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第三章 事業発展編

第106話 王都にて解体

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 この日ロイは王都の冒険者ギルドで新たな役割を担っていた。
 可愛そうだとは思うが、母と弟のギイも連れてきている。

【魔石操作】の技術を持つ先駆者として、彼は魔物から魔石を抜き取る方法を教えることになった。
 これは単に魔石を取り出す技術に留まらず、冒険者たちによるパワーレベリングにも繋がる重要な技術であった。
 とは言えやることは大したことはない。
 
 対象の体の何処かに触れながら「魔石抜き取り」と発すれば良い。
 しかし、殆どの非戦闘系の者は町を出たことがなく、生きた魔物はまず見たことがない。
 闘技場などで捕らえた生きた魔物を放ち、冒険者や騎士たちが狩るというエンターテイメントがあり、それでしか見たことがない。おそらく外れ加護として冷遇されたり、加護とは関係ない農家や商人、どこかの下働きとなり一般人として生きている。

 そのような者が護衛があるからと言って、壁の外で生きた魔物に触れられるか?・・・まず無理だ。
 たまたま冒険者や兵士をやっていたら別だが。それもあり、母やギイの反応から押して量るべしとなった。
 覚悟のない人に慣れてもらうための手順だ。これもおそらくとかのレベルの話なので、試行錯誤する叩き台だ。

 ロイには覚悟があった。
 騎士の息子として魔物と切り結ぶ覚悟があったから大丈夫だった。

 例えば日本の一般人は焼き肉を食べるのは普通だが、その肉となる牛や豚を屠殺するのは無理だ。

 しかし、映画とかで皮の剥がされた牛や豚が吊るされている精肉工場の様子は知っているだろう。

 しかし、屠殺場はどうだろうか?探せばあるだろうが、そんなグロく残酷なシーンは目にしない。
 それと同じだ。

 案の定母親は解体場で解体されている魔物を見てか、血を見てか、顔を真っ青にし、早々に連れ出された。

 そして解体を手伝うロイを見てギイは吐いていた。

 これが現実である。
 ギイには魔物と向き合う覚悟も経験もなかった。

 ギルドマスターの立会いのもと、解体場のスタッフと一緒に実際に魔石を抜き取るデモンストレーションを行い、その見本を見せた。立ち会った文官がその手順を書面に起こし、今後の指導の基準となる。ロイはこれには高度な技術ではないが、メンタル面から魔物の死体に触れ、魔物に慣れることの大切さを説いた。

 昼食の時間には、ロイが持つ爵位を隠し、冒険者たちやギルドスタッフとの交流の場を持った。

 この後、ソニアも参加し、彼女が普段使っている道具や網の詳細を道具店の者に伝えるなど、有意義な時間を過ごした。

 翌日、全ての予定を終えたロイたちは、王都を離れる準備をしていた。彼らが出発しようとしたその時、モンの近くでけたたましい鐘の音が鳴り響いた。それは王都に何らかの異変が起きたことを知らせる警報であった。鐘の音に導かれるように、ロイとその仲間たちは警報の発生源へと急いだ。王都の安全が脅かされている可能性があり、彼らにはそれを守る責任があった。

 鐘の音の源に近づくにつれて、彼らは魔物の群れが王都の壁に迫っているのを見た。どうやら、複数の魔物が同時に王都を目指しており、この状況を何とかしなければならないと即座に理解した。ロイたちは即座に行動に移り、魔物たちとの戦いに備えた。彼らの目的と言うか、大切な人を守るため魔物たちを退け、結果的に王都とその住民を守ることだった。
 ロイは特段、英雄的な自己犠牲の精神が強いわけではない。
 赤の他人の命が散ればそれなりに心は痛む。だが、だからといって赤の他人のために命を賭けることもしない。

 ロイの【魔石操作】の技術が、この戦いでどのように役立つのか、そして彼らがどのようにして魔物の脅威から王都を守り抜くのか、その答えが今、王都でも試される時が来たのだった。 
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