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第81話 襲撃

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 いきなりだった。
 皆ライに注目をしており、ステージに歩いている者に誰も注意を払っていなかった。

 地面を蹴り、ジャンプして壇上に上がるとライの左側面から剣で斬り掛かった。

 ライを見ていた者達から悲鳴が上がった。しかし襲撃者はチッと舌打ちし、後ろに飛び下がった。

 ライはうぉっ!?と唸るも咄嗟に左腕で剣を受け止め、躱されたものの足蹴りを繰り出していたのだ。

 勿論腕には篭手を、体には目立たない防具を着けている。学園の制服とはいえ、制服の下に可能な範囲で防具を着けている。先日の襲撃以来常に武装しているのだ。殺気が無かった為か攻撃されるまで気が付かなかった。

 ライも2本のナイフを懐から取り出して応戦していた。但し刃は潰してある。 
 他の者はステージまで距離があるが、ミーニャが手で制していたので皆固唾を飲んで見守っていた。

 30合ほど打ち合っていた。しかし、技量が違っい、明らかにライの方が上だったのだ。次第に追い詰め剣を落とす事に成功した。一気に背後に周り右腕をねじ上げ、体に手を回し捕まえた。

 しかし何やら柔らかい物がそこにあった。あれ?こいつ女か?と。つまり胸を掴んでいたのだ。しかしその感触の良さに触るのを止められなかった。モミモミモミモミと。ついつい柔らけー!と呟いていた。

「あっ!ああん♪揉み過ぎよ♪」

 ライはセクシーな呻き声に心当たりが有ったので拘束を解いた。その途端にその女はくるりと回り、ライの首に腕を回したかと思うと衆人観衆の前にも関わらず、熱いキスをした。
 ライもその腰に手を回し、愛おしそうに抱きしめた。

「皆さんサプライを楽しんで頂けましたか?王都のダンジョン生還者にして、新たに国王陛下により、ラインガルド君の婚約者になったミレール嬢との模擬戦闘でした。流石の腕前に脱帽です。二人に拍手を!」

 拍手喝采も二人の耳には聞こえなかった。

「久し振りねライ君。いつのまに腕が生えたの?相変わらず規格外ね。それに近接戦闘の腕が上がったのね」

「王都でお前に再会した時に驚かせてやろうと思ったのに、プランが台無しじゃないか!」

「いっ、一体どんなプランだったのよ!?」

「お前と再会した時に、右手で再会の握手をしつつ、左手でお尻か胸を撫でるか触るかしてやろうかと思ったんだよな。さすがに片方の手は握手しているから驚くだろう?」

「何言ってるのよ!今おっぱいを揉んだじゃない!男の人に揉まれたのは初めてなのよ!責任取ってくれるわよね?」

「それもそうだなって違う!お前何しに来たんだよ?婚約者にって俺は聞いていないぞ?」

「あらつれない事を言うわね。折角婚約者になったのよ!離れ離れになっている愛しい婚約者の所に、好きな人のところに来ちゃ駄目だった!?私がライ君の事を好きだって知ってるよね?私と婚約者になったのは嫌なの?」

「いや悪い気はしないけどさ、衆人観衆の下でのキスはさすがに恥ずかしいぞ!お前は俺と」

 そう言っているとライは首筋に寒気を感じた。そう、ゾクッとしたのだ。

 いかんと思いライはミレールを横に突き飛ばした。すると今ライの首があったところを何かが空を切った。そしてライは正面から来た者、つまり先ほどまでミレールがいた所をミレールの背後を襲おうとしていた何者かに刺された。ライはぐはっと唸り、咄嗟に上に飛んだ。

 そして刺さったナイフを抜きヒールを使った。

 みんなが慌てて駆け寄ってきたが、ラルファはライにこれを!と叫びライの愛刀を投げて寄越した。

 ラルファは刀を二本帯刀していたのだが、全く同じ刀をである。先の模造品の刀だが、今はギフトにて強化を施してある。壇上に上がる時にライの刀を預かっていたのだ。

 ラルファもそれまで使っていた剣に比べ、この刀は長い上に軽いものだから気に入ったのだ。弥生が剣になっていた時ほどの力はないが、それでもまず折れる事がない業物だ。また一度作っている物なので、クリエイティブで何とでも作り出せるのが強みである。

 ライはスキルを発動した。看破で既に隠蔽魔法で存在を消している者がいる事を見破っており、本来新たに得たスキルだけではその存在を晒す事はできないのだが、そこにいると認識している者に色を与える特殊なスキルを使ったのだ。

 その名もレインボーだ。襲撃者は複数おり、その体が虹色に光り出した。10人ほどいただろうか、ライは取り囲まれていたのだ。

 ライが腹部より血を流している事から、先程のミレールの時のように刃を潰したなまくらで襲ってきたのではなく、本物の武器で襲ってきた事が分かる。

 しかし別の意味で騒然となっていた。襲撃者がいた事ではない。ライがいとも簡単に上空に飛んでいる事である。飛翔魔法を使える者はこの国にも一人か二人はいる。ただしそれなりの時間の詠唱が必要なのだが、ライの場合咄嗟に避ける手段として飛翔魔法を使ったのだ。基本的にエターナルシリーズには詠唱がいらない。その代わり自分で魔法の配合等を考え、試行錯誤しながら魔法を作らなければならない。各種の法則が当て嵌り、各属性魔法の配合比率や込める魔力によって効果が違うので、それを自分で検証し魔法として保存しなければならない。それらに魔法名を付けるのだ。別に炎を投げつける魔法にアイスショットと名付けでも良いのだ。詠唱がなく突然飛んだから騒然となったのだ。

 ライは卒業式を迎えるまで平々凡々と過ごしていたわけではない。エターナルシリーズについて色々な検証を行っていたのだ。特にこの飛翔についで、検証の過程で色々な事が判った。先日襲われて家に逃げ帰ってきたのは飛翔魔法ではなかった。襲撃から逃れたのは確かにこの飛翔魔法だが、その時はまだ制御できなかったのだが、偶々家に飛び込んだのではなく、別のギフトの所為だった。そう、ギフトエスケープだ。命の危険に陥るとあらかじめ設定された場所に文字通り飛んで逃げるというものだ。

 場所を設定していなかった為、自分の家の自分の部屋、つまりここが自分の居場所だ!と思っている場所に飛んでいったという事だった。
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