外れギフト魔石抜き取りの奇跡！〜スライムからの黄金ルート！婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

第二章 美容薬販売編

第71話 燃えかすの中の希望

　騎士が率いる兵たちによって、焼け落ちた家屋の撤去作業は驚くほど迅速に進んでいた。ソニアは2号店へと急ぎ、２号店に着くと収納していた荷物を取り出し、直ぐにロイのもとへと戻ってきた。

　ロイ、ソニア、リラを除く全員が2号店の開店準備に取り掛かっている。

　リックガントとベリーズは木材を買い付けに出かけ、荷車に積んで戻って来る。ベリーズは不足していたカウンターを急ごしらえで作り始めたが、彼の腕前は流石の木工職人であり、何ヶ月も計画を練っていたかのような見事な造作を披露した。

　リラの妹たちは、自分たちが住んでいた家が燃えたと聞いて動揺していたが、母親の顔に悲壮感がないことから彼女たちは明るく振る舞っていた。14歳のシーターと12歳のナタリーの姉妹はその年齢にも関わらずよく働いた。
　母親似ではないが、とてもしっかりとした姉妹だった。

　リラは母親の連れ子であり、姉妹はリックガントの連れ子だ。この世界では死別は珍しいことではない。
　この夫婦もそれぞれの連れ合いを魔物に殺された後、知り合いを通じて再婚した。
　血の繋がりがないとはいえ、リラは姉妹にとって自慢の姉だった。旧宅はリラが生まれ育った場所であり、彼女は思い出に涙しながら片付けをしていた。

　その中で、リラは一体のスライムを見つけた。それは奇跡的に形を保っており、燃えもせず、押し潰されもせずに残っていた。

「ロイ、ソニア、こっちに来て！これを見て！」

　リラは興奮しながら呼びかけた。

　二人が駆けつけると、奇跡的に残ったスライムを目の当たりにし、驚きとともに「奇跡的だ」と呟いた。このスライムは、焼け落ちた家屋の中で唯一無事だったもので、その存在は彼らにとって一筋の希望の光となった。

　このスライムは、リックガント魔法道具店の再建と新たな始まりの象徴となるだろう。ロイはこのスライムを大切に保管し、新しい店のショーケースに飾ることを決めた。もちろん開店数日間のことで、それ以降は商品の材料となる。
　それは、どんな困難にも屈しない彼らの精神を表すものとなる。

　新しい日が始まり、2号店改め新店舗のオープンに向け、準備は着々と進んでいた。リックガントとベリーズは新しいカウンターを設置し、リラの妹たちは店内の清掃を手伝い、ソニアは商品の陳列を行っていた。全員が一丸となって、新しい店の成功を目指していた。

　そして、ついに新店のオープンに漕ぎ着けた。朝早くから燃えた跡地に多くの人々が集まっていた。　そこにベリーとミランダがやってきて、準備が整った旨を知らせてきた。

「準備が整いましたのでこれから新店に案内します。ご心配お掛けしましたが、新たなお店でヴィーナスラヴェールの販売を再開します。燃えたのは材料のごく一部で、販売に影響はございません。まずは整理券をお配りします！並んで頂いた順に店にお入り頂きますが、順番を抜かしても整理券がなければ入れませんので、我先にと急がないようお願いします」
　
　燃えた店の前には長い列ができていたので、整理券を配った。
　そしてロイを先頭に列が移動を開始する。歩いて5分ほどのところだが、注目を浴びるのには十分だった。

　ベリーズは新店の案内看板を店の跡地に設置し、交代で誰かがこちらに来るようにした。そして新店から誰かが戻り次第、新店に引き連れるのを繰り返す予定にしていた。

　リックガント一家は、新しい挑戦に胸を躍らせながら、お客様を温かく迎え入れるべく新店の前に整列していた。
　この日は、彼らにとって新たな章の始まりであり、希望に満ちた一日の始まりだ。

　そして、奇跡のスライムは、新しい店のシンボルとして、多くの人々にその物語を語り継ぐことになるだろう。