それからきっと、恋になる【百合】

✿2.それからきっと、恋になる

16.

「はーっ、間に合った!!」
　バス停。
　まだバスが来るまで五分ある。
　ダッシュして、後悔。
　荒れる呼吸を正そうとして深呼吸するわたしは、
　お姉ちゃんに睨にらまれる。

「まったく美希に合わせてると毎日、遅刻だわ」
「何よ!　間に合ったじゃない!!」
「そうだけど、寝坊したでしょ!」
　いや、うん、本当にそうなので、
　何も言い返せないだけど。

「おはよ、由葵ゆき!」
「あ、リカ!」

　そんなお姉ちゃんに声をかけたのは、
　里佳子さん。
　今日も可愛い。

「今日、数学、小テストあるよ。
　ちゃんとやってきた?」
「げ」
「げって。やってないんでしょ～」
　ふふふと、ほがらかに笑う里佳子さんを見て、
　わたしもほっとする。

「おはよう、美希ちゃん」

　その笑顔がわたしに向けられる。

「あ、お、おはようございます」

　緊張して返す朝の挨拶。
　里佳子さんが何もなかったように
　くれる挨拶に、安心と、安堵。
　それから、ほんのちょっとのさみしさもあるけど。