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しがらみ編
ゴブリン野営地
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ボッカイの街から歩いて二時間くらいの場所にゴブリン野営地はある。
あれから詳しい話を冒険者ギルドのカイルから聞くと、元々その辺りには小さな村があったらしい。
それがいつの間にかゴブリンどもによって支配され、冒険者たちを派遣するも討伐成功には至らなかった。派遣するたびに想定よりも強さや規模が上がっており現在では数百人ほどの大集団となっているそうだ。冒険者ギルドやボッカイの魔術使いレベルではもはや太刀打ちが出来なくなっている。
エレメントアーミーに大きな借りを作りたくないパシーとしては、ある意味、(公社)ボッカイ魔法協会の活動を聞いて渡りに船と言った所だろう。
もっとも、カイルにとっても(公社)ボッカイ魔法協会に借りを作らず魔法使いが自ら討伐に名乗りを上げてくれるのだから日照りに雨といった心境か。
うーむ、あの食えない二人との付き合いは今後、苦労しそうだな。
「この辺で降りるわ、シウン」
カヤがそう告げると、魔法の絨毯は夜の森の中に着陸した。
道具ではなく生物だったのか。
真っ暗闇の森の中だが、カヤが俺の肩に手を置くと若干薄暗いが周囲が見えるようになる。暗視ゴーグル的な魔法か、なんでもありだな。
「……野営地……かなり近く……水のヴェールを張っておくよ」
アカネが手をかざすと薄い水の膜が半円状に広がった。
冒険者ギルドで姿を隠していた魔法か。
「おお、すげぇ。物理はもちろん、魔術、エレメント、あらゆる干渉を遮る力。Sクラスの魔法は桁が違うぜ」
「そうなのか、ンドルもアカネから教えてもらえれば使えるようになるんじゃないの?」
「おいおい……まぁ、アニキは異世界人だから分かんねぇんだな。オレが使えんのはF~Aまでの魔術だけだ。Aクラス魔術だって数万人に一人使えるか分からん確立の才能だぜ? ケイラスが見えねぇ以上、魔力を捉えた魔法なんて使えるには、それこそ転生しなきゃありえん話だぜ」
なるほど、内側から見れば薄い水の膜にしか見えないが、身を隠すだけでなく防御機能としても桁違いなのだな。
いつも接していると内気な少女(少年)にしか見えないアカネも戦闘が始まる場所では、歴戦の賢者のように頼もしく見える。
「お兄ちゃんはボクが守るから大丈夫だよ!」
「ああ、頼りにしてる」
「アンタねぇ……まったく、アカネやアタシにばかり頼らないで副会長ならそれなりに自分の身を守りなさい」
と言ってカヤが手をかざすと鉄で出来た剣が空間から現出した。
鉄の剣を手にして振ってみる。金属バットくらいの重さか。
「おお、何もない所から鉄の剣を錬成するたぁ、もはやどういう術式か見当もつかんぜ」
「金のマナから抽出した剣だからBランク相当の業物よ」
「Bランクの剣! 売れば一年分のハチミツ酒が飲めるですぜ! ……パシーさんへの借金もこれがあれば」
羨望の眼差しで見られている剣を同じように作ってもらった鞘に納める。
ハチミツ酒の価値は分からないが、それなりの価格になるってことだよな。
「この剣を沢山作って売れば、資金に困ることが無いということか」
「何言ってんの? ケイラスにお借りしている剣よ。売るわけないし、必要が無くなればケイラスへお帰りになっていただくに決まっているでしょ」
うむ、チート娘だがルールはあるのだな。
魔法使いのルールが軋轢を生むこともあるが秩序を保っている側面もある。
なんでもバランスが大事だよな。
暗視ゴーグル魔法と水のヴェールのお陰か野営地へと続くケモノ道も難なく進めた。
「ここが野営地……これマジか」
ゴブリン野営地を見下ろせる高台に着くと異様な光景が広がっていた。
木の柵、木の監視塔に木の砦、大規模なキャンプを想像していたが、実際は木で出来ているとは言え要塞化している。
ゴブリン達も腰ミノと棍棒程度の装備と考えていたが、革の鎧と鉄の剣を装備していたり、魔術使いのような恰好しているのもいたり、この世界で初めて会ったイビルベア並みの巨大ゴブリンも四体ほどいる。
明らかにどこかの街に戦争を仕掛けられるほどの軍勢に仕上がっていた。
あれから詳しい話を冒険者ギルドのカイルから聞くと、元々その辺りには小さな村があったらしい。
それがいつの間にかゴブリンどもによって支配され、冒険者たちを派遣するも討伐成功には至らなかった。派遣するたびに想定よりも強さや規模が上がっており現在では数百人ほどの大集団となっているそうだ。冒険者ギルドやボッカイの魔術使いレベルではもはや太刀打ちが出来なくなっている。
エレメントアーミーに大きな借りを作りたくないパシーとしては、ある意味、(公社)ボッカイ魔法協会の活動を聞いて渡りに船と言った所だろう。
もっとも、カイルにとっても(公社)ボッカイ魔法協会に借りを作らず魔法使いが自ら討伐に名乗りを上げてくれるのだから日照りに雨といった心境か。
うーむ、あの食えない二人との付き合いは今後、苦労しそうだな。
「この辺で降りるわ、シウン」
カヤがそう告げると、魔法の絨毯は夜の森の中に着陸した。
道具ではなく生物だったのか。
真っ暗闇の森の中だが、カヤが俺の肩に手を置くと若干薄暗いが周囲が見えるようになる。暗視ゴーグル的な魔法か、なんでもありだな。
「……野営地……かなり近く……水のヴェールを張っておくよ」
アカネが手をかざすと薄い水の膜が半円状に広がった。
冒険者ギルドで姿を隠していた魔法か。
「おお、すげぇ。物理はもちろん、魔術、エレメント、あらゆる干渉を遮る力。Sクラスの魔法は桁が違うぜ」
「そうなのか、ンドルもアカネから教えてもらえれば使えるようになるんじゃないの?」
「おいおい……まぁ、アニキは異世界人だから分かんねぇんだな。オレが使えんのはF~Aまでの魔術だけだ。Aクラス魔術だって数万人に一人使えるか分からん確立の才能だぜ? ケイラスが見えねぇ以上、魔力を捉えた魔法なんて使えるには、それこそ転生しなきゃありえん話だぜ」
なるほど、内側から見れば薄い水の膜にしか見えないが、身を隠すだけでなく防御機能としても桁違いなのだな。
いつも接していると内気な少女(少年)にしか見えないアカネも戦闘が始まる場所では、歴戦の賢者のように頼もしく見える。
「お兄ちゃんはボクが守るから大丈夫だよ!」
「ああ、頼りにしてる」
「アンタねぇ……まったく、アカネやアタシにばかり頼らないで副会長ならそれなりに自分の身を守りなさい」
と言ってカヤが手をかざすと鉄で出来た剣が空間から現出した。
鉄の剣を手にして振ってみる。金属バットくらいの重さか。
「おお、何もない所から鉄の剣を錬成するたぁ、もはやどういう術式か見当もつかんぜ」
「金のマナから抽出した剣だからBランク相当の業物よ」
「Bランクの剣! 売れば一年分のハチミツ酒が飲めるですぜ! ……パシーさんへの借金もこれがあれば」
羨望の眼差しで見られている剣を同じように作ってもらった鞘に納める。
ハチミツ酒の価値は分からないが、それなりの価格になるってことだよな。
「この剣を沢山作って売れば、資金に困ることが無いということか」
「何言ってんの? ケイラスにお借りしている剣よ。売るわけないし、必要が無くなればケイラスへお帰りになっていただくに決まっているでしょ」
うむ、チート娘だがルールはあるのだな。
魔法使いのルールが軋轢を生むこともあるが秩序を保っている側面もある。
なんでもバランスが大事だよな。
暗視ゴーグル魔法と水のヴェールのお陰か野営地へと続くケモノ道も難なく進めた。
「ここが野営地……これマジか」
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ゴブリン達も腰ミノと棍棒程度の装備と考えていたが、革の鎧と鉄の剣を装備していたり、魔術使いのような恰好しているのもいたり、この世界で初めて会ったイビルベア並みの巨大ゴブリンも四体ほどいる。
明らかにどこかの街に戦争を仕掛けられるほどの軍勢に仕上がっていた。
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