上 下
2 / 10

+2.

しおりを挟む

 へ?

 残りの一ヶ月をこいつに……?

 浅田ってば。
 また、変なこと、言ってるし。


「は? どゆこと?」

「そのまんま。ね、いいでしょ。先輩の残りの一ヶ月、ずっとオレ、そばにいたいから」


 うーん。

 いくらあたしが卒業するからって、
 そこまで言われるようなことか?

 なーんて、
 疑問が浮かんだけど。


「お願い」


 うるうるキラキラの瞳で、じっと見つめられてしまって。


「うー、負けた! いいよ」

「ほんと~! やった!」


 あたしと試合して勝てたことないのに。
 彼のこういうとこに弱いせいか、つい甘やかしてしまった。


「じゃさ」

「ん?」

「今日、先輩と一緒帰っていい?」

「いーけど、方向どっち?」

「えへへ、先輩と同じほうだから。途中まででいいから、ね」


 そんなこんなで、ルンルンと浅田があたしの手を引っ張る。


「あ! こらっ」

「いーじゃん、いーじゃん。帰ろ?」


 そして、あたしはまた、彼を甘やかしてしまうのだった。



***


「おはよー!」

「はいはい、おはよう」


 登校して。
 校門の前に浅田。

 あたしを見つけたら、
 小走りで寄ってくる。


「せーんぱいっ」

「なんだよ、もー。浅田は朝から全開すぎ」

「全開って何が?」

「浅田が全開」

「へぇ……?」


 自覚、ナシですか。


「あんたさぁ、ほんと、あたしのコト、好きだよねぇ」

「え? あ、うん。そーだけど?」


 浅田はあたしを見下ろしながら、うなづいた。

 悔しいけど浅田って、一年のときは、あたしより少し背が高いくらいだったのに、
 今じゃ並んでて、あたしがやつを見上げている。


 そーいや、
 足も長くてスタイルもいいし、
 姿勢もすごく凛としていていい。

 女子に人気なんだろーなってのは、ひしひしと感じてるけど、
 そういう話、聞いたこと、ないんだよな~。


「ね、浅田」

「なに?」

「浅田ってさ、好きな人いないの?」

「先輩!」

「そこで即答するな、ストーカー! そーいう憧れの好きじゃなくて、恋愛の好きだからね?」

「あー、そっかぁ」


 浅田は少し考え込む。


「ヒミツ」


 こくんと小首をかしげて、そう言った。


「なんじゃそりゃ」


 あたしは、出鼻くじかれた感じ。

 だって、こいつ、あたしに隠し事なんてしたコトなかったから。


「べつに誰って聞いてるわけじゃないんだけど」

「おっ、先輩、気になるの? オレのプライベート事情」

「べつに、そんなわけじゃ……」

「わかった! じゃあ、今度、デートして」

「は?」


 デート?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

処理中です...