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神社⑥
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私はハンディカムの録画を開始し、森の中へ入って行く。
草木の揺れる微かな物音や虫の音に少し怯えながら真っ暗な森の中を歩いて行く。
「さすがにちょっと怖いな」
思わず口をついて出た私の率直な気持ち。後ろにいる貴子の「ふふっ」と言う笑い声が微かに聞こえてきた。
「何か可笑しい?」
「ごめん、ごめん。姫華が素直に思った事口にするのあまりないからさ。ついね」
貴子はそう言って楽しそうな笑顔を見せる。
この状況下で笑っていられる貴子の神経が私には理解出来なかった。
そんな中、歩みを進めて行くと私達は朱色の鳥居に辿り着いてしまった。
「な、なんであるのよ!?」
思わずそんな言葉が口をついて出る。元々はこの場所を求めてやって来た。だがあったらあったで説明がつかない。私は背筋に寒気が走り、鳥居を前に立ち尽くしてしまう。
「さぁ進まなきゃ」
後ろから貴子に声を掛けられ私は恐る恐る足を踏み出し鳥居をくぐる。
そうして奥へと進んで行くとやはりお賽銭箱とやや朽ちた本殿がそこにはあった。
「……やっぱりあるじゃん」
私は呟き、ごくりと唾を飲み込む。
「さぁ姫華、せっかくだから何か願い事してみれば?」
「えっ? いや、でもこの前したし……」
「でもまだ叶ってないんでしょ? もう一回してみたら?」
戸惑う私に貴子はそう言って笑顔で促してくる。確かに私の願い事は叶ってはいない。寧ろ悪化しているようにも思った。
私は意を決して本殿に向かって歩き出した。その時だ――
「姫華、手水舎で手を清めないと。ほらカメラ持っててあげるから」
そう言って貴子は私からハンディカムを取り上げる。手水舎とは神社等で本殿に行くまでにある手を洗う場所であり杓子等も一緒に置かれてある事も多い。
参拝前に身の穢れを落とす意味があるらしいが、この前来た時はそんな事も忘れて参拝してしまっていた。
『だから願い事も叶わないんだろうか?』
そんな事を考えながら手水舎で前傾姿勢になって手を洗い体を起こすと目の前にあった鏡に自分が映し出される。
『本当に地味な女。せめてもうちょっと綺麗にならないかな……』
鏡に映る眼鏡を掛け化粧一つもしていない自分自身を見て憂鬱な気分になる。
「鏡越しでも私を撮らないで!」
私の背後から鏡越しにカメラを回す貴子に少しきつく当たってしまう。
私は自分の容姿があまり好きじゃない。寧ろ嫌いだ。だから鏡を覗く事もあまりなく、鏡越しに私の姿を撮影している貴子に思わず苛立ってしまったのだ。
「ごめん、ごめん。ほらお祈りして早く帰ろ」
貴子は右手を自らの顔の前で立てて笑顔を見せた。
本当は悪いのは私なんだ。貴子は悪気なんかないんだからそんな言い方しなくてもよかったのに……。
私は軽く自己嫌悪をしながら本殿の前に立ち、手を合わせ再び願い事をする。
その時、また温い風が吹き抜けた。
私は驚き周りを見渡すと、不思議そうに首を傾げた貴子がハンディカムを片手に持ち私の事を見つめていた。
草木の揺れる微かな物音や虫の音に少し怯えながら真っ暗な森の中を歩いて行く。
「さすがにちょっと怖いな」
思わず口をついて出た私の率直な気持ち。後ろにいる貴子の「ふふっ」と言う笑い声が微かに聞こえてきた。
「何か可笑しい?」
「ごめん、ごめん。姫華が素直に思った事口にするのあまりないからさ。ついね」
貴子はそう言って楽しそうな笑顔を見せる。
この状況下で笑っていられる貴子の神経が私には理解出来なかった。
そんな中、歩みを進めて行くと私達は朱色の鳥居に辿り着いてしまった。
「な、なんであるのよ!?」
思わずそんな言葉が口をついて出る。元々はこの場所を求めてやって来た。だがあったらあったで説明がつかない。私は背筋に寒気が走り、鳥居を前に立ち尽くしてしまう。
「さぁ進まなきゃ」
後ろから貴子に声を掛けられ私は恐る恐る足を踏み出し鳥居をくぐる。
そうして奥へと進んで行くとやはりお賽銭箱とやや朽ちた本殿がそこにはあった。
「……やっぱりあるじゃん」
私は呟き、ごくりと唾を飲み込む。
「さぁ姫華、せっかくだから何か願い事してみれば?」
「えっ? いや、でもこの前したし……」
「でもまだ叶ってないんでしょ? もう一回してみたら?」
戸惑う私に貴子はそう言って笑顔で促してくる。確かに私の願い事は叶ってはいない。寧ろ悪化しているようにも思った。
私は意を決して本殿に向かって歩き出した。その時だ――
「姫華、手水舎で手を清めないと。ほらカメラ持っててあげるから」
そう言って貴子は私からハンディカムを取り上げる。手水舎とは神社等で本殿に行くまでにある手を洗う場所であり杓子等も一緒に置かれてある事も多い。
参拝前に身の穢れを落とす意味があるらしいが、この前来た時はそんな事も忘れて参拝してしまっていた。
『だから願い事も叶わないんだろうか?』
そんな事を考えながら手水舎で前傾姿勢になって手を洗い体を起こすと目の前にあった鏡に自分が映し出される。
『本当に地味な女。せめてもうちょっと綺麗にならないかな……』
鏡に映る眼鏡を掛け化粧一つもしていない自分自身を見て憂鬱な気分になる。
「鏡越しでも私を撮らないで!」
私の背後から鏡越しにカメラを回す貴子に少しきつく当たってしまう。
私は自分の容姿があまり好きじゃない。寧ろ嫌いだ。だから鏡を覗く事もあまりなく、鏡越しに私の姿を撮影している貴子に思わず苛立ってしまったのだ。
「ごめん、ごめん。ほらお祈りして早く帰ろ」
貴子は右手を自らの顔の前で立てて笑顔を見せた。
本当は悪いのは私なんだ。貴子は悪気なんかないんだからそんな言い方しなくてもよかったのに……。
私は軽く自己嫌悪をしながら本殿の前に立ち、手を合わせ再び願い事をする。
その時、また温い風が吹き抜けた。
私は驚き周りを見渡すと、不思議そうに首を傾げた貴子がハンディカムを片手に持ち私の事を見つめていた。
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