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第50話 父の商店に

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 クラウディアはメアリーに頭を叩かれていた。

「こらクラウディア!駄目でしょ。それをしても良いのは週に一度のクラウディアの日でしょ。はしたないから皆の前ではやらないって決めたでしょ!」

「でもな、そのメアリー、つい」

「めっ!ライに嫌われたいの?ライはね、基本的にユリカのようなお淑やかな子が好きなの。ミーニャから聞いているでしょ?男ってグイグイ来られるのより、照れて赤くなる子の方が好きなのよ」

「だってアタイはこんなだし」

「だってもへちまもありません!少なくとも人前ではもう少し露出を控えないとライが嫉妬するわよ。それともライ以外の男に厭らしい目で見られたいの?」

「その、悪かった。そうだな、アタイの胸を揉んでも良いのはこいつだけだからな。分かったよ。気をつけるよ」

「結婚するまではまだ時間が有るから、ライの妻になるのに相応しい所作はこれから身に付ければ良いのよ。クラウディアにならできるからね!」

 何故かクラウディアはメアリーに頭が上がらない。
 ミーニャがいくら注意しても無駄で、諦めていたのだ。だがメアリーは二言目にはライに嫌われるわよと注意をしており、ライに嫌われるのをクラウディアは極端に恐れた。

 婚約したその日にライにクラウディアは伝えた。

「あたじゃなく私は筋肉ばかりで女らしい所が少ない。ガサツで皆と違い美人じゃないし。こ、婚約して貰えるのは嬉しいがあた、ちがって私ではライに釣り合わない。婚約を破棄しても良いのだぞ」

 そんな感じに遠慮気味に伝えていた。

「君はいかす女だ。筋肉で硬いんじゃなく、鍛えられてスラっとしたナイスバディだぞ!胸も大きいし、顔も綺麗な俺好みの顔立ちだよ。まあ、髪型がぼさぼさだけど、ちゃんと手入れしたら誰もが振り向くレディーになれるんだから。もっと自信を持っても良いぞ!」と言っていたのだ。

 剣の稽古の合間にメアリーやユリカに淑女の所作を教えて貰っていた。逆に2人に武器の扱い方や無手での戦い方を、護身術を教えていた。

 ライがカミングアウトした後にライは追い出された。しかも自分の部屋なのにだ。

 ライに貸し与えられた屋敷は直ぐに住めた。しかも引っ越しもあっという間に終わった。
 持っていく分の荷物をユリカの収納にどんどん入れ、屋敷にて放出していたからだ。

 全ては持っていかなかった。
 服は必要だが、寝具は既にあったのだ。3ヶ月前に取り潰しになり、屋敷の主は身分を剥奪され、金貨200枚のみを渡され、国外追放になっており、屋敷は国が没収していた。下級貴族の為メアリーの屋敷と大差ないが、それでもライのいた家に比べれば全てがゴージャスだ。

 流石に主の部屋はライの部屋になったが、屋敷の運用は母親にお願いしており、屋敷の主が使う執務室は母親がいいように使うようにしていた。

 卒業後3年の間、時折戻るが、基本的に冒険者として旅に出る。

 それとライは父親の経営する小さな商店についてお願いをしていた。
 主に日常生活に必要な魔道具の販売する店を経営している。
 新品は勿論中古品の売買もしている。
 中古は主に貴族の屋敷で使われていた物で、一般家庭だとまだまだ現役の物が売られてくる。少しでも見た目がくたびれてくると新しいのと入れ替えるのだ。

 扱っているのは魔石をセットするか魔力を注入して、魔力を動力源として使う道具だ。

 ランプだったり、着火装置だったり魔導コンロだ。仕組みは電熱ヒーターを思い浮かべて欲しい。中心部分を魔力で熱くし、その放射熱で調理をする。着火装置はライターの代わりだ。焚き木だったり、ゴミを燃やしたりする時の火をおこすのに使う。

 魔導ポット等もある。
 一応中古の武器防具も取り扱うが、大した数ではない。

 ライがクリエイティブで作ったアイテムの販売をお願いしたのだ。屋敷の運用には流石に人を雇わなければならないのだが、お金がない。

 当面の物として目玉商品を手鏡として、前世の記憶や知識から再現した物で稼ぐ事にした。流石に侯爵であり、領主となったから横槍は入らない筈だが、現行品の価格崩壊は必須になり一部の者から恨まれる筈だ。

 直径4cm位の手鏡を安価で大量販売し、15cm四方の鏡を現在の相場の半値にする。大きい方は1日2個限定での販売だ。手鏡は相場は金貨8枚程らしいが、一人一つ限定で金貨2枚で売り出す。

 もう一つ目玉がある。これは切実に広めたかった。歯ブラシだ。なくはないのだが、毛の硬い獣の毛を使い作られたのが一本に付き金貨3枚とかなり高価だ。その為口腔衛生はお世辞にも良いとはいえなかったからだ。歯磨き粉を安価に販売するのは時期尚早としたが、富裕層向けに販売するのに日本で使っていたのを再現した。

 歯磨き粉はまずは貴族と富裕層に向けて歯周病予防のにし、金貨2枚とした。歯ブラシは銀貨3枚だ。つまり金貨1/3 枚である。最終的には銅貨8枚にしたいと思っていた。

 ライは女性陣に部屋を追い出されてから商店に行き、当面売る為の商品を大量に作り、渡していった。

 その後屋敷の生活に必要な物を見繕う為に色々な店を回り、手に取っていた。流石にこれらをコピーするのは良くないのでサンプルとしていくつか購入し、次の店に向かっていると急に肩に衝撃と痛みが走ったのであった。
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