振り回されて、先輩♡ 猛烈ガールとツンデレ男子

●６．なみだ

　あの日から、あたしは先輩の追いかけをやめた。

　ほんと、あんなに楽しかった生活がただ授業を受けに行くだけの単純作業のように思えてならない。

　バラ色だったのが一気に灰色。

　けれど。
　もう、あたしの都合だけで動くわけにはいかない。

　大好きな先輩に嫌な思いさせたくない。

　あたしがどんなにさみしくても。


　ガラガラガラ。

　昼休み。

　あたしのいる教室のドアが開いた。


「西宮、いるー?」


　先輩の声だ。
　……幻聴?

　先輩の顔が見られなくて、ついにあたし、幻聴を聞いた……わけではなくて。


「先輩っ!!」


　まぎれもなく先輩があたしの目の前に立っていた。

「先輩、どうしたんですか?」

　これくらいなら、声かけてもいいよね?

　先輩はとまどったようだったけど。

「別に?」

「え?」

「ただなんとなく、顔を見たかったから」


　先輩、優しい。

　あたしみたいにうざったいやつのこと、気にしてくれたんだ。

　逆に胸が苦しい。

「先輩……」

「今日、食券、買いそびれた。弁当、余ってたら、食わせて?」


　なにそれ。

「えっ」

　先輩が驚いて声を上げた。

　でも一番、驚いていたのは、あたし。


　ぽろぽろと涙が勝手に出てきて、とまらなかったからだ。