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愛
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目を覚ますと隣に裸の男が寝てた。
筋骨隆々のイケメン。
「……あー、またヤっちゃったかぁー」
昨晩のことは覚えてない。
いや、なんかのでっかいパーティー会場にいたのは覚えてる。すごいごちそうとか、高そうなお酒とか、金持ちそうな人たちがたくさんいたこととかも。
ただ、高そうなお酒を近くにいたイケメンと乾杯した後、その先のことは一つも思い出せない。
乾杯したイケメンが、私の隣で寝息を立ててるこのイケメンではないことは確かだけど。
「あー、またエロっちに怒られちゃうかなー。怒られるだろうなー。また手紙もらっちゃうんだろうなー」
ま、良いか。
そう気持ちをサクッと切り替えて、ベッドから下りると壁に掛かっている姿見の前に立つ。
「うん。今日も最高に美人だ。エロっちに感謝感謝♪」
私は一糸まとわぬ姿、つまり全裸で仁王立ちし、姿見で全身をくまなくチェックする。
引き締まった二の腕と腹筋。健康そうな肌の色ツヤ。張りのある豊満なおっぱい。ふっくらと大きいのに重力に逆らいキュッと持ち上がったお尻。そのお尻を恥じらい隠すように腰まで伸びた金色のさらツヤな髪の毛は、朝陽でキラキラと輝いている。
くっきり二重にスッとした鼻筋、透き通った海のような色素の薄い瞳。
そして凛と引き締まった唇。
うん。私の身体は本物の美人だ。
姿見を前に私はうんうんと頷く。
鏡に写った自身の姿を何度も確認し、今日も美しい自分を堪能、十二分に満足すると、そのまま大手を振ってバスルームへと向かう。
高級そうな家具や内装に彩られた部屋を出て、廊下を通りバスルームに着くと、浴室の壁に取り付けられた蛇口のようなものを覚悟を決めて思い切りひねる。
「うっ……ひぃ……! 冷たぁ!」
シャワーヘッドのようなそうでないような、ホースの先にミラーボールを取り付けたような歪な器具から冷水が溢れ飛び散る。
「あああああ! つべたいぃぃぃぃ! 暖かいシャワーが浴びたぁいいぃぃぃぃぃ!」
この時だけは私は相当な覚悟で挑む。
身体を打つ凍えるような飛沫。
心臓までギュッと引き締まるような冷たさに、仕方ないと分かっていても眉間にしわが寄ってしまう。
朝シャンは37度の少しぬるめのお湯って決めてた私にはこれは大きな試練なのだ。
「……あぁやっぱムリムリ! もうダメ! ギブ! 後でお湯沸かしてもらう! やっぱ水でシャワーとか無理! ごめんなさいメイドさん! 今日も甘えちゃいます!」
蛇口を締めてドタバタとバスルームを飛び出すと、入り口脇に置かれたふかふかのバスタオルを身体に巻き付け蹲る。
カチカチと歯が鳴る。
「だ、だんでこんな冷だいのよもぉー」
歯の根が噛み合わず上手く喋れない。
はぁはぁと両手に息を吹きかける。
毛並みの柔らかなバスタオルのおかげで少しずつ身体が温もりを取り戻し始めると、私はゆっくり立ち上る。
小さめのタオルを束で取り上げ、びちゃびゃちゃに濡れた床にばらばらと撒き、水を吸わせ拭き取る。
「エロス様? 沐浴ですか?」
ん?
振り返るとさっきのイケメン。もちろん全裸。
私と同じでシャワーを浴びに来たのだろう。
そしてこのイケメンは私のように音を上げることなく冷水シャワーで身体を洗い流すのだ
「先に済まされてしまったのですね。私も御一緒したかったです。起こしてくだされば御一緒できたのに」
残念そうに呟くイケメン。
「それにしても、まさかエロス様から夜伽に誘っていただけるなんて、私はこの上ない幸せ者です。一生の想い出にします」
今度は露骨にテレるイケメン。
夜伽って何だ?
「いや、何言ってんのかよく分かんないんだけど、一緒に冷水シャワーとかムリだし。今日こそはって思ったけど、やっぱムリだったからこれからメイドさんにお風呂お願いしようと思ってるとこだから」
「え?」
「ん?」
「え?」って何よ。何をそんなに驚くことがあるのよ。
こちとら身体が冷えきってるんだから暖めるに決まってるじゃない。何を驚くことがあるってのよ。
私が頭を傾けていると、イケメンが怪訝そうな顔で口を開く。
「エロス様は今から陛下へ謁見なさるのでは? 国境近くに現れた魔獣討伐へ向かうのは午後からですので、エロス様はその前に陛下へ出立の挨拶をなさるのだとばかり」
んー?
なんかソレ聞いたことあるような。昨日のパーティーでもみんな魔獣がナントカって言ってたような?
「……ねぇちょっとイケメンさん、一つ聞いていい?」
「イケメンさん? 私のことですか?」
「ここには私とアンタ以外に誰もいないでしょーが」
「は、はい。何でございましょう」
「あのさ、その、魔獣って、何?」
ズキッ!!!
突然の激痛。
強烈な。気が遠くなるような。
一瞬で気が持っていかれるような激しい痛みと眩暈が。
「あ、ぁ……ヤバ……」
膝から崩れ落ちる。
「エロス様!? いかがされました! エロスさ……! エ……スさ……! …………!!」
私を呼ぶ声が遠ざかる。
サヨナラ、イケメンさん。
どうやら『交替』の時間みたい。
筋骨隆々のイケメン。
「……あー、またヤっちゃったかぁー」
昨晩のことは覚えてない。
いや、なんかのでっかいパーティー会場にいたのは覚えてる。すごいごちそうとか、高そうなお酒とか、金持ちそうな人たちがたくさんいたこととかも。
ただ、高そうなお酒を近くにいたイケメンと乾杯した後、その先のことは一つも思い出せない。
乾杯したイケメンが、私の隣で寝息を立ててるこのイケメンではないことは確かだけど。
「あー、またエロっちに怒られちゃうかなー。怒られるだろうなー。また手紙もらっちゃうんだろうなー」
ま、良いか。
そう気持ちをサクッと切り替えて、ベッドから下りると壁に掛かっている姿見の前に立つ。
「うん。今日も最高に美人だ。エロっちに感謝感謝♪」
私は一糸まとわぬ姿、つまり全裸で仁王立ちし、姿見で全身をくまなくチェックする。
引き締まった二の腕と腹筋。健康そうな肌の色ツヤ。張りのある豊満なおっぱい。ふっくらと大きいのに重力に逆らいキュッと持ち上がったお尻。そのお尻を恥じらい隠すように腰まで伸びた金色のさらツヤな髪の毛は、朝陽でキラキラと輝いている。
くっきり二重にスッとした鼻筋、透き通った海のような色素の薄い瞳。
そして凛と引き締まった唇。
うん。私の身体は本物の美人だ。
姿見を前に私はうんうんと頷く。
鏡に写った自身の姿を何度も確認し、今日も美しい自分を堪能、十二分に満足すると、そのまま大手を振ってバスルームへと向かう。
高級そうな家具や内装に彩られた部屋を出て、廊下を通りバスルームに着くと、浴室の壁に取り付けられた蛇口のようなものを覚悟を決めて思い切りひねる。
「うっ……ひぃ……! 冷たぁ!」
シャワーヘッドのようなそうでないような、ホースの先にミラーボールを取り付けたような歪な器具から冷水が溢れ飛び散る。
「あああああ! つべたいぃぃぃぃ! 暖かいシャワーが浴びたぁいいぃぃぃぃぃ!」
この時だけは私は相当な覚悟で挑む。
身体を打つ凍えるような飛沫。
心臓までギュッと引き締まるような冷たさに、仕方ないと分かっていても眉間にしわが寄ってしまう。
朝シャンは37度の少しぬるめのお湯って決めてた私にはこれは大きな試練なのだ。
「……あぁやっぱムリムリ! もうダメ! ギブ! 後でお湯沸かしてもらう! やっぱ水でシャワーとか無理! ごめんなさいメイドさん! 今日も甘えちゃいます!」
蛇口を締めてドタバタとバスルームを飛び出すと、入り口脇に置かれたふかふかのバスタオルを身体に巻き付け蹲る。
カチカチと歯が鳴る。
「だ、だんでこんな冷だいのよもぉー」
歯の根が噛み合わず上手く喋れない。
はぁはぁと両手に息を吹きかける。
毛並みの柔らかなバスタオルのおかげで少しずつ身体が温もりを取り戻し始めると、私はゆっくり立ち上る。
小さめのタオルを束で取り上げ、びちゃびゃちゃに濡れた床にばらばらと撒き、水を吸わせ拭き取る。
「エロス様? 沐浴ですか?」
ん?
振り返るとさっきのイケメン。もちろん全裸。
私と同じでシャワーを浴びに来たのだろう。
そしてこのイケメンは私のように音を上げることなく冷水シャワーで身体を洗い流すのだ
「先に済まされてしまったのですね。私も御一緒したかったです。起こしてくだされば御一緒できたのに」
残念そうに呟くイケメン。
「それにしても、まさかエロス様から夜伽に誘っていただけるなんて、私はこの上ない幸せ者です。一生の想い出にします」
今度は露骨にテレるイケメン。
夜伽って何だ?
「いや、何言ってんのかよく分かんないんだけど、一緒に冷水シャワーとかムリだし。今日こそはって思ったけど、やっぱムリだったからこれからメイドさんにお風呂お願いしようと思ってるとこだから」
「え?」
「ん?」
「え?」って何よ。何をそんなに驚くことがあるのよ。
こちとら身体が冷えきってるんだから暖めるに決まってるじゃない。何を驚くことがあるってのよ。
私が頭を傾けていると、イケメンが怪訝そうな顔で口を開く。
「エロス様は今から陛下へ謁見なさるのでは? 国境近くに現れた魔獣討伐へ向かうのは午後からですので、エロス様はその前に陛下へ出立の挨拶をなさるのだとばかり」
んー?
なんかソレ聞いたことあるような。昨日のパーティーでもみんな魔獣がナントカって言ってたような?
「……ねぇちょっとイケメンさん、一つ聞いていい?」
「イケメンさん? 私のことですか?」
「ここには私とアンタ以外に誰もいないでしょーが」
「は、はい。何でございましょう」
「あのさ、その、魔獣って、何?」
ズキッ!!!
突然の激痛。
強烈な。気が遠くなるような。
一瞬で気が持っていかれるような激しい痛みと眩暈が。
「あ、ぁ……ヤバ……」
膝から崩れ落ちる。
「エロス様!? いかがされました! エロスさ……! エ……スさ……! …………!!」
私を呼ぶ声が遠ざかる。
サヨナラ、イケメンさん。
どうやら『交替』の時間みたい。
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