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序章

第1話 プロローグ1

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 ランパル地方にある小さなミヌカ村を、穏やかな風が優しく包んでいた。
  ミヌカ村は特産のりんごのような樹の実と、麦の生産で知られる農村だ。

 壁で囲まれた安全なエリアの中で人々が暮らしている。しかし、農場は壁の外にあり、自警団が魔物から守る必要があるため、常に危険が付きまとう。

 ミヌカ村の朝は、親子の語らいや笑顔満開な家族の絆、そして全てを包み込むような優しい気配で満ち溢れていた。
 その中の一軒家の広々とした庭では、若き少年ロイは父親に剣の訓練をつけられていた。
ロイの朝は村の領主(準男爵で村長)をしている騎士でもある父親との剣の訓練から始まる。

 15歳になると加護を得ることができるが、戦闘系の加護がなければ魔物と戦うことは厳しい。
 ロイは幼少期から剣の修行をしてはいるし、体格も恵まれているが、それでもゴブリンを一体相手にするのが精一杯な強さだ。

 ロイは三男であり、既に兄たちは王都でそれぞれの道を歩んでいる。長兄は騎士団で活躍し、次男は騎士学校で学んでいる。一方で、少し年下の弟とは些細なことで衝突することもあるが(基本的にライバル視している弟が一方的に絡んでくる)、家族は基本的に平和に暮らしている。

 ロイは15歳を目前にしており、現在成長期真っ盛りで身長は既に170cmほどだ。つまりこの世界の成人男性の殆どより背が高い。
身長が六尺(約183センチメートル)に達する長身な父親譲りの体格の良い少年に育っている。

 彼の髪は夜空のように深い青黒色で、肩まで流れるその髪は村の中でも特に目を引く存在だ。
 彼の目は父親譲りの鋭い琥珀色をしており、どんな暗がりでも光を捉えることができるかのように輝いている。

 肌は日々の農作業や訓練で日焼けしており、健康的な小麦色をしている。
 村長の息子といえども、時折農作業を手伝う。筋肉質でしっかりとした体格は、幼いながら重労働に耐えうる強さを感じさせる。
 もっとも体を鍛える目的で父親が力仕事をさせていた。

 彼の手は大きく指は長いため、剣や弓などの武器を扱うのに適しているとも言える。

 しかし、ロイの最も印象的な特徴は、彼の静かで落ち着いた態度にある。彼は決して急いだり、声を荒げたりすることはなく、常に冷静で思慮深い様子を見せる。
 そのため、彼は時として遠くを見つめるような、夢見るような表情を浮かべることがあり、若年寄と弟に揶揄されるほどだ。
 それは彼が内に秘めた未知の可能性を感じさせるものだった。

 ロイは冒険者の物語に夢中になり、魔物に関する知識を深めていた。
 彼の当面の目的は戦闘系の加護を得たならば騎士学校に入学すること、または魔法系の加護を授かり、王都の魔法学園で学ぶことだった。
 そして冒険者になることが夢だ。

 ロイの婚約者であり地方を治める領主(子爵)の四女であるミネアも魔法学園への進学が決まっており、二人の未来は希望に満ちていた。ミネアは家系から加護とは別に魔法を操ることができ、加護を得る前にもかかわらず進路が決まっていた。

 魔石への関心は、ロイの学びの中心であった。もっとも書物による知識になる。だが、魔物の体内にある魔石は急所であり、強大な相手であっても、その魔石を砕けば容易に倒すことができる。その知識があれば、矢を放ったり、剣や槍で最小限の動きで魔物を討つことができる。これは、より多くの敵に対処し、生存率を高めることに直結する。

 ロイは魔石がどこにあるか、どのようにして砕くかを学び、いつか冒険者として魔物と対峙する日を夢見ている。

 剣の訓練は単なる戦闘技術の習得だけではなく、父親はロイの心の中にある優しさという感情を大事にしながら、彼に騎士として必要な技術を伝授していた。

「ロイ、力強さだけが剣の才ではないんだよ」

 父親は彼に優しく語りながら、剣の技を教える。

「心の優しさがあるからこそ、その剣は本当に強く、人を守る力を持つものになるんだ。力ある者は弱き者を助ける義務がある」

「はい、父さん。僕は争いを好まないけれど、大切な人を守るために強くなりたい!だから学びます」

 ロイの言葉は確固たる決意を含んでいた。それを聞いた父は、息子の成長を感じつつ、その柔和な心をこれ以上に大事に思っていた。

 ロイの剣技は日に日に洗練されていき、訓練中の姿は父の若き日を思い起こさせるほどの美しさを放っていた。父の指導のもと、ロイは魔物に対する理解を深め、それを家族を守るための知識として身につけていた。

「魔物に関する学びも、お前の剣をより強くするものだ。」

 父が助言を与えると、ロイは熱心に学ぶ姿勢を見せた。

 その時、訓練の一区切りがつくと、妹のエマが水差しとタオルを手に現れた。

「ロイ兄、お父さん、汗を拭いて!それと水分補給をしてください!また飲んでいないんでしょ!」

「ありがとう、エマ。」

 ロイは妹からタオルを受け取り、額の汗をぬぐいながら笑顔を向けた。父もまた、娘の気遣いに感謝の言葉を述べる。

 そんな家族のやりとりを見守っていた母が、朝の清々しい空気を運びながら声をかけてきた。

「朝食の用意ができたわよ。みんな、さあ、中に入りなさい。」

 ロイと父は手を振りながら母が用意した朝食を食べるべく、家へと向かった。母の温かな呼び声が、彼らの朝の訓練を締めくくる合図だった。

 食卓には家族の温もりが集まり、ロイはこの穏やかさを守るために、自分ができることを精一杯やると改めて心に誓った。母の愛情がこもった朝食を前にして、彼は家族の支えがある限り、どんな困難にも立ち向かえると感じていた。

 そして、ロイの15歳の誕生日が近づくにつれ、彼の運命は次第に動き始める。家族と共に過ごす大切な時間を胸に刻みながら、ロイは自分の力を磨き、未来への準備を進めていたのだった。
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