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第43話 凱旋とクリエイティブの開放条件

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 翌朝になってもまだライは回復しきっていなかったというか、殆ど変わっていなかった。
 その為公爵家の計らいで寝台付の長距離向け馬車を手配して貰っていた。

 ライはフラフラで誰かに肩を貸してもらわないととてもではないが歩けなかった。

 後で知ったが、短期間で何度もダンジョンの設定を変更すると言うのは体に深いダメージを負ってしまい、回復にかなりの時間を要するのだ。しかし必要な事だった。

 王都からは馬車で2日の場所にライ達の町はある。

 パトリシアは目立つので今の時代の服に着替えていた。それでも目を見張る美人なので目立つ。

 帰るのはライが出来たら地元で養生をしたいと希望した為だ。
 一番は直接仲間の死を学園及び家族に伝える必要があるからだ。

 公式記録には4階層での戦闘中にトラップが発動し、半々に分断され戦いながら進んだ。しかし道が塞がれており、結局合流が出来ず探しに行く事が出来なかった。

 ライ達が5階層をクリアして地上に戻ったが、先に地上に出ていると期待するも結局地上には帰ってこなかったと。

 こうしているのはライには死人に対してどうこうしたくないというのがある。
 
 特にラルファへの配慮だ。弟をダンジョンの殉教者とし、名誉の死にすると。非公式に王都の学園長に伝えるも、ダンジョンの悪影響により異常行動を取ったとし、先の公式記録にするようにとなっていた。

 勿論書簡は届いている筈だが、やはり当事者の口から話すべきとライが譲らなかった。

 皆がライの今の状態から反対したが、ライの意思は硬かった。残された家族の為だからだ。

 そうやって何とか地元に戻り、そのまま関係者、特に家族のいる所に向かい、公式の話をした。勇敢に戦うも力及ばず死んでいった事に対して哀悼の意を伝え、宿舎に有った私物を渡していた。同じ事を既に別の者から聞いているが、当事者から聞くのはまた違う。2階層で離れ離れになるまでにライが見た事を伝えた。メアリーとユリカはボロが出るだろうからとライの介添人として同行するに留まった。

 ただ、ダザリオの両親からは個別に最後を見せてくれと、嘘の内容を公式記録にしてくれた事を感謝された。

 どうやらラルファから正確な話が伝わっており、悲しそうなパトリシアにお願いをしてダザリオの最後を見せた。

 パトリシアは反対したが、どんな最後を遂げようと、親は知りたいのだと、酷い内容であっても知った事に対しての苦しみよりも、知らない事の苦しみの方が何倍も苦しいのだ。

 またライはメアリーの家で暫く世話になる事になった。
 トイレにはなんとか肩を貸して貰えれば行けたので、もう下の世話を誰かがする事は無かった。

 ユリカとメアリーは翌日から学園に戻り、ダンジョンクリア者の一人として英雄扱いだった。

 パトリシアはライに付きっきりだった。
 甲斐甲斐しく世話をし、ユリカとメアリーが戻ればバトンタッチだが、それまではライを独り占め出来ていたので幸せそうにしていた。

 ライも満更ではなかった。
 ダンジョンの影響が抜けたパトリシアは残念さんな発言もなく、誰もが羨む所謂いい女!になっており、ユリカ達が戻ると図書館に入り浸り、この600年の事、キョウコの事をひたすら調べていた。

 ライはパトリシアの事を心配していたが、今は特にやる事が無いからと、ライが元気になるまでだとしていた。

 又、ライは各々のギフトを開放したりしていて、フェイクを使い、ライのギフトについても判明していた。
 例えばお触りをする事がお触り禁止だったり、風呂は隠す事が禁止だったが、布を巻き胸と陰部を隠す事を認めるとあった。また結局背中を向けていても大丈夫だった。

 レベル2と3は逆だったりとしたのだ。

 一人で風呂に入れなかったので、この機に一部だがクリエイティブの条件をクリアしていった。
 結局風呂はライが目隠しをして3人と入り、体を洗ってもらったりした。流石に股間は自分で洗ったが。

 一週間程でライも回復し、翌日から学園に行く事になったが、パトリシアをどうするのかとなり、ライの従者として学園の制服を着て同行する事になった。

 パトリシアは制服が間に合わないからと遠慮したが、そこはライのクリエイティブの出番だ。必殺人間メジャーによりぴったりな制服を作ったが、スカートが短くないか?とパトリシアに言われたが、脚が長いから感じるだけだと嘘をついてミニスカで通わす事にした。ただ、スカートの下にはブルマをはかせた。ライの独占欲が働き、他の男に下着姿を見せてなるものかとなったのであった。
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