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第55話 警戒

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 部屋が綺麗になった。寧ろ部分的にバージョンアップさえした。

「ほら呆けてないで、会議と行きますか!」

「ミーニャ、いつまでも呆けているとライにおっぱいをモミモミされると思うぞ?」

 何故かミーニャはライを平手打ちにした。

「このスケベ!そういうのはふたりきりの時にする事でしょ!」

 ミーニャの大胆発言に妹は特に真っ赤だった。

「こらミーニャ、ニースちゃんが困っているではないか。からかうのは程々にして、ソロソロ本題に入った方が良いと思うぞ」

 頬に手形の付いているライは何故殴られたのか釈然としなかったが、顛末を話し始めた。情けない顔で話しているから締まりがないが、皆真剣に聞いていた。

 突然屋上から何本もの矢を射掛けられた。ファイヤーボールではなく、フレイムボールを放ち一人を倒したが建物が少し燃えた。それからは街に被害が出てしまうのでフレイムボールは使えず、矢も何本か食らっていたのもありフライで飛んだが、制御できずに飛んでいる最中に気絶し、目覚めたらここにいたと。

 ライがここに突っ込んできてからの事はメアリーが話していった。

 ライはまずはパトリシアに熱い口づけをした。

「パトリシア、君は僕の命の恩人だ。ありがとう!愛しているよ」

「メアリー、やっぱり、僕のメアリーだ。命拾いしたよ。ありがとう。愛しているよ」

「ミーニャ、腕大変だったろ。痙攣するまで頑張ってくれたから、今俺は生きている。感謝のしようがない。愛しているよ!」

「ユリカ、君のヒールを掛け続けてくれたから死なずに済んだ。ありがとう。愛しているよ。魔力を少し分けるよ」  

「クラウディア、僕の蘇生をしたかったろうに、屋敷を守ってくれたから安心して皆が僕を蘇生できた。感謝するよ!愛している!好きだ!」 

「ラルファ、嫌な役回りをさせたね。心配掛けたけど見ての通り生きている。愛している!愛しているって言える事に感謝だ!」

 そうやってひとりひとりを抱きしめながら感謝を述べ、そしてキスをした。パトリシアについついキスをしてしまったから皆にしない訳にはいかず、全員、いや、妹以外とキスをした。みなトロンとし、妹には心配をかけたねといって抱きしめた。妹は兄が婚約者が相手とはいえ目の前でキスをしたものだから真っ赤だ。

 ただ、キスをしているのをガン見し、羨ましいなと感じていた。

 いち早く正気に戻ったのはライが倒れている姿を見ていないラルファだった。

「ライ、その、もう少しロマンチックなシチュエーションで接吻をしてくれるものだと思っていたのだが、まあ、これはこれで嬉しくもあるぞ。でもな、次は景色の良い所で甘い言葉を囁きながらそっと私の顎に手をやりとろけるようなキスを期待するぞ」

「ラルファ、今この場でってこれ以上ないって状況よ。命を助けてくれた愛する婚約者に、感極まって感謝し愛を囁いているのよ。生き返ったライにキスされてこの上ない幸せを感じたわ。今押し倒されればこのまま抱かれても良いと思う位にライを愛していると実感したわ」

 ラルファは驚いた。正直ライの事を好きだとは思うが、まだ今のミーニャの発言のようには至っていない。自分は見ていないから実感はないが、恐らく死にかけていたライを見て一気にその想いが昇華したのであろうと感じた。

「ミーニャ、気持ちは分かるが、そういう事は結婚した日の初夜までは駄目だぞ」

「うん。勿論よ。えっとこれからどうするかを決めなきゃよね。そのライ、襲って来た者に心当たりは?」

「いや、知った顔は無かったな。くそ、ステータスを見ておけば良かった」

「何者だろうか?そうだな、ライ、恨まれているような事は無いのか?」

「そうだな、心当たりは無いな。ただ、可能性は低いけど、今のこの状況から逆恨みされてるかもな」

「えっ?どういう事でしょうか?ライの事を好きだからの話では有りませんが、ライは普段から人に恨まれるような事はしていないと思いますわ。学園でも嫉妬をされても、ライの事をバカにしていた方達も手のひらを返し、取り入ろうとしていますから何に恨まれるのでしょうか?」

「そうだね。組織的な奴等が襲ってきたからかなりの財力が無きゃ無理だな。少なくともこの町の学園関係者の仕業じゃないぞ。ミーニャ、お前の事を好きだという貴族はいないか?お前を俺に取られたくないから刺客を差し向けたかと一瞬思ったんだよな」

「多分それはないわ。3年の義務期間が終わったら隣国に嫁ぐ話が昔から有ったから、貴族達は私とは結婚できないと思っている筈だから、他の有力な家の令嬢をと思っていた筈よ」

「はあ。あのさ、そういう事だと俺が貴族になって困る奴の仕業しか無いよな?」

「あっ!お祖父様の所為って事よね。そっか。義務期間が終わってライが私達と結婚したらライは王位継承権第4位なのよ。やはりそちらかしら」

 継承権の事を聞いて皆ポカーンとしたのであった。
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