忘却の艦隊

KeyBow

文字の大きさ
上 下
36 / 85

第36話 ダレン駄々をこねる

しおりを挟む
 ミカと少将は銃撃戦を繰り広げた。少将は自分がいかに艦隊指揮に向いているか、権利があるかを強調しながらミカを狙った。
 ミカは少将の言葉に怒りながら応戦した。
 しかし、ミカの予測に反し、少将は経験豊富だった。

 ミカの銃は停止解除がされて発砲できたが、少将の服は特殊繊維で作られ、電子銃の威力を無効化していた。
 服に当てては意味がなく、生身の部分を狙わなければだった。
 それもあり少将がミカを圧倒し、ミカは次第に追い詰められていった

「くそっ!弾がなくなる!」

 ミカは弾倉を確認した。
 正確にはエネルギーパックだ。 
 何故か変えのエネルギーパックは弾倉と言われている。
 ミカは射撃の腕は宙兵隊の中では良い方で、それなりの腕前の持ち主だ。
 それに引き換え少将は実弾を発射可能な銃を持っているほどの銃マニアで、射撃も趣味でもあり達人級だった。
 しかもこちらは対電子銃の防御はあるが、鉛の弾に対してはない。

「ほらほら、降参しなさいよ。あなたに勝ち目がないわ。私はこの艦隊の真の指揮官であり、ダレン大佐よりも優秀で資格があるの。それにダレン大佐の女性問題にもうんざりしているのよ。私はこの艦隊を変えるために戦っているのよ」

 少将は言った。

「黙れ!アンタはただの反逆者だ!アンタに何の権利もない!アンタはダレンに敵わない!あなたはダレンの女性問題に嫉妬している?そんなの無いわ!あの人は女を抱く暇なんて無いわ!私が何度誘っても断るのよ!それにアンタではこの艦隊を御しきれなく、破滅に導く!自分のエゴのために戦っているだけよ!」

 ミカは胸を張り言ってのけた。

「そんなことを言っても無駄よ。私はすでに勝利を手に入れたも同然なのよ。私はダレン大佐を撃ったのよ。きっといま頃もう死んでいるわ」

 少将は下卑た表情で言った。

「嘘よ!ダレンは死なない!彼は生きている!彼は強いわ!」

「本当かどうか見てみなさいよ。彼の遺体があそこにあるわ」

 少将は指をさした。

「そこに・・・?」

 ミカは目を向けたその瞬間、少将が銃を撃った。

 バンッ!と銃声が鳴り響いた。

「きゃああああ!」

「やったわ!これで終わりよ!私の勝ちよ!馬鹿は引っ掛かるのよね!まあ乳臭い小娘だったこと!」

 ミカが倒れ、それを見た少将が高笑いをした。

 しかし、その笑顔も束の間だった。

「違うわ!これで終わりじゃないわ!私達の勝ちよ!」

 突然、他者の声が聞こえた。

「誰だ!?」

 少将が振り返った。

 そこにはノリコ艦長が立っていた。
 彼女は銃を構え、少将を狙っていた。

「ノリコ艦長・・・?あなたもここに・・・?」

 少将が驚いた。

「そうよ。私もここにいるわ。私も女子会に参加していたけど爆発音が聞こえたから中断したのよ。そして間に合ったわ!」

「ちっ!いけ好かない女め!邪魔をするな!」

 ノリコの言に少将が毒づいた。

「悔い改めなさい!終わりよ!」

 ノリコがそう言って銃を撃ち、バンッ!と銃声がこだました。

「ぐぎゃあああああ!」

 少将が倒れ、ノリコは笑う。

「やったわ!これで終わりよ!私達の勝ちよ!」

 ノリコも銃の名手だった。
 彼女は少将の手を撃ち抜き銃を落とさせ、彼女を捕らえて拘束した。
 士官は大抵申し訳程度にしか銃を扱えないが、ノリコは父親からみっちり仕込まれていたのだ。
 少将は士官の殆どがそうであるように、ノリコも大した腕を持たぬと決めつけていた。

「大佐!大佐!」

 ノリコはダレンに駆け寄った。

「ノリコ・・・君は・・・」

 ダレンは苦しそうにしていて、それを見てノリコが叫んだ。

「大佐、大丈夫ですか!?どこを撃たれたの!?」

「胸だ・・・血が出てる・・・ごひゅー、く、苦しい・・・息が・・・」

「大佐!血を止めます!誰か医療キットを持ってきてください!止血剤や包帯・・・」

「いや、待て!それよりも・・・俺は言いたいことがあるんだ」

「言いたいことですか?何ですか?」

 ノリコが聞いた。

「俺は・・・君に・・・」

 ダレンが続きを言おうとしたが、その時

「ピーピー!ピーピー!ピーピー!」

 どこからともなく警報音が鳴った。

「何!?これは何!?」

「これは医療ポットです。あなたの体調を検知して、自動的に起動しました。あなたは重症です。すぐに医療ポットに入ってください。医療ポットに入ればあなたの傷は治ります。医療ポットに入ってください。医療ポットに入ってください。医療ポットに入ってください!」

 医療ポットからの機械的な声が流れた。

「医療ポットだと・・・?そんなものがここにあるのか・・・?」

 ダレンが呆然としたが、輸送艦の艦長が現れた。

「そうです。この艦には医療ポットがあります。この艦の秘密の一つです。今は言えませんが、そのうち分かります。でも、今はそれよりも大事なことがあります。大佐、早く医療ポットに入ってください。それが一番です!ノリコ艦長も言ってください!」

「そうか・・・分かった。しかし、入らないと駄目か?」

 ダレンはノリコに肩を貸され医療ポットに近づいた。

「大佐・・・私も一緒に入りますから。怖くないですから」

 ノリコが言った。

「いや、君は無理しなくていい。君は怪我をしていないだろう。お、俺にも必要ない・・・」

 何故か、ダレンが面倒くさそうに言い、カプセルに入る事を拒否し始めた。

「では、私は一緒に・・・・って、そうですね。変な事を言いました。けど、入らないとですよ。肺をやられているはずよ」

 その頃、衝撃から回復したミカも現れ、何故か抵抗するダレンをノリコと一緒にカプセルに押し込むと、医療ポッドはカプセルを閉め、睡眠ガスを放出してダレンを眠らせようとした。

「大佐、先程はかっこよかったのに、駄々をこねるなんてまるで子供ですよ!」

「ダレン、バカやってないで早く治しな!治ったらアタイとまたやろうぜ!」

 ダレンは2人の美女に見守られながら眠りに落ちた。


「あら?ミカさん?貴女胸を撃たれたんじゃ?」

「ふふふ。ダレンからもらったこれが止めたの」

 そう言って首飾りにしているメリケンサックを取り出したが、確かにそれは鉛の弾を止めていた。

 しかし、衝撃で骨にダメージを負い、しかめっ面をしたのでミカはノリコに肩を貸されながら医務室に向かったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅

シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。 探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。 その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。 エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。 この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。 -- プロモーション用の動画を作成しました。 オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。 https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...