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第49話  カミングアウト

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「ありがとう。今の話が前置きなんだ。その、僕、いや俺って言わなきゃなんだよね。言い難いな。俺はそのエターナルシリーズを使えるらしい。まだこれから検証しなきゃだけど、自分で考え、魔法を創造しなきゃならないっぽいのが漸くって言った方が良いのかな?何となく分かったんだ。知っていたらダンジョンでも片腕を失くしたり、ダザリオ達も死なせずに済んだのかもね。エターナルシリーズと言うのは創造魔法の総称じゃないかなと思うんだ。その為僕じゃなくて俺は初級魔法しか使えないっぽいんだ」

 皆頷いていた。

「うん。それでね、僕の事をちゃんと好きな女性に、つまり君達に伝えようと思うんだ。まちがい無く僕はこの時代の勇者であり、多分魔王が復活すると思うんだ」

「心配しなくても皆ライに付いていくぞ。皆その筈だぞ?」

 皆頷いていた。

「ありがとう。それだけじゃないんだ。これを聞いて婚約を破棄したければそう言って欲しい。僕の方から婚約出来ないと言うから」

「何を馬鹿な事を言っているのよ。そんな事は誰も望まないわよ。でも話くらい聞くわよ。でも私達の事を舐めないで欲しいわ。生半可な気持ちじゃないのよ。まあ良いわ。ライも悩んでいるようだし、聞いてあげるから手短に話してよね」
 
 こう言う時に音頭を取るのはミーニャだ。

「まず俺も異世界人なんだ。パトリシアとキスをした時に一部の記憶以外の殆どを思い出したんだ。名前だけはどうやっても無理だけど」

「なんとなく分かっていたわ。子供の時から浮世離れっていうか、この世界って言葉が多かったから」

「僕は神だか女神によって勇者としてこの世界に転生させられたんだ。兄妹がいて暖かい家庭で、幼馴染の女の子がいたら最高かなと言うのを希望したんだ。運が物凄く悪いのを反転し、ギフトやスキルもいくつか付けるって言っていたからそれで僕の力の謎の説明がつく。僕は30代前半で死んだんだ。それと、その、未練はないが、恋人もいたし、その、前世での女性との体の関係もそれなりにあるんだ」

「えっ?でも経験人数が0だったじゃない」

「うん。それは今世での、この体での話だよ。黙っていても良かったのかもだけど、この世界の貞操観念とはかなり違うからフェアじゃないと思うんだ。結婚していなくても何人かの女性と愛し合った経験があるんだ。軽蔑しても良いんだ」

「と言う事は女慣れしているって事よね?問題ないわ。初めての人通しだと悲惨だって聞くわ。私達との初夜をちゃんとリードしてくれるって事よね!」

「えっ?嫌じゃないの?」

「寧ろ安心したわ。特に貴族の男はね、婚姻前に何人かの女と肌を重ねるものよ。商会に頼んで高級娼婦を宛てがって貰い、初経験を済ませておくの。結婚相手との初夜にリードできるようにするのもマナーなのよ。平民だとお金がなくてそうは行かないのだろうけど、女性経験の無い男って笑われるのが貴族よ。だから問題ないわ」

 ライは意を決して話したつもりだったのだが、杞憂だったのだ。

 そう、こういうところで男尊女卑なのだ。勿論女性は処女性を求められ、貴族の妻になる時に既に他の男に抱かれた女だと分かると初夜の時に殺されても誰も文句を言わない。寧ろ殺された女の方が悪いと言われるのが当たり前の文明レベルだった。

 王族に平民が嫁ぐ場合、ヨーロッパのように処女検査が今も行われているのだ。他国に嫁ぐ王族の場合処女性は求められず、嫁ぐ前に意中の者に抱かれてから嫁ぐ事が多く、嫁いでから数カ月後から子作りをし、子を産んだら後は孕まない範囲で好きにさせる事が多いらしい。その為、政略結婚した相手との子は一人が多いとの事だ。その子も国が引き離し、乳母が育てるとミーニャが言っており、実はミーニャにも他国に嫁ぐ話があったのだという。

 寧ろ貴族の男は女性経験が豊富で妻達を性的にリードできるようになっている事が要求されていると。  

 但し結婚後は別だ。浮気は基本的に姦淫罪で処断される。またそれとは別に特に貴族に逆らうなと一般人を暴行する事案が後を絶たず、厳罰化となっている。

「ライは奥手と聞いていたから安心したぞ。女性をリードできる、できる男なのだな」

 クラウディアは先を促した。

「ライが出来る男というのは分かったが、異世界人と言うが何か問題があるのか?」

 ライは皆が困惑すると思い、ダンジョンを出てからずっと一人で思い悩んでいた。

「あ、あれ?何で皆驚かないの?」

「ああ、パトリシアからまず間違いなく異世界からの来訪者だと聞いていたのだ。だから特に驚かないのだ」

「ラルファ以外もそうなの?」

「はい。ライ様がそうだと言うのはメアリーから聞いていて、それでも好きでいられるのか聞いていましたわ」 

「あれ程立派なモノを持っているのに、小さな事で悩んでいたとは笑わせるな!大丈夫だ、そんな小さな事で貴様の事を嫌いになるものか!」 

 クラウディアは責めているのか慰めているのか分からなかった。

「あれ?パトリシア、俺って確か異世界人なんだって言っていないよな?」

「私の事を見て日本人と言っていましたから、キョウコ様と同じ日本人の生まれ変わりと認識していたのですわ」

「そうか。俺の小さな悩みか。って、クラウディア!それは言わないで!」

「貴様の行い次第だな。ってそんな顔をするな。分かった、分かったよ。アタイが悪かったって。な、ほらほらほらこれでいじけんなよ。これでもアタイもそれなりに胸は有るんだぜ!お前おっぱい星人なんだってな?」

 ライはクラウディアにむねぐりぐりをされ、ぐるじぃ!と唸るのが精一杯だった。
 
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