中で異彩を放っていて、安楽椅子のクッションは厚みが豊かで柄は豪奢であり、木は一切の瑕疵もなく、木の透明な樹脂が全体に手抜きなく塗られてあった。
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