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第12話 葛藤
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新造艦のうち、追撃部隊は敵本隊の残存艦と交戦していった。
数の多い方に向かったからなのか、旗艦に向かったからなのか分からないが、駐留艦隊の残存艦に対して向かって行く艦は少なかった。
新造艦分隊は敵艦に対し、主砲である射程1光分程のレーザーを発射した。
新型のレーザーの殆どは狙いを定めた敵艦に命中し、その装甲やシールドを焼き切った。
旧艦に残っているベテランクルーの数は少なかったが、それでも戦闘有利に進める。
旧艦は敵艦に対して、単純に金属の塊や弾などを放つだけの物を発射した。
レーザーやレールガンが通用しない場合に備え、複数の攻撃手段で攻撃するのが確実だからだ。
金属弾などは敵艦に衝突するとそのシールドを破り、機動性や機能を妨害した。
敵艦はレーザーによる損傷に苦しみ、新造艦のレーザーに耐えることができず炎や煙、空気を宇宙空間へと吹き出していった。
敵艦はレーザーから逃れることができず、次々と撃破されていく。
新造艦は敵艦を一方的に撃ち抜いていく。
敵艦が反撃する前に次々と狙いを定め、即時に発射した。
ダレンは敵艦が破壊される様子をモニターで確認した。
新造艦分隊は冷静に戦闘をこなしていく。
艦長らは敵艦の動きや配置を分析し、最適な攻撃パターンを選択する。
敵艦の弱点や隙を見逃さずに的確に攻撃していく。
敵艦は新造艦に対して無力だった。敵艦は新造艦からの攻撃を回避することも、防御することもできず、新造艦からの攻撃により次々と爆発した。
新造艦のクルーは勇敢に戦闘を続けた。
新造艦の中でも特に優秀な1艦があった。
その艦は敵の旗艦と見られる巨大な艦に対し、旗艦への進路を妨害すべく独断で接近し、主砲を連射した。
相手は概ね倍の大きさを誇る巨艦だった。巡洋艦が戦艦に立ち向かったのだ。
その巡洋艦による猛攻は、すれ違いざまにミサイルを含めた全武装を1箇所に集中して放ち、敵旗艦のシールドを突破した。
幸運な事にコア部分に直撃したことにより敵旗艦とおぼしき艦を轟沈させたのだ。
その艦のブリッジクルーは歓声を上げた。
彼らは自分達が偉業を成し遂げたことに興奮し、自分たちの勇気を誇った。
不慣れな艦で、この艦での戦闘はこれまでシュミレーターだけだった。
そのような状況でいきなりの戦闘だったから尚更だ。
巡洋艦の攻撃クルーの歓声は、他の新造艦や駐留艦隊の残存艦にも伝わった。
金星を上げた巡洋艦の攻撃クルーの活躍に感動し、その戦果に鼓舞されたのだ。
クルーの歓声は敵本隊の残存艦にも伝わったとしか思えなかった。
敵は旗艦を撃破した艦の猛攻に恐怖し、絶望したように新造艦に対して精彩を欠いた。
新造艦を含め、どの艦も予測より良い結果を持って戦闘を終えた。
彼らは向かってきた敵本隊の残存艦を全て撃破し、勝利を確信してフェニックスクラウンの下へと帰還した。
ただ、流石に今回の戦闘で全ての艦が無傷という訳にはいかなかった。
敵艦もただ一方的にやられっ放しではなく、当たり前だが反撃を試みてきた。
敵艦は新造艦に対しレーザーやミサイルなどを発射し、味方の艦を破壊しようとダレン大佐が指揮する艦に対し、最後の抵抗を見せた。
味方は敵艦からの攻撃を受けても決して怯まなかった。
敵艦からの攻撃を回避し、防御シールドはその攻撃に耐えた。
旧艦を含め、敵艦からの攻撃を受けるも軽微な損傷を受けるにとどまり、撃沈はもとより中破にまで至った艦はいなかった。
ただし、駐留艦隊所属の艦は敵艦からの攻撃をくらい、残念ながらダレンの指揮下に加わった後に数艦が爆散したり、航行不能に陥った。
敵の主砲により外殻を切り裂かれ、内部が破壊されたり、空気が一気に外に漏れる等により乗員達は死に面することとなった。
先の戦闘でシールド機能にダメージを受けていた艦が、シールドを突破されたからだ。
その艦の内部では、悲惨な光景が広がっていた。
火や煙、血や肉片が飛び散り、ある者は腕が千切れたり、腸が漏れ出ていた。機器や配線やパイプが破裂し、その破片が刺さり失血死していく。
人工重力が止まり、空気が失われていった。その艦の乗員たちは、苦しみや恐怖や悔しさ、無念さに満ちていた。
しかし、敵の猛攻に晒された駐留艦のクルーは、最期まで戦闘を放棄しなかった。彼らは自分達の任務や仲間、人類を守ることに誇りを持って死んでいった。彼らは自分たちの命と引き換えに敵に大きなダメージを与えることに成功し、向かってきた敵を全て撃破した。
しかしその時、予想外の事態が起こった・・・
「大佐、恒星から重力異常が検出されました」
航法士が想定外の報告をしてきた。
「何だと?」
ダレン大佐は驚き、つい声を荒げた。
「恒星から重力異常が検出されました。恒星が重力崩壊を起こしています」
航法士が繰り返した。
「どういうことだ?」
ダレン大佐は理解できなかった。
「分かりません。コンピューターの予測によると恒星が太陽型の恒星から、ブラックホールに変化しています。いや、超新星爆発を起こすかもわかりません。しかし、その原因は不明です」
航法士が答えた。
「不明だと?」
ダレン大佐はつい怒鳴ってしまった。
「はい。不明です。恒星に何かが衝突した形跡もなく、恒星の内部に何かが起こった形跡もないのです。ただ、恒星の表面に謎のゲートが出現しています」
航法士が言った。
「謎のゲートだと?」
「はい。謎のゲートです。敵の残存艦は1割ですが、それらが全て恒星に向かって突撃しています。その途中で謎のゲートが出現し、敵艦がその中に消えています。計測によりますと、1艦が消える度に恒星の重力異常の数値が大幅に上昇している事が判ります」
航法士が無表情で説明した。
「敵艦が恒星に突撃して謎のゲートに消え、恒星がブラックホールになる?それは何だ?敵の新兵器か?」
ダレン大佐はついきつい口調となった。
「分かりません。敵の新兵器という可能性もありますが、それにしてはあまりにも無謀な行動です。恒星をブラックホールにすることで、自分たちも巻き込まれる可能性が高いです。それに、恒星をブラックホールにすることで、何を得るのでしょうか?」
航法士が疑問を口に出した。
「それは分からない。敵の目的や思考は不明だ。しかし、これは我々にとっても危険な事態だ。恒星がブラックホールになれば、その重力異常から逃れられなくなる。我々は速やかにこの場を離れなければならない」
ダレン大佐は一瞬だけ目を閉じるとどうするか判断した。
逃げられなくなるというのは、シュバルツシルト半径のことではなく、ワープ、重力ドライブ、重力ジャンプの全てが使い物にならなくなるからだ。
「大佐、恒星が完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられなくなるまであと5分です!」
逐一航法士が警告する・・・
注)ダレン大佐が新造艦や旧艦と呼ぶのは、工廠部で管理する艦には大まかな呼び方だけになり、艦名はない。
旧艦の艦名も符号に置き換わっていた。
艦名は艦隊に所属している艦にのみつけられ、基本は最初の艦長が命名する。
多くの場合、クルーから名前を募り、既存の艦名と被っていない艦名が採用される。
ただ、旗艦たるフェニックスクラウンだけは別だ。
だから一括りに新造艦だの旧艦だのと言うしかなかった・・・
また、新造艦の場合、1番からの製造番号で扱われている。
数の多い方に向かったからなのか、旗艦に向かったからなのか分からないが、駐留艦隊の残存艦に対して向かって行く艦は少なかった。
新造艦分隊は敵艦に対し、主砲である射程1光分程のレーザーを発射した。
新型のレーザーの殆どは狙いを定めた敵艦に命中し、その装甲やシールドを焼き切った。
旧艦に残っているベテランクルーの数は少なかったが、それでも戦闘有利に進める。
旧艦は敵艦に対して、単純に金属の塊や弾などを放つだけの物を発射した。
レーザーやレールガンが通用しない場合に備え、複数の攻撃手段で攻撃するのが確実だからだ。
金属弾などは敵艦に衝突するとそのシールドを破り、機動性や機能を妨害した。
敵艦はレーザーによる損傷に苦しみ、新造艦のレーザーに耐えることができず炎や煙、空気を宇宙空間へと吹き出していった。
敵艦はレーザーから逃れることができず、次々と撃破されていく。
新造艦は敵艦を一方的に撃ち抜いていく。
敵艦が反撃する前に次々と狙いを定め、即時に発射した。
ダレンは敵艦が破壊される様子をモニターで確認した。
新造艦分隊は冷静に戦闘をこなしていく。
艦長らは敵艦の動きや配置を分析し、最適な攻撃パターンを選択する。
敵艦の弱点や隙を見逃さずに的確に攻撃していく。
敵艦は新造艦に対して無力だった。敵艦は新造艦からの攻撃を回避することも、防御することもできず、新造艦からの攻撃により次々と爆発した。
新造艦のクルーは勇敢に戦闘を続けた。
新造艦の中でも特に優秀な1艦があった。
その艦は敵の旗艦と見られる巨大な艦に対し、旗艦への進路を妨害すべく独断で接近し、主砲を連射した。
相手は概ね倍の大きさを誇る巨艦だった。巡洋艦が戦艦に立ち向かったのだ。
その巡洋艦による猛攻は、すれ違いざまにミサイルを含めた全武装を1箇所に集中して放ち、敵旗艦のシールドを突破した。
幸運な事にコア部分に直撃したことにより敵旗艦とおぼしき艦を轟沈させたのだ。
その艦のブリッジクルーは歓声を上げた。
彼らは自分達が偉業を成し遂げたことに興奮し、自分たちの勇気を誇った。
不慣れな艦で、この艦での戦闘はこれまでシュミレーターだけだった。
そのような状況でいきなりの戦闘だったから尚更だ。
巡洋艦の攻撃クルーの歓声は、他の新造艦や駐留艦隊の残存艦にも伝わった。
金星を上げた巡洋艦の攻撃クルーの活躍に感動し、その戦果に鼓舞されたのだ。
クルーの歓声は敵本隊の残存艦にも伝わったとしか思えなかった。
敵は旗艦を撃破した艦の猛攻に恐怖し、絶望したように新造艦に対して精彩を欠いた。
新造艦を含め、どの艦も予測より良い結果を持って戦闘を終えた。
彼らは向かってきた敵本隊の残存艦を全て撃破し、勝利を確信してフェニックスクラウンの下へと帰還した。
ただ、流石に今回の戦闘で全ての艦が無傷という訳にはいかなかった。
敵艦もただ一方的にやられっ放しではなく、当たり前だが反撃を試みてきた。
敵艦は新造艦に対しレーザーやミサイルなどを発射し、味方の艦を破壊しようとダレン大佐が指揮する艦に対し、最後の抵抗を見せた。
味方は敵艦からの攻撃を受けても決して怯まなかった。
敵艦からの攻撃を回避し、防御シールドはその攻撃に耐えた。
旧艦を含め、敵艦からの攻撃を受けるも軽微な損傷を受けるにとどまり、撃沈はもとより中破にまで至った艦はいなかった。
ただし、駐留艦隊所属の艦は敵艦からの攻撃をくらい、残念ながらダレンの指揮下に加わった後に数艦が爆散したり、航行不能に陥った。
敵の主砲により外殻を切り裂かれ、内部が破壊されたり、空気が一気に外に漏れる等により乗員達は死に面することとなった。
先の戦闘でシールド機能にダメージを受けていた艦が、シールドを突破されたからだ。
その艦の内部では、悲惨な光景が広がっていた。
火や煙、血や肉片が飛び散り、ある者は腕が千切れたり、腸が漏れ出ていた。機器や配線やパイプが破裂し、その破片が刺さり失血死していく。
人工重力が止まり、空気が失われていった。その艦の乗員たちは、苦しみや恐怖や悔しさ、無念さに満ちていた。
しかし、敵の猛攻に晒された駐留艦のクルーは、最期まで戦闘を放棄しなかった。彼らは自分達の任務や仲間、人類を守ることに誇りを持って死んでいった。彼らは自分たちの命と引き換えに敵に大きなダメージを与えることに成功し、向かってきた敵を全て撃破した。
しかしその時、予想外の事態が起こった・・・
「大佐、恒星から重力異常が検出されました」
航法士が想定外の報告をしてきた。
「何だと?」
ダレン大佐は驚き、つい声を荒げた。
「恒星から重力異常が検出されました。恒星が重力崩壊を起こしています」
航法士が繰り返した。
「どういうことだ?」
ダレン大佐は理解できなかった。
「分かりません。コンピューターの予測によると恒星が太陽型の恒星から、ブラックホールに変化しています。いや、超新星爆発を起こすかもわかりません。しかし、その原因は不明です」
航法士が答えた。
「不明だと?」
ダレン大佐はつい怒鳴ってしまった。
「はい。不明です。恒星に何かが衝突した形跡もなく、恒星の内部に何かが起こった形跡もないのです。ただ、恒星の表面に謎のゲートが出現しています」
航法士が言った。
「謎のゲートだと?」
「はい。謎のゲートです。敵の残存艦は1割ですが、それらが全て恒星に向かって突撃しています。その途中で謎のゲートが出現し、敵艦がその中に消えています。計測によりますと、1艦が消える度に恒星の重力異常の数値が大幅に上昇している事が判ります」
航法士が無表情で説明した。
「敵艦が恒星に突撃して謎のゲートに消え、恒星がブラックホールになる?それは何だ?敵の新兵器か?」
ダレン大佐はついきつい口調となった。
「分かりません。敵の新兵器という可能性もありますが、それにしてはあまりにも無謀な行動です。恒星をブラックホールにすることで、自分たちも巻き込まれる可能性が高いです。それに、恒星をブラックホールにすることで、何を得るのでしょうか?」
航法士が疑問を口に出した。
「それは分からない。敵の目的や思考は不明だ。しかし、これは我々にとっても危険な事態だ。恒星がブラックホールになれば、その重力異常から逃れられなくなる。我々は速やかにこの場を離れなければならない」
ダレン大佐は一瞬だけ目を閉じるとどうするか判断した。
逃げられなくなるというのは、シュバルツシルト半径のことではなく、ワープ、重力ドライブ、重力ジャンプの全てが使い物にならなくなるからだ。
「大佐、恒星が完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられなくなるまであと5分です!」
逐一航法士が警告する・・・
注)ダレン大佐が新造艦や旧艦と呼ぶのは、工廠部で管理する艦には大まかな呼び方だけになり、艦名はない。
旧艦の艦名も符号に置き換わっていた。
艦名は艦隊に所属している艦にのみつけられ、基本は最初の艦長が命名する。
多くの場合、クルーから名前を募り、既存の艦名と被っていない艦名が採用される。
ただ、旗艦たるフェニックスクラウンだけは別だ。
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