勇者はいいですって言ったよね！〜死地のダンジョンから幼馴染を救え！勇者？いらないです！僕は好きな女性を守りたいだけだから！〜

第80話 卒業式

　ライは珍しく緊張していた。
　マーナダブル勇者学園の卒業式だからだ。

　卒業生総代にはならなかった。辞退したのだが、学園長が慣例を無視し、ライを総代にしたかったのだが、慣例ではダンジョン生還者は総代をしないのだ。

　ただ、学園長は卒業式に生徒側としてのライに何かしらの演説をして貰いたかった。勿論生徒達も期待していた。

　そこでサプライを用意していたのだ。

　卒業式には町の主だった関係者、在来生、各来賓がこぞって来ていた。例年の倍の人数で、練習場に入れるだけ呼んだというか詰めかけてきたのだ。

　卒業生総代の答辞があり、次に学園長が講釈をたれていた。まあ例年通りだよなとライは思った。

「であるからして、今年のダンジョンに散った英霊に黙祷を捧げる・・・そして長きに渡り誰もなし得なかった最下層を単独でクリアしたのは、我らが領主でもあるラインガルド君である。予定には無いが、ここに映えあるダンジョンクリア者を代表し、ラインガルド君に一言お願いしたい！ラインガルド君こちらに！皆拍手で迎えましょう！」

　大観衆と拍手の中ライはため息をついていた。ミーニャの言う通りだったからだ。多分慣例を無視してくると。まあ、言われなくとも想像に難くないのだ。ライが卒業式にて何も発言しない方が不自然なのだ。

　やれやれと言った感じでライは壇上に上がった。

　左腕を上げ、その存在をアピールした。

　ライが話を始めようとしたが、壇上に花束を持った下級生の女の子が歩いてきた。司会が花束の贈呈だという。最下級生かと思ったら違った。誰だ？と思うもニースだった。

　スキル付与のお陰でライの妹であるニースが中途入学をしていた。スキルのお陰で中途入学であったがまたたく間に頭角を現していた。

「卒業おめでとうお兄様！」

「ありがとう！」

　そして話を始めた。

「ラインガルドです。ご存知の方も多いと思いますが、国王陛下に任命され、この地の領主を仰せつかっています。ですが、ご存知の通りこれより3年の間義務により冒険者をします。ですので時折戻るかも分かりませんが、暫しのお別れです。ダンジョンは運が良かったのです。偶然が重なったからです。ただ、ダンジョンマスターになり、ダンジョンを死なない様にしました。ですから、今までと違い、希望者が殺到する事になると思います。ですので来年からは選抜試験を行い、熾烈な競争を勝ち抜いた者が映えあるダンジョンアタッカーになる事でしょう。私からの助言は、最後の瞬間迄諦めるなだ」

　ライは水を一口飲んで話をつづけた。

「例え死を覚悟しても最後まで諦めるな！私が今生きているのは最後まで諦めなかったからなんだ。目を閉じるな！。例えが悪いかもだが、悪党に捕まり、相手に足をお舐めと言われ、舐めたら命だけは助けてあげると言われたとします。どうするか？ですが、私は迷わず舐めます。恥さらしと言われようが、死ねば終わりです。生きてさえ入れば逃げ出したり反撃のチャンスが巡ってくる事もあります。場合によっては舐める振りをして口に運んだ足を食い千切れば、そいつを倒す事ができるかもです。敵の攻撃を諦めて食らうのじゃなく、最後の力を振り絞って避けるのです。無駄な足掻き化も分かりませんが、ひょっとしたら気絶した仲間が意識を取り戻したり、偶々誰かが通り掛かり助太刀してくれるかもなんです。それも生きていなければですからね。」

　ライが熱く語っていると、フードを深く被った者が一人、ゆっくりとステージに向かって歩いて来るのであった。