52 / 58
ドッペルゲンガー 変化②
しおりを挟む「あれ?雄一?」
思わず淳士が呟くと、それを聞いた響香も顔を上げ淳士の視線の先を追う。
「何処?見当たらないよ」
「いや、一瞬それらしき人が見えたような」
一瞬確かに雄一らしき人を見かけたが、街行く人々に紛れすぐに見失ってしまった。
「何?私が相手じゃ不満かもしれないけどそんなに雄一君が恋しい?」
少し不満気に響香が尋ねると慌てて淳士は頭を振る。
「いやいや、そんな事ないって響香と二人で美味しいケーキが食べれて俺は幸せです」
少しわざとらしく言って笑って見せたが響香は微かに笑みを浮かべつつ不満そうに口を尖らせる。
その後他愛もない会話を重ね、二人は喫茶店を後にした。
「あっ、ちょっと寒いかも」
店を出ると少し冷たい秋風が吹き、二人の距離を僅かに詰めさせる。だが互いに触れる事もない微妙な距離に淳士はもどかしさを覚えた。
「本物のカップルだったら手ぐらい繋ぐんだろうけどね」
淳士の心を見透かすように響香が笑って言うと淳士が遠慮がちに手を伸ばす。
「カップル限定メニューも食べた事だし繋ぐか?」
「誰かに見られたらどうすんの?噂立つじゃん」
笑顔でそう言われ恥ずかしくなった淳士はすぐに手を引っ込めた。
だがすぐに響香はその手を握りしめる。
突然の事に驚き響香の顔を見つめるとはにかんだ笑顔を見せていた。
「でもいつも淳士君とは仲良く喋ってるからよく聞かれるし、今更噂されても私は気にしないけどね」
そう言って頬を赤らめる響香を見て、それは寒さのせいなのか、それとも照れているからなのかが淳士には分からなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
【実体験アリ】怖い話まとめ
スキマ
ホラー
自身の体験や友人から聞いた怖い話のまとめになります。修学旅行後の怖い体験、お墓参り、出産前に起きた不思議な出来事、最近の怖い話など。個人や地域の特定を防ぐために名前や地名などを変更して紹介しています。
不思議小話 ピンキリ
そうすみす
ホラー
軽い寄り道感覚で読める不思議な話。
自分自身や友人の体験を元に、ちょっと不思議な話を気の向くままに、少しばかり脚色と誇張を交えて書き連ねてゆきます。不定期に新話を投稿致しますので、皆様もお気の向く時にお立ち寄りください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる