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ボッカイの戦い編

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「く、クルナ!!」 

 闇が恐れるかのように逃げて、空中で何かをしようとしている。

「は、はははは、キサマが私の攻撃をいクラ防いだとしてモ、この大地への全ての攻撃ヲ防ゲルか!?」

 星々が輝く夜空に闇が覆う。
 まるで彩色美豊かな世界を黒で塗りつぶすかのように見えた。
 奴を治療するには近づかなくてはいけないが、中庸の者は空が飛べるかどうか分からない。しかし、考えている間にシャギーリそのものが破壊されてしまうだろう。
 と、考えている俺をヒョイと掴んで一気に空へと駆け上らせた。

「タケミツ、帰ったらキミの世界の物語を聞かせてくれないか?」

 壊れかけのジェットパックを吹かしながらピリスはほほ笑んだ。

「ああ、もちろんだ。いつでも魔法協会会館へ来てくれ」
「……キミってやつは。さぁ、行き給え!」

 ジェットパックが壊れるもピリスは力を振り絞って俺をジャキの元へと届ける。

「や、ヤメロ!!」

 その表情は分かる。
 これから、こんなに太い魔杖という鍼を刺すのだ。
 髪の毛くらいの細さの普通のゴウ鍼でさえ、患者さんは怖がるのにだ。
 しかし、俺はジャキを殺すんじゃない。
 
 生かすのだ。
 
 見えるのは闇の中心にある場所【ツボ】だ。

「灸頭鍼!!」 

 ジャキのツボに鍼を突き刺した。
 火の玉は煙を上げジャキの闇を煌々と照らしていく。

「ぐああああああああああ」

 ジャキの身体が崩れていく、断末魔を上げ、苦悶の表情を浮かべている。
 カヤの顔で。

「っぐ!?」 

 瞬間、闇の塊から銀髪のカヤに戻った。
 視界が元に戻っている?
 腹に鈍い衝撃、蹴られた勢いで鍼を手放し地面に落下する。

「ギザマ、覚えデろよ! アタジが必ズ、殺す! 絶対にコロシテやるんだから!!」

 落ちていく俺の顔を睨みつけながら、ジャキは無数のカラスへと変身して去っていった。
 地面に落下寸前で、柔らかな感触に包まれる。
 とても毛深い。

「アニキーー!」 

 ああ、そう言えばあなたはライオンでしたね、どうりで毛深い。

「あ、ありがとう、ンドル」

 ……釈然としない。
 助けてもらってアレだが、ここはもう少しロマンティックな感じでないかな?

「――アンタ、アタシが『だーりーん』とでも言って受け止めると思ってたでしょ?」 

 高飛車な表情でカヤがこちらに近づいてきた。

「ふ・ざ・け・ん・な! さっきは迷惑かけたと思って咄嗟に庇ってあげたけど、今回は地面に落とす気まんまんだったんだから!」 

 いつも通りにキレながらカヤが詰め寄ってくる。

「……ジャキを仕留め損なったからか?」
「はぁぁぁ? ジャキとかいうアタシの二番煎じはどうでも良いの! それよりアンタは……こ、このアタシの、お、おしりの秘密を、みんなの前で喋ったのよ!!」

 今にもまたドラゴン化しそうな顔で俺を糾弾する。

「そ、それはゴメン、ちょっとテンション違っててさ、ついつい。でも、指摘したお陰で治ったんだろ? 痔」 

 角と牙が伸びそうな顔になったカヤをンドルとカイルが抑える。

「……大きい声で女子に言うなんて相変わらずサイテーよね、タケちゃんって」

 ぢとーっとした眼でパシーが見てくる。

「仕方ないさ、タケミツはデリカシーに欠けている人間だからね」
「ピリスには言われたくないが」 

 ふぅ、やれやれ、としたピリスの表情に心底イラっとする。

「……お兄ちゃん、お帰りなさい」

 アカネは包帯が巻かれた手を差し伸べてきた。
 その手を優しく握る。

「アカネのお陰だよ。みんなを守ってくれてありがとう。そして、これからもよろしくな」
「うん!!」

 花が咲いたかのような笑顔で抱き着いてくる……そして、ハァハァしている。
 全てが終わったわけではない。
 ジャキに止めを刺せなかったし、オオカワの今後の動向も気になる、ピリスは信用できるがエレメントアーミーが信用できるわけじゃない。
 みんなを守るためには(公社)ボッカイ魔法協会を今よりもっと強力な組織にしないといけない。 
 だが、それは1人で背負うものではない。
 ここにいる仲間たちと作りあげていくのだ。

「そういえば、オレッち気になってたんですけど! アニキって元の世界で何してたんっすか?」
「あー、鍼灸師って職業だったよ」
「真救師!! 真に救う者ってことですかい!? すげぇ!!」
「いや、そんな感じでは」
「ほぉ、流石、私が見込んだ男だけの事はある」
「そういう意味だったんだ! お兄ちゃん……かっこいい、ハァハァ」
「……だいぶ溜まってるな」
「アハッ、パーフェクトヒューマン系とかマジすごくない!? ワラえるw」
「これは、とんでもない方がいらしてくださったのですね。シャギ魔会をお任せしたいほどです」
「いや、いや、パシーとカイルさんちょっとバカにしてない?」
「ねぇ、アタシ、そういえば聞いて無かったんだけどさ」
「なんだよ、カヤ」
「それって、無資格じゃないわよね?」

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