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第一章 冒険者編

第60話 女装男子が追ってきた!

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 ロイの行動は、彼が持つ冷静さと精密な計画性によって支えられていた。
 今この場でロイは自分の意図を隠し、まるで獲物を追うハンターのように、敵にじわじわと接近していった。

 咄嗟に考えたロイの計画の鍵は、敵を自らのペースに引き込むことにあり、そのためには巧みな演技が必要だった。

 彼は自分をわざと敵に殴らせることで、正当防衛の状況を巧妙に作り出し、一瞬の痛みさえも計算の内に含められていた。

 4人の男相手とはいえ、一歩もー引くつもりもなく、不思議と負ける気すらしなかった。

 最初の奴が素手で殴り掛かってきた。

『遅い』

 そう思うも、一発入れさせるべく、受け流して、ギリギリ殴られた感を出す。攻撃を受け流す際、その瞬間の表情から痛みを感じていることが伺えた。だが、それでも彼は冷静さを失わず、相手の意識を自分の『弱さ』に引きつけることに成功した。

 受け流すとき、相手の腕がぶれたので、受け流しきれなかったのだ。

 そして相手が油断した瞬間を見計らい、素手での反撃に出た。
 ロイの戦闘技術の高さは、彼がどれほどの訓練を積んできたかを物語っており、その技術によって敵はたちまち圧倒されていく。

 2人目が剣を振りかぶるも、ロイは屈んで躱しつつ、懐に入り込むと腹パンを決め、嘔吐させ無力化した。
 3人目のナイフによる攻撃を躱すと回し蹴りを決めた。
 そいつはゴミ置場に転がった。

 そして4人目は「くそがあぁ」と叫びながらシミターを振るうも、ロイは「遅い!」と吐き捨て、足を引っ掛けて地面に転がしたが、頭を打って悶絶した。

 その場の空気は緊迫していたが、ロイは敵の攻撃を巧みにかわす一方で、猫のように敏速に動き、相手を翻弄し続けた。戦闘中、彼の目は常に周囲を警戒しており、敵からの一切の攻撃を許さない様子だ。そして戦いのクライマックスで、ロイは相手を地に伏せた。その技術と力の差を見せつける形で戦いに終止符を打った。

 ロイが助け出したのは、女装をしている男性だった。この男性はおネエ言葉で話し、その特異な話し方は、一瞬、ロイを戸惑わせることになる。

「おにーさん、助かったわぁ!ありがとねえ!」

 何故男と分かったかというと、先の4人組によって前がはだけていたが、そこに胸の膨らみがなく、男の胸板があったからだ。

 彼?彼女?は慌てて服を整え、パッドを装着し直し、胸の膨らみを出そうとしていた。

「怪我はないようだね。先を急ぐので僕はこれで」

 ロイは苦笑いを浮かべながらも、その場を後にした。この男との出会いは、最初はロイにとって疑念を抱かせる悪いものだった。

 ロイはリックガント魔法道具店に逃げるように向かったが、しかし女性の姿をした彼はぼやくしかなかった。

「もういけずな人ね。それとも恥ずかしがり屋さんなのかしら?さて、あたしも店にいかなきゃ」

 そして転がっている奴らの懐をまさぐり、財布を取っていった。
 更に、ご丁寧に亀甲縛りで縛り上げる。

「あんたたち、ずいぶんなめくさったことしてくれたわね。これは慰謝料として頂いていくわね。そうそう、良いことを教えてあげるわ。あんたたち犯罪者だから。犯罪者から財布を取るのは罪じゃないのよ!じゃあねぇ!」

 そして4人は駆けつけた衛兵にしょっぴかれて行ったが、その頃にはもう捕えた側の当事者はいなかった。

 ロイはリックガント魔法道具店に着くと、丁度ベリーズたちも来たところだった。
 早速ソニアに先ほどの女装男子の話をし、あれはやばかったと話していた。

 そして問題の人物というと「やっほー!きたわよおぉ!」と元気いっぱいの声とともに店に入ってきた。それを見たロイの背筋に冷たいものが流れたのだった。
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