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第23話  その昔

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 xxは会社が2回目の不渡りを出し、倒産する事が決まったその時、最後の精算要員として会社に残っていた。嫌な仕事だ。

 破産管理要員となっていた。

 取引先から回収したお金は、本来は仕入れ先への支払い等に充てるが、倒産した時は違う。債務となり、給料、税金を払った段階での残りを債務返済に充てる。勿論資産は差し押さえられ、銀行は担保権を実行する。元銀行マンであったのもあり、その辺りの対応に追われていた。

 社長は既に行方不明で、噂によると遺書が見付かり、迷惑を掛けた事、会社を守れなかった事や自殺する事への謝罪があったようだ。死体が見つかると迷惑が掛かるから富士の樹海に身を投げる。だから探さないでくれと。

 今の会社に入って2年だった。残された者での精算業務は精神的に堪えた。しかも一年付き合い、同棲を考えていた矢先に会社が倒産し、恋人は愛想を尽きたと別の男の所へ逃げていき、更に落ち込んでいた。そんな矢先、裁判所に向かっていた時に死んでしまったのだ。

 転生してからは違和感を覚えつつ、転生時に要望した幼馴染のいる所に転生していた。

 本来ライは死産だった。
 母親は妊娠中期に流産しかけていたのだ。本来そのままであれば流産してしまう所であり、母体も亡くなる筈だった。

 神?がライを転生させようとして転移先の候補を探しているところに偶々条件に合う胎児が見つかった。流産しかけている母子がいるのが分かり、胎内で死んだ胎児を生き返らせ、霧散した本来の魂の代わりにライの魂を植え付けていた。

 前世の死に様は壮絶だった。 
 赤ん坊を助けたまでは良かったが、トラックに轢かれた。
 更に対向車線に飛ばされ、乗用車に撥ねられ、更に飛ばされた。

 そしてその先には線路があり、そこに落ちた。その時点で悪い事にまだ生きていて意識もあった。勿論全身の骨が折れ、内臓も飛び出していた。

 線路の上にいたのだが、線路の振動からすぐに列車が来るのが分かった。だがどうしようもなかった。呻きながら体を起こそうとするも骨が折れており体は全く動かす事ができず、ただ無様に藻掻くだけだった。そして最後に見聞きしたのは警笛と急ブレーキを掛けている音、眼前に迫る特急列車だった。

 体から頭が切断され、ボールのように遠くに弾き飛ばされた。遠のく意識の中、己がどこかに吹き飛んでいると理解していたがすぐにブラックアウトした。

 頭は廃工場の中に飛んでいき、発見されたのは一週間後であり、体はバラバラのミンチになっていた。
 もはや誰の死体か分からない状態だったが、持ち物と身分証明の人物と連絡が付かない事から、当初頭部が発見されない事から身元は身分証明の人物として確定していた。
 
 ライは急激に思い出した前世の記憶と、ライとして生きて来た人生の記憶が融合していったが、急な変化に戸惑い、テンパっていた。一時的にだが少し錯綜状態になっていた。

「勇者って、あの伝説の?でも600年も昔だよね?」

「はい。かつて勇者キョウコ様と共に魔王を打ち滅ばさんとして魔王に挑んでおりました。魔王は劣勢と分かると、最後の足掻きによりダンジョン作成を強制発動し、私はこのダンジョンに囚われました。その時に私をダンジョンコアとしてダンジョンを作成していたのです。キョウコ様の戦力を割く為に、私に効く唯一の手段として発動していたようです。私がダンジョンから開放される条件は、誰かと言うか、5階層をクリアした者と接吻をする事でした。又は私が負けた場合、あの首輪の呪いにより首が締まり、やがて死に至る死という開放、それと1000年の早いどれかというものです。私はご主人様がこの階層に踏み入れるまで体は完全に封印されておりました。意識はありましたので、この600年の間にダンジョンに挑んだ者の末路を全て見て参りました。ただ一言たけは言わせて下さい。私は何も出来ず、多くの若者が命を落とす様を涙しながら見ておりましたの」

「君はどうみても人間だけれども、あのドラゴンって事なの?どういう事?それに君は日本人だよね?」

「ライ、勇者キョウコ様は女の子の憧れよ。子供の頃から幼体のドラゴンから育て上げ、15年の歳月を勇者と共に過ごした伝説のドラゴンよ。ただ、伝記と違い、残念さんのようね。ドラゴンは仕える相手の種族に擬態できると聞いているわ」

「博識ですね!途中聞き捨てならない事を申されているようですが、私は勇者キョウコ様の記憶にあった御婦人の姿を参考にしております。この着物はキョウコ様より賜った唯一残っている物ですわ。ご希望されればいつでもドラゴンの姿にも人の姿にもなれますわ。但し、人型の姿の時は本来の力の1割位しか使えませんのであしからず。それよりも魔王がどうなったか?キョウコ様はどうなされたか知りませぬか?」

「無事魔王を倒したと記されています。同じパーティーの戦士と結婚し、老衰で亡くなるまで生涯をこのダンジョンの管理人として過ごしたと聞きます。最後は孫やひ孫に看取られたようです。相棒のドラゴンに対して救えなくてごめんなさいと最後に発したと記録されています。国王より褒美として爵位や領地を賜ったようですが、領地は人に任せ、キョウコ様はずっと捕らえられたドラゴンの救出の為の手段がないかを模索されていたそうです。確かお墓はダンジョン入り口の横に有り、許可された者しか入れない筈です。許可されるのは王族とダンジョン生還者だと聞きます」

「そうですか。長生きしてくれたのですね。残念なのはキョウコ様の子を抱けなかった事ですわ。キョウコ様の事をまた教えて下さい。彼女は私の唯一の家族でした。仕えてはいましたが、彼女は私を一度なりとも部下や仕えている者としては扱いませんでした。仲の良い姉妹としてお互い子供の頃から、そう、物心が着いた頃には既に一緒に過ごしておりました」
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