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第38話 報告
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町から近いところで襲われたという事も有り、進み出してから10分程で町に着いた。国境に近い町という事に加え、温泉街がある観光地という事もあり、100人程が門の前で町に入るのを待っていた。普段であれば目立ちたくない為、市井に紛れ、普通の人の様に並ぶのだが今回はそういう訳にはいかない。馬車を降りフレンダを先頭に堂々と列の先頭に向かって行った。
当然の如く誰何を受けた。誰何してきた若い兵士の目の前にフレンダは王族の証を見せた。すると慌てた若い兵士がフレンダに謝罪をした。
「こ、これは失礼致しました。今すぐ上の者を連れて参りますので、少しお待ちください」
気の毒な位に慌てて詰所の方に走って行った。ほどなくして不機嫌そうな顔の隊長と思われる者が、先の若い兵士を伴って現れた。そしてフレンダの顔を見るやいなや顔が強張った。
「こ、これはナタリー様!失礼いてこまぢましてございましゅ」
かなり慌てていたのか、狼狽えていたのか舌を噛んだようであった。
とりあえず詰所の中に入り、コウとフレンダの二人で話をする事になった。とリトとクルルには、その間に馬の世話及び町に入る手続きをして貰った。王族とはいえ、中に入る者の名前だけは報告しなければならない。その為、二人が残ったのだ。
フレンダは落ち着きなさいと言ってから話を始めた。
「深刻かつ重要な話があるので、今すぐ領主に取次なさい。ついに魔王軍の幹部が現れました」
そしてフレンダがコウに頷いたので、コウは手に持っていた袋からサザリーの首を出し、気の毒な隊長の目の前に出して見せた。隊長は部下の前にも関わらずヒィーという情けない悲鳴をあげていた。そして魔王軍の幹部の首だと言う事を認識したようだ。
「おお!これは、そんなまさか。は、いえ、分かりました。今すぐ領主の所に向かいましょう」
そして先の若い兵士に緊急面談の札と、口頭で領主に伝える用件を託し、先に向かわせた。緊急面談の札は今までに1度も使われた事がない。この札を使えば例え領主が貴族や王族と面談をしていても、女性を愛でている最中であっても即刻中止し、兵士からの報告を受けて対処しなければならない。それを使うという事自体がかなり異常事態なのである。
隊長は数名の部下を伴い、馬に乗ってフレンダ達を案内する事になった。領主の館に向かう最中、領主の館でどういう行動をとるかフレンダが皆に説明していた。
先触れを出していたおかげで、フレンダ達はすんなりと領主の館の入口に着いた。玄関には案内の執事が出迎え、執事の案内で領主の部屋の入り口まで来た。隊長に少し待ってくださいと言われ、隊長が先に報告をしに行った。
中から会話が聞こえて来た。
「分かっておろうな?これがどういう事かというのは?もしもくだらぬ事であればお前の首など簡単に飛ぶのだぞ!」
「はっ。勿論でございます」
そうして不機嫌そうな領主が体調を詰問していたが、フレンダは入室許可を持たずに部屋の中に入っていった。
「私の話を聞いて頂ければ事の深刻さが分かると思いますわ」
そしてフレンダの顔を見た途端に領主の顔が強張った。
はっとなりフレンダの前に跪き、恭しくその小さい手を取りキスをした。淑女に対する挨拶だ。
「これは失礼いたしました。ナタリー様、まさか貴女様がおいでとは思いませんでしたので失礼いたしました。それよりも如何されたのですか?
出発時と同行者が違っておりますが?」
盗賊に襲われ、そこをコウに助けられた事、今は学園に戻るべく首都を目指している旨を説明していった。また、サザリーの首を見せながら話を続けたので、可哀想なくらいに領主の顔は青くなっていた。
「見ての通り魔王軍の将校が兵を率いて出没し、なんとか私達で打ち取りましたが、急ぎ王都に報告し、対処を求めた方が良いと思います」
領主は少し考えた後、フレンダに返答した
「わかりました。その、ナタリー様、大変申し訳ありませんが王都まで護衛を付けますので、ナタリー様の方から報告して頂けませんでしょうか?勿論書状は私の方で作ります。その、王族とはいえ、他国のお方ですから、自国の領主の書状が有った方が説得力がありましょう。また本来であれば私が王都に赴くべき所なのでありましょうが、今聞いたお話ですと、魔王軍の将校が現れたという事ですので、また魔王軍が攻めてくるやもしれませんから、急ぎ防衛体制を強化し、町を守らねばなりません」
「分かりました。勿論そうでしょうとも」
「ありがとうございます。さすがに今日これから王都に向かうという訳にも参りませんし、護衛の者の準備があります。ですので明日の朝の出発になりますが、宜しかったでしょうか?それと今日の宿はどうなされますか?」
「そうですわね。今は身分を隠し冒険者として活動している事にしていますので、宿は一般の宿を取ろうと思っております。万が一宿が取れなかった場合はお世話になるかも分かりませんが、あまり目立ちたくないのでこの後は宿の方に向かいますわ」
「分かりました。それでは目立ちたくないという事ですので、お手数ですが明日の朝またこちらにいらして頂けますでしょうか?護衛の者と合流して出発にしたいと思います。それとそういう事でしたら少々お待ちください。今手形をお渡ししますので。私の方がギルドに依頼を出した時等に、依頼を受けた者が屋敷に入る為の手形を発行しておりますので、これであれば見た目さえ貴族の様に見えるような格好でなければ目立たないかと思います。しかし、ナタリー様、貴女様のようにお美しい方々が目立たない様にするのには無理があるかと思いますぞ」
最後は独り言だったが、そうやって手形を渡され、護衛の者や出発の準備を明日の朝までにしてくれるといい、フレンダ達は領主の館を引き揚げ、宿屋街に向かうのであった。
当然の如く誰何を受けた。誰何してきた若い兵士の目の前にフレンダは王族の証を見せた。すると慌てた若い兵士がフレンダに謝罪をした。
「こ、これは失礼致しました。今すぐ上の者を連れて参りますので、少しお待ちください」
気の毒な位に慌てて詰所の方に走って行った。ほどなくして不機嫌そうな顔の隊長と思われる者が、先の若い兵士を伴って現れた。そしてフレンダの顔を見るやいなや顔が強張った。
「こ、これはナタリー様!失礼いてこまぢましてございましゅ」
かなり慌てていたのか、狼狽えていたのか舌を噛んだようであった。
とりあえず詰所の中に入り、コウとフレンダの二人で話をする事になった。とリトとクルルには、その間に馬の世話及び町に入る手続きをして貰った。王族とはいえ、中に入る者の名前だけは報告しなければならない。その為、二人が残ったのだ。
フレンダは落ち着きなさいと言ってから話を始めた。
「深刻かつ重要な話があるので、今すぐ領主に取次なさい。ついに魔王軍の幹部が現れました」
そしてフレンダがコウに頷いたので、コウは手に持っていた袋からサザリーの首を出し、気の毒な隊長の目の前に出して見せた。隊長は部下の前にも関わらずヒィーという情けない悲鳴をあげていた。そして魔王軍の幹部の首だと言う事を認識したようだ。
「おお!これは、そんなまさか。は、いえ、分かりました。今すぐ領主の所に向かいましょう」
そして先の若い兵士に緊急面談の札と、口頭で領主に伝える用件を託し、先に向かわせた。緊急面談の札は今までに1度も使われた事がない。この札を使えば例え領主が貴族や王族と面談をしていても、女性を愛でている最中であっても即刻中止し、兵士からの報告を受けて対処しなければならない。それを使うという事自体がかなり異常事態なのである。
隊長は数名の部下を伴い、馬に乗ってフレンダ達を案内する事になった。領主の館に向かう最中、領主の館でどういう行動をとるかフレンダが皆に説明していた。
先触れを出していたおかげで、フレンダ達はすんなりと領主の館の入口に着いた。玄関には案内の執事が出迎え、執事の案内で領主の部屋の入り口まで来た。隊長に少し待ってくださいと言われ、隊長が先に報告をしに行った。
中から会話が聞こえて来た。
「分かっておろうな?これがどういう事かというのは?もしもくだらぬ事であればお前の首など簡単に飛ぶのだぞ!」
「はっ。勿論でございます」
そうして不機嫌そうな領主が体調を詰問していたが、フレンダは入室許可を持たずに部屋の中に入っていった。
「私の話を聞いて頂ければ事の深刻さが分かると思いますわ」
そしてフレンダの顔を見た途端に領主の顔が強張った。
はっとなりフレンダの前に跪き、恭しくその小さい手を取りキスをした。淑女に対する挨拶だ。
「これは失礼いたしました。ナタリー様、まさか貴女様がおいでとは思いませんでしたので失礼いたしました。それよりも如何されたのですか?
出発時と同行者が違っておりますが?」
盗賊に襲われ、そこをコウに助けられた事、今は学園に戻るべく首都を目指している旨を説明していった。また、サザリーの首を見せながら話を続けたので、可哀想なくらいに領主の顔は青くなっていた。
「見ての通り魔王軍の将校が兵を率いて出没し、なんとか私達で打ち取りましたが、急ぎ王都に報告し、対処を求めた方が良いと思います」
領主は少し考えた後、フレンダに返答した
「わかりました。その、ナタリー様、大変申し訳ありませんが王都まで護衛を付けますので、ナタリー様の方から報告して頂けませんでしょうか?勿論書状は私の方で作ります。その、王族とはいえ、他国のお方ですから、自国の領主の書状が有った方が説得力がありましょう。また本来であれば私が王都に赴くべき所なのでありましょうが、今聞いたお話ですと、魔王軍の将校が現れたという事ですので、また魔王軍が攻めてくるやもしれませんから、急ぎ防衛体制を強化し、町を守らねばなりません」
「分かりました。勿論そうでしょうとも」
「ありがとうございます。さすがに今日これから王都に向かうという訳にも参りませんし、護衛の者の準備があります。ですので明日の朝の出発になりますが、宜しかったでしょうか?それと今日の宿はどうなされますか?」
「そうですわね。今は身分を隠し冒険者として活動している事にしていますので、宿は一般の宿を取ろうと思っております。万が一宿が取れなかった場合はお世話になるかも分かりませんが、あまり目立ちたくないのでこの後は宿の方に向かいますわ」
「分かりました。それでは目立ちたくないという事ですので、お手数ですが明日の朝またこちらにいらして頂けますでしょうか?護衛の者と合流して出発にしたいと思います。それとそういう事でしたら少々お待ちください。今手形をお渡ししますので。私の方がギルドに依頼を出した時等に、依頼を受けた者が屋敷に入る為の手形を発行しておりますので、これであれば見た目さえ貴族の様に見えるような格好でなければ目立たないかと思います。しかし、ナタリー様、貴女様のようにお美しい方々が目立たない様にするのには無理があるかと思いますぞ」
最後は独り言だったが、そうやって手形を渡され、護衛の者や出発の準備を明日の朝までにしてくれるといい、フレンダ達は領主の館を引き揚げ、宿屋街に向かうのであった。
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