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19:過去との遭遇(3)
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カフェから出る頃には雨が降っていた。
折り畳み傘を持っていたのだが、私たちは何となく、近くのコンビニで大きめのビニール傘を一つ買い、二人でその中に入った。
大志が傘を持っているので手を繋ぐことはできないが、傘の中は二人だけの空間のようで、手を繋いでいた時よりも距離が近く感じる。
ビニール傘の中は雨の音が少し大きく聞こえて、傘を伝って落ちてくる雨の雫がまるで二人の周りに見えない膜を張っているみたいなそんな感覚。
梅雨の時期はジメジメして嫌いだけど、今日は雨が降ってよかった気がする。
「あ、電話だ」
ホテルのロビーについてすぐ、兄から電話がかかってきた。
15時に結婚式、16時30分から披露宴のはずだから丁度終わった頃だろう。
そういえば、今日は楽し過ぎていつも送っている安否確認の連絡を怠っていた。きっとこの電話はその事について文句を言うための電話だ。
(出たくないなぁ)
お酒が入っているから多分、お説教は長くなる。しかし出ないと帰りの新幹線はおそらく地獄と化する。
私は渋々電話に出た。
「もしもし?お兄ちゃん?」
『…結?』
「あー、ごめんね。連絡忘れてて…。でもほら、大志と一緒だったから問題ないし、それに結婚式の邪魔しちゃ悪いかもとか思って…」
『結。ごめん。ごめんなぁ…本当にごめんなぁ…』
「ん?お兄ちゃん?」
『結ぃぃい。生きてるかぁー』
「生きてるけど、もしかして酔ってる?」
『ちょっと、酔ってはいない』
「それ絶対酔ってるじゃん」
電話越しに聞こえる兄の声は震えていて、まるで泣いているようだ。
私は首を傾げつつ、大志に目配せした。
「どうしたん?」
「なんかお兄ちゃんが変」
「変?」
「泣いてる気がする」
そう言うと、大志はちょっと変わってと奪い取るように私のスマホ取り、そのまま私の代わりに兄と電話し始める。
何やら真剣な表情で酔っ払いの相手をする彼に私は首を傾げた。
そして勝手に電話を切ると兄がこちらに来ると言い出した。
「え?どうして?」
「どうしてもや。悪いけどフロントでもう一人追加で泊まれるか交渉しておいて欲しい」
「それはいいけど。迎えってどこまで?」
「兄貴の友達がここまでタクシーで送ってくれるらしいから。俺は外で待っとくわ」
「…わかった」
少し焦っているようなそんな雰囲気を醸し出しながら、彼はロビーを出た。
私は仕方なくフロントにもう一人泊まれるか交渉しに行く。
まあ、ツインをふた部屋とっていたから追加料金を払えばなんとかなると思う。
「お兄ちゃん、どうしたのかな?」
結婚式で何かあったのかもしれない。本当に昼ドラ展開でもあったのだとしたら、私はなんと声を掛ければいいのだろう。
折り畳み傘を持っていたのだが、私たちは何となく、近くのコンビニで大きめのビニール傘を一つ買い、二人でその中に入った。
大志が傘を持っているので手を繋ぐことはできないが、傘の中は二人だけの空間のようで、手を繋いでいた時よりも距離が近く感じる。
ビニール傘の中は雨の音が少し大きく聞こえて、傘を伝って落ちてくる雨の雫がまるで二人の周りに見えない膜を張っているみたいなそんな感覚。
梅雨の時期はジメジメして嫌いだけど、今日は雨が降ってよかった気がする。
「あ、電話だ」
ホテルのロビーについてすぐ、兄から電話がかかってきた。
15時に結婚式、16時30分から披露宴のはずだから丁度終わった頃だろう。
そういえば、今日は楽し過ぎていつも送っている安否確認の連絡を怠っていた。きっとこの電話はその事について文句を言うための電話だ。
(出たくないなぁ)
お酒が入っているから多分、お説教は長くなる。しかし出ないと帰りの新幹線はおそらく地獄と化する。
私は渋々電話に出た。
「もしもし?お兄ちゃん?」
『…結?』
「あー、ごめんね。連絡忘れてて…。でもほら、大志と一緒だったから問題ないし、それに結婚式の邪魔しちゃ悪いかもとか思って…」
『結。ごめん。ごめんなぁ…本当にごめんなぁ…』
「ん?お兄ちゃん?」
『結ぃぃい。生きてるかぁー』
「生きてるけど、もしかして酔ってる?」
『ちょっと、酔ってはいない』
「それ絶対酔ってるじゃん」
電話越しに聞こえる兄の声は震えていて、まるで泣いているようだ。
私は首を傾げつつ、大志に目配せした。
「どうしたん?」
「なんかお兄ちゃんが変」
「変?」
「泣いてる気がする」
そう言うと、大志はちょっと変わってと奪い取るように私のスマホ取り、そのまま私の代わりに兄と電話し始める。
何やら真剣な表情で酔っ払いの相手をする彼に私は首を傾げた。
そして勝手に電話を切ると兄がこちらに来ると言い出した。
「え?どうして?」
「どうしてもや。悪いけどフロントでもう一人追加で泊まれるか交渉しておいて欲しい」
「それはいいけど。迎えってどこまで?」
「兄貴の友達がここまでタクシーで送ってくれるらしいから。俺は外で待っとくわ」
「…わかった」
少し焦っているようなそんな雰囲気を醸し出しながら、彼はロビーを出た。
私は仕方なくフロントにもう一人泊まれるか交渉しに行く。
まあ、ツインをふた部屋とっていたから追加料金を払えばなんとかなると思う。
「お兄ちゃん、どうしたのかな?」
結婚式で何かあったのかもしれない。本当に昼ドラ展開でもあったのだとしたら、私はなんと声を掛ければいいのだろう。
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