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虫圭

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二章 chocolate brothers

2月2日『仕事の朝』

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「お兄ちゃんおはよぉ」
「おう、おはよう」
「お兄ちゃん、ちゃんと寝てた?」
「おう」
「ホントかなー。またアプリゲームしてて寝てないんじゃないのぉー?」
「寝たよ」
「なら良いけどー」

 ベッドから下りてお風呂に向かう。
 朝シャンではなく、うちはユニットバスなのだ。
 最初はお金が全然なくて、1DKで月4万円の狭いアパートに住むしかなくて、仕方なく今の部屋に決めた。
 その頃はお兄ちゃんだけが働いていて、私は学校と部活があったからアルバイトとかはできなくて、いや、ホントは私も学校辞めて働こうと思ったんだけど、お兄ちゃんが「それは止めとけ」って言うから学校は辞めなかった。
 じゃあ部活辞めるよって、言って、それなら夕方と休みの日にアルバイトできるから、って言ったんだけど、「友達は大事だし部活の仲間とか先生も将来大事な関係になるだろうから、お前はそのままでいろ」ってお兄ちゃんに言われて、仕方なく諦めた。
 だからその頃はお金が全然無くて安いアパートに住むしかなかった。
 だから部屋は狭い1DKだしユニットバスだし西日だし一階だし、ってこんな感じの部屋に二人で住んでる。
 今は私が働いててあの頃よりはお金に余裕できたから、一時期引っ越そうかな? って考えてた時があったんだけど、よくよく考えたらユニットバスって、お風呂入る時もトイレの時もお兄ちゃん眺めれるじゃんって利点に気付いて、なら引っ越す必要なんてないじゃん。むしろ部屋が広くなったら無駄に広くなってお兄ちゃんが「広いんだから離れろ」とか言い出しかねないな、って思って引っ越し自体を取り止めた。
 だからあんまり綺麗でも快適でもないこの月4万円水道光熱費込み(ガス代は別)のアパートに今も住んでる。

「お兄ちゃん、朝ごはんパンでも良いー?」
「おう」
「目玉焼き食べるー?」
「お「食べるよね」
「……おう」
「あとはサラダとコンソメスープとー」

 朝ごはんを二人で食べるのは私とお兄ちゃんの日課。
 お昼と夜は仕事の時間とかで左右されてるから仕方ないけど、朝は二人とも必ず家に居るから一緒にご飯食べるようにしてる。
 同じご飯を毎日一緒に食べるって、夫婦みたいで素敵。
 いっそ結婚してしまいたいけど、法律的に無理みたいだからそれは諦めた。
 でも一緒に暮らしてるし、私の稼ぎで生活してるんだから、これはもう『内縁の妻』ってことで良いよね? 実質夫婦ってことで良いんだよね?

「お兄ちゃん、そろそろ仕事行くねー」
「おう」
「お昼ごはんと晩ごはんは冷蔵庫に入れてるチンしてねー」
「おう」
「じゃー、ゆか行くね」
「おう」
「……お兄ちゃーん?」
「……」
「お兄ちゃーん? あれー? 行ってらっしゃいのチューはぁ?」
「…………」
「してくんないと、ゆか仕事行けなーい」
「なら仕事辞めて良いぜ」
「……意地悪。良いもーん、ゆかからチューするからっ」
「……はぁ」

 顔を背けようとするお兄ちゃんの頭を固定して唇にキスをする。
 よぉーし! ヤル気出た!!
 今日も一日お兄ちゃんの為に、お兄ちゃんと私の生活の為に働くぞぉー!!
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