5 / 6
5
しおりを挟む
私は未星のか弱い力技に一時身を引っ張られるに任せようとしたが、鞄を手近な机の上に置いたままだった私は危うく鞄を教室に置き去りにするところだったことに気がついた。未星の私を引っ張る力は未星よりだいぶ頑丈な私にとっては強引なものとはとても言えず、私は未星の手を簡単に引っ張り返して手をつないだまま引き返し、無事に鞄を机から回収した。しかし私のその強引な対応は未星の機嫌を一層損ねたようで、
「痛いじゃないの。月子の馬鹿力」
前に進んでいた腕を急に止められた未星は恨むような涙目で私を見た。
「先に引っ張ったのはそっちでしょ。私だってちょっと痛かったからおあいこです」
私はそう嘘をついた。実際は全く痛いことはなかった。未星の私を引っ張る力に比べたら、リールにつないだ元気なうさぎの引く力の方がいくぶん強いのではないのかとさえ私には思われた。
未星は私のその冷たい態度につないでいた手を私から振り切った。
「だって私と月子の力じゃ、重みが全然違うもの」
未星はそう言って、私より十センチも低いところから私を責めるような視線を送った。
「それじゃあ、私が未星よりも背が高くて力が未星より強いのが悪いって言うの。それとも、未星の背が私よりも小さくて、力が私よりも弱いのが悪いって私に思わせたいの」
私の意地の悪い言い方に、未星はこぢんまりとした肩幅を一層すぼめた。
「誰もそんなことは言ってない」
未星はぼそぼそとした声で、私に小さく反論したが、その声はもうこれ以上の言い合いを望んでいない控えめさが確かにあったから、私たちもう一度、お互いの両手をお互いに握った。
「確かに私の方が図体がでかくてがさつで繊細さに欠けるけど」と私がそう誇張して未星と比べた時の私の性質を認めると、未星はうつむいてそんなことないと言うようにふるふると首を振った。「でもそれは良いとか悪いとかじゃないじゃん」と未星の手を握ったまま、二人で確認するように私は笑ってそう言った。未星は私たちの手と腕がつくる輪の中で顔を上げ直すと、
「そうね。ごめんね、月子」未星はそう言ってキュッと私の手を握り返して、微笑んだ。
「いいよ、未星」
私はそう言って、落ち込む未星を慰めた。そうして私たちはしばらく手を握っていたけれど、やがて両手から片方の手だけを外して、教室を出ていった。
「痛いじゃないの。月子の馬鹿力」
前に進んでいた腕を急に止められた未星は恨むような涙目で私を見た。
「先に引っ張ったのはそっちでしょ。私だってちょっと痛かったからおあいこです」
私はそう嘘をついた。実際は全く痛いことはなかった。未星の私を引っ張る力に比べたら、リールにつないだ元気なうさぎの引く力の方がいくぶん強いのではないのかとさえ私には思われた。
未星は私のその冷たい態度につないでいた手を私から振り切った。
「だって私と月子の力じゃ、重みが全然違うもの」
未星はそう言って、私より十センチも低いところから私を責めるような視線を送った。
「それじゃあ、私が未星よりも背が高くて力が未星より強いのが悪いって言うの。それとも、未星の背が私よりも小さくて、力が私よりも弱いのが悪いって私に思わせたいの」
私の意地の悪い言い方に、未星はこぢんまりとした肩幅を一層すぼめた。
「誰もそんなことは言ってない」
未星はぼそぼそとした声で、私に小さく反論したが、その声はもうこれ以上の言い合いを望んでいない控えめさが確かにあったから、私たちもう一度、お互いの両手をお互いに握った。
「確かに私の方が図体がでかくてがさつで繊細さに欠けるけど」と私がそう誇張して未星と比べた時の私の性質を認めると、未星はうつむいてそんなことないと言うようにふるふると首を振った。「でもそれは良いとか悪いとかじゃないじゃん」と未星の手を握ったまま、二人で確認するように私は笑ってそう言った。未星は私たちの手と腕がつくる輪の中で顔を上げ直すと、
「そうね。ごめんね、月子」未星はそう言ってキュッと私の手を握り返して、微笑んだ。
「いいよ、未星」
私はそう言って、落ち込む未星を慰めた。そうして私たちはしばらく手を握っていたけれど、やがて両手から片方の手だけを外して、教室を出ていった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる